お役立ち情報 感染症科 予防接種を受けましょう

 東京都立小児総合医療センターはこどもたちを感染症から守るために予防接種を強く推奨します。
以下の内容について簡単に説明していますのでどうぞご覧ください。

ワクチンで予防できる病気(VPD)について

ワクチンで予防できる疾患のことをVPDという

Vaccine Preventable Disease』の頭文字をとったもので、ワクチンで予防できる疾患をVPDといいます。VPDには以下に示す通り多くの疾患があります(表1)。

表1

(注)定期接種、任意接種の疾患名をクリックすると疾患の説明PDFが開きます。

ワクチン、予防接種とは?

ワクチンには生ワクチン、不活化ワクチンの大きく分けて二つの種類がある

ヒトには感染症にかかると、同じ感染症にかからないようにする"免疫"というシステムが備わっています。
ワクチンと予防接種の違いは以下の通りです。

  • ワクチン:注射したり飲んだりすることによって、その感染症に対する免疫を獲得させるもの
  • 予防接種:ワクチンで免疫を獲得させること
  • ワクチンが効く仕組み

  • ワクチンが効く仕組み1
  • 次へ
  • ワクチンが効く仕組み2
  • 次へ
  • ワクチンが効く仕組み3

ワクチンは病気を起こす病原体そのもの『弱毒生ワクチン(以下生ワクチン)』と病原体の一部や毒素である『不活化ワクチン』とに分類されます。生ワクチンは弱めた病原体そのものを接種するため、多くは2回の接種で十分効果を得ます。不活化ワクチンは効果が得られるために複数回接種を行う必要があり多くは3回から4回の接種を必要とします。

一方で生ワクチンは病原体そのものなので、ばい菌と戦う力(免疫力)が弱っている人はその病気になってしまう可能性があります。したがって免疫力が弱っている免疫不全者や、赤ちゃんのいる妊婦さんには接種することができません。

定期接種と任意接種

定期接種は無料で受けることができ、任意接種は基本的に全額自費である

任意接種だからといって接種しなくてよいわけではない

日本には予防接種が『定期接種』と『任意接種』の2つに分かれています。

制度について

 定期接種:予防接種法という法律にもとづいています。

 任意接種:各個人が接種するかどうかを決めるものです。

費用について

 定期接種:費用が各市町村の公費でまかなわれるため無料です。

 任意接種:各自治体により差はありますが、原則全額自己負担となります。

任意接種の対象となっていても重症で、後遺症を残す感染症はあります。

おたふくかぜ:最大10人に1人が髄膜炎を発症し、200人に一人は難聴(耳が聞こえなくなる)になります。

日本以外の多くの先進諸国ではB型肝炎もおたふくかぜもすべての小児に対して接種されています。

予防接種の効果

予防接種は行われない時代に比べ90%近く感染症発症を減らしている

ほぼなくなった疾患も予防接種は継続しなくてはならない

予防すべき疾患にかからなくなることが最も大きな効果です。どれくらいその疾患が減ったかを見てみましょう(表2)。ワクチンによってほとんどの疾患で90%以上の発症を予防することが可能になっています。

日本でも予防接種により多くの疾患が減っています。2015年に麻しんが排除されたとWHO(世界保健機関)から認定されました。

表2.米国における予防接種の効果(REDBOOK30thより一部改編)

疾患年間罹患数

2013年報告症例数
a2012年予測
b2012年報告

減少率(%)
天然痘290050100
ジフテリア210530100
麻しん530217184>99
おたふくかぜ162344438>99
百日咳2007522423188
ポリオ163160100
風しん477459>99
先天性風しん症候群1520100
破傷風5801997
インフルエンザ菌b型2000018>99
A型肝炎1179992890a98
B型肝炎(急性)6623218800a72
侵襲性肺炎球菌(全年齢)6306731600b50
侵襲性肺炎球菌(<5歳)16069180089
ロタウイルス(<3歳入院)62500125098
みずぼうそう408512021651195

しかし、いったんワクチンによって発症をほとんど防げるようになったからと言って、予防接種を終了することはできません。(例外的に天然痘はワクチンで完全に世界から排除できたため、日本でも予防接種も終了しています。)2014年に米国のカリフォルニアディズニーランドに遊びに来た小児の間で麻しんが流行しました。このとき発症者はすべて麻しんのワクチンを打っていない人でした。このように疾患が流行すると、予防接種をしていない場合罹患する可能性が残ってしまいます。

予防接種の副反応と有害事象

予防接種の後におこる悪いことすべてを有害事象という

明らかに予防接種が原因で起きたことを副反応という

予防接種に限らず、すべての薬は期待しない結果を起こします。一般的に副作用と呼ばれるものです。予防接種に関しては特に『副反応』と呼びます。また予防接種の後に起きたすべての良くないことを『有害事象』と呼びます。それが因果関係かどうかの判断は非常に難しく、専門家の意見や、世界の情報を踏まえて判断されます。2013年4月から厚生労働省が『予防接種後副反応報告制度』を開始しました。副反応の可能性がある場合、医師などの医療者はその報告義務があります。

  • 副反応:予防接種と起きたことの間に明らかな関係(因果関係)がある。
    例. 予防接種の後に熱が出る、接種した場所が腫れる。
  • 有害事象:予防接種の後に起きた悪いこと全てをいう(前後関係)。
    例. 予防接種の後、熱がでる、接種した場所が腫れる、帰り道で交通事故にあう、預金が減る

当院に入院するに当たり気を付けてほしいこと

1歳以上の患者さんは水ぼうそうの予防接種を定期接種年齢相当 (1歳は1回以上、2歳以上は2回) に接種してから入院していただきます。

当院には免疫不全といってばい菌やウイルスへの抵抗力が弱い患者さんが多く入院しています。
水ぼうそうは2014年にワクチンの定期接種が始まって以降患者数は大幅に減少しました。しかし、水ぼうそうは感染力が強く、ワクチン非接種者を中心に容易に伝播し抵抗力の弱い患者さんに重大な合併症を起こす可能性があります。
1回の予防接種ではその効果が80%程度であるため完全に予防できず、2回の接種を完了させることが重要です。したがって、当院へ入院の予定がある1歳以上の患者さんでは水ぼうそうの予防接種を定期接種年齢相当に (1歳は1回以上、2歳以上は2回) 接種してもらってから入院をしていただきます。