臨床遺伝科 臨床遺伝センター

遺伝カウンセリング外来

遺伝カウンセリングの様子

 遺伝医療に特徴的な診療の一つに、遺伝カウンセリングがあります。遺伝カウンセリングは、おもにご自身や家系内の遺伝に関するあらゆる諸問題について、どうして?なぜ?と思っておられる方、具体的な遺伝関連情報を得たいと考えられている方などが対象となります。相談内容に対して、ご本人やご家族が置かれた状況やお気持ちを確認させて頂き、時間をかけた対話を通じて必要とされている医療情報や最新の遺伝学的知見、生活上の問題に沿った療育・子育て情報を提供しています。意思決定に悩む場面では、その人らしい生活や将来設計をご自身で描くことができるよう、遺伝学的、心理的な側面からサポートします。遺伝カウンセリングへの来談のきっかけとしては、地域のクリニックや当院診療科からのご紹介のほか、ご本人やご家族が当科ホームページをご覧になってからのお電話など様々です。以下、遺伝カウンセリングの相談例を示します。

相談例1
「子どもが遺伝する病気をもっていると伝えられ、説明を受けたのですが、気も動転していてよくわかりませんでした。次の妊娠も考えていたので、同じことを繰り返す可能性について気になります。」

→病気や体質がご家族に遺伝するのかどうかについてのご相談では、家系内の健康状態や診断経緯を確認させていただいております。疑われている疾患や、実施された遺伝学的検査があれば結果なども参考に、診断を検討します。そのうえで、どのような遺伝的問題が考えられるのか、次回妊娠時までにはどのような情報を整理しておく必要があるのかなどを一緒に考えさせていただきます。

相談例2
「私には生来体つきの特徴があるのですが、将来、結婚をして家庭を築きたいと思っています。両親には相談しづらくて何も聞けていません。子どもに遺伝する可能性や何か調べられる検査があれば教えて欲しいです。」

→結婚や出産のようなライフイベントでは、家族内の遺伝的問題を見つめ直す機会の一つになることがあります。遺伝学的検査ですべてが明らかになるわけではありませんが、ご自身が心配や不安を感じていらっしゃる部分を具体的にお聞かせいただき、最新の検査事情をもとに情報を整理させていただきます。

相談例3
「おなかの赤ちゃんについて出生前遺伝学的検査を受けたら、染色体に違いがみられる、と言われました。家族として迎え入れるにあたり、生まれてからどのようなことに注意したらよいのか知りたいと思っています。」

→当科では出生前遺伝学的検査は実施しておりません。その代り、隣接する多摩総合医療センター産婦人科と連携し、おなかの赤ちゃんの状態をご家族が想像しやすいよう、小児科の立場から標準的な疾患情報を共有させていただいております。疾患に関する実際的な情報と共に、お子さんそれぞれがもつ個人差にも目を向けた説明を心掛けています。妊娠する前の備えとして、出生前遺伝学的検査の考え方を知りたい方、高年妊娠を心配されている方などへの対応もおこなっておりますので、ご相談ください。

遺伝カウンセリング外来予約方法

完全予約制になります。
1回約1時間枠をご用意し、遺伝に関するご相談に十分な時間をかけて対応しております。

  • 当院他科へ受診中の方
    担当医師にご相談、もしくは来院時にうりぼうカウンターにて「遺伝カウンセリング希望」の旨をお伝えください。認定遺伝カウンセラーが相談内容の詳細をお伺いし、予約の調整をお手伝いします。
  • 院外より受診希望の方
    遺伝カウンセリング窓口:042-300-5111(病院代表)
    「遺伝カウンセリング外来の予約希望」の旨をお伝えください。認定遺伝カウンセラーが引き継ぎ対応します。

予約時にお伺いすること:

  • 相談されたいこと、疾患のお名前、家族や血縁者の健康状態、必要に応じて検査結果など
  • 相談内容、緊急性などを検討し、適切な時期で予約枠を確保します。

相談内容が遺伝カウンセリングに適しているか判断が難しい場合でも、お気軽にお問い合わせ下さい。

遺伝カウンセリング外来パンフレット(PDF 4.6MB)

主な臨床研究

  • 未診断疾患イニシアチブ(Initiative on Rare and Undiagnosed Diseases :IRUD[アイラッド]
     IRUDは、診断がつかずに悩んでいる患者さんを対象に、人の設計図である遺伝子やDNAなどを幅広く調べることにより、診断につなげること、またあらなた疾患を診断することを目的としています。 当院は、日本医療研究開発機構(AMED)の難病克服プロジェクトにおけるIRUD拠点施設としての役割を担っています。 院内診療科および地域医療機関との連携を積極的に図り、未診断症例の診断、遺伝医療の啓発と人材育成、遺伝カウンセリング体制の拡充など、診療に役立つ社会還元型の仕組みづくりの推進をめざしています。 複数の部位や臓器に症状を認めること、血縁者や同胞に同じ病状を認めることなど一定の条件を満たしていれば、IRUDによる診断アプローチも検討しています。
    従来法では診断に至らなかった小児・成人の方々の4割程度で確定診断に至っています。
  1. 「IRUDコンサルトシート記入に関するご案内」(PDF 655KB)
  2. 「IRUDコンサルトシート_都立小児版」(Excel 158.4KB)
  3. 「記入例:コンサルトシート_都立小児版」(PDF 763.5KB)
  4. 「記入例:診療情報提供書_都立小児版」(PDF 690KB)
  • GENIE(旧WEBピア)

     網羅的ゲノム解析の進歩により、様々な症状を持つ患者さんに対し遺伝子の検査から診断が行われるようになってきています。 遺伝子からの診断は、『健康管理に活かすことができる』、『家系内遺伝情報の整理(次子再発率など)を可能にする』など、臨床遺伝医療の基盤となります。 一方、遺伝子の違いによる遺伝性疾患の多くは極めて希少な疾患(以下、希少疾患)となり、希少疾患における課題があります。希少疾患では患者さん・情報が少ないため、『簡単に検索できる疾患関連情報が少ない』『同じ課題を持った家族との交流:ピアサポートが困難』という特徴があります。
     このような希少疾患診療の背景から、当科では患者さん、ご家族と協働してよりよい支援の体制を作り上げることを目標に、GENIE(GENetic Information for Empowerment:ジーニーと呼んでください)という名前のプロジェクトを立ち上げました。当科に通院中で遺伝子検査により診断が確定された方にお声がけさせていただき、希少疾患を持つ方のデータベース作成を目指します。HPを作成しておりますので、下のリンクからご参照ください。 他院通院中の方でも、情報を知りたいなどご希望がありましたら、ご相談ください。

    GENIE(外部リンク)

  • BIRTHDAY
    新生児から生後6ヶ月までの赤ちゃんを対象とした網羅的ゲノム解析による生後早期診断を目的とするプロジェクトです。
    当院総合周産期センターにて入院加療中の方が対象となります。
  • 先天難聴