院長のごあいさつ

院長のごあいさつ

 

東京都立小児総合医療センター院長 廣部誠一

 ホームページをご覧いただき、誠にありがとうございます。
 当院は、2010年3月に、清瀬小児病院、八王子小児病院、梅ケ丘病院(精神科)、府中病院小児科が府中の「多摩メディカルキャンパス」の地に移転統合し開設されました。からだの病床359床に加えて、こころの病棟には202床の病床を有しています。また、総合病院の多摩総合医療センターと一つの構造物の中にあり、メディカルキャンパス内に神経病院、府中療育センターが近接していることが特徴です。この病院の設立時に5つの運営理念が創られ、それを実行していくのが我々の使命です。そして、2022年7月1日を持ちまして,当院は地方独立行政法人組織に移行いたしましたが、その使命が揺らぐことはありません。

1. 東京都における小児医療の拠点

 救命救急医療、高度専門医療、周産期医療、臨床研究が柱です。
 北米型ERで、全て引き受け、トリアージで緊急度を判定し、救命救急科と総合診療科が中心となり診療します。ER受診数は100人/日前後で、PICU(小児集中治療室)に入室する重症例は1人前後です。100人の中で緊急性を要する症例は数%ですが、一般的な症状を訴える子どもの中に重症例が隠れているのが小児医療です。ER病棟10床では、経過観察が必要な症例に対応し、重症例は集中治療科が管理するPICU20床で対応します。重篤な患者では搬送チームがドクターカーで出向いて搬送しており、ECMO(体外式膜型人工肺)下での搬送も行えるのは当院の特徴です。
 専門医療では、小児がん拠点病院として、特に難治性のがん治療に力を入れています。他にも腎移植、先天性気管狭窄、鎖肛、口唇口蓋裂、尿道下裂、頭蓋、顔面の先天異常、股関節、手足の先天奇形など症例数も多く、さらには多職種からなるチーム医療が本院の強みです。
 周産期医療は、多摩総合医療センターと連携し、地域の産婦人科での緊急新生児搬送のため新生児用ドクターカーを年間300件以上出動しています。また胎児診断チームを強化し地域の産婦人科と連携を推進していきます。
 臨床研究に関しては、臨床試験科に設置している、臨床研究支援センターのチームが各科の臨床研究を支援、推進しています。

2. 「こころ」と「からだ」を総合した医療

 「こころ」では202床の精神科病床と医療チームを有しているのが当院の特徴です。「こころ」の症例も重症例、低年齢層の子どもが増加しており、トリアージシステムの導入、個室の整備などの対応をしています。「こころ」と「からだ」は切っても切り離せない関係にあります。からだの治療後、成長の過程で精神的サポートが必要になることが多く、こうした場合でも「こころ」の専門家、リエゾンチームが早期から介入し、こころとからだ、それぞれの専門家が連携診療していきます。

3. こどもの成長とともに歩む医療

 胎児期、出生から小児、思春期、成人期へと子どもの成長とともに継続的な医療を提供していきます。特に、思春期以降も治療が必要な小児慢性特定疾患、難病、AYA 世代(Adolescent and Young Adult世代)のがん患者は継続した対応が必要です。当院の移行期看護外来では、成長していく過程での自立支援プログラムから始め、さらに多摩総合医療センターや神経病院と連携し継続的な医療を提供していきます。

4. こども中心の医療

 当院の子ども患者権利章典では、どの年齢の子どもでも「説明を受け医療に参加する権利」があることをうたい、年齢に応じた同意説明、アセント(賛意を得る)、プレパレーション(幼児への事前説明)をチームで取り組んでいます。また、高度専門医療により、救命率は向上しましたが、残念ながら生命の質を常に向上できてはいません。当院では多職種の緩和ケアサポートチームにより、身体的、心理的な苦痛の緩和を手助けし、家族の生活の質を向上させる活動をしています。また、積極的な治療が患者にとって不適切な場合もあり、何が患者にとって最善の治療かについて、家族と多職種で話し合うプロセスを大切にしています。

5. 社会とともに創る医療

 成長発達を伴うこどもの医療は、病院だけではなく、学校、福祉施設、市区町村や保健所等の行政機関や地域社会が力を合わせて行うべきものと考えています。当院の「子ども家族支援部門」では早期退院、早期社会復帰に向けて、医師、看護師、心理士、SW、保育士等がチームで活動しています。また、今回、医療的ケア児の増加などに対し、在宅診療科を設置しました。地域の医療機関、訪問診療、市区町村、保健所、特別支援学校などとの連携をより強化していきたいと考えています。

 より良い小児医療に向けて、職員一同、チームワーク良く、笑顔があふれる病院をめざして取り組んでまいります。皆様のご支援よろしくお願い申し上げます。

2023年4月1日 院長 廣部誠一