臨床遺伝科 診療内容

 家族歴、診察所見、遺伝学的解析を含めた各種検査を総合的に検討し、正確な診断をめざします。診断後は、疾患の自然歴や併発症を考慮しながら、定期的な健康管理、早期発見、治療につながるよう、総合・専門診療科との連携を図っています。お子さんの発達段階に応じて、療育施設を紹介させていただく場合もあります。主に小児疾患を対象としておりますが、周産期疾患、成人期疾患、家族性腫瘍など、様々なライフステージにおいて遺伝医療と関連する疾患についても、ご本人、ご家系に関わる遺伝的問題のご相談をお受けしています。
 東京都立小児総合医療センター・東京都立多摩総合医療センターは2022年6月付で日本医学会より「NIPTを実施する医療機関」基幹施設として認証されました。それにともない2022年10月よりNIPT外来を開設いたしました。予約はこちらのページよりお願いします。

1.遺伝診療

 先天性・遺伝性疾患(染色体疾患、単一遺伝子疾患、骨系統疾患、多発形態異常、原因不明等)をもつ方へ専門医療を提供しています。診断は、見通しのある子育て、先回りの健康管理、将来の家族計画を考えるときの有力な根拠となります。医師の診たてや、家族歴・各種検査結果に基づく臨床診断は、いくつかの状況証拠を組み合わせて検討されます。ある程度時間をかけて、お子さんの成長と共に変化する体つきや併発症の有無を評価することも、診断を考える上で重要な意味をもつことがあります。一方、染色体や遺伝子などの遺伝情報の変化が疾患の発症要因と考えられている疾患が疑われた場合や、診察をしても想定される臨床診断が無い場合は、遺伝学的検査による遺伝学的診断を提案することがあります。お子さんそれぞれの成長や育ちを見守りつつ、客観的な検査の結果も参考に、総合的に正確な診断をめざすことが大切です。
 遺伝学的検査を提案された場合でも、すぐに検査を受ける必要はありません。遺伝情報は、生涯変わることのない不変性、血縁者とも関連し得る共有性、疾患発症を想定させる予測性などの特性をもつため、遺伝情報を知るための検査を実施する場合は、事前の十分な情報の整理が必要となります。

対象疾患:先天性・遺伝性疾患全般。単発の形態異常(口唇口蓋裂、先天性心疾患、指趾異常など)、染色体疾患、多発形態異常症候群、骨系統疾患、先天難聴、遺伝性不整脈、家族性腫瘍などを含みます。当科では、多くの診療科やご家族から、疾患の遺伝学的問題に関する様々なご相談をお受けしております。

 一定の条件を満たしていれば、未診断疾患イニシアチブ(Initiative on Rare and Undiagnosed Diseases :IRUD[アイラッド])による診断アプローチも検討しています。当院は、日本医療研究開発機構(AMED)の難病克服プロジェクトにおけるIRUD拠点施設としての役割を担っています。院内診療科および地域医療機関との連携を積極的に図り、未診断症例の診断、遺伝医療の啓発と人材育成、遺伝カウンセリング体制の拡充など、診療に役立つ社会還元型の仕組みづくりの推進をめざしています。複数の部位や臓器に症状を認めること、血縁者や同胞に同じ病状を認めることなどが解析の必須条件となりますが、従来法では診断に至らなかった小児・成人の方々の3割程度で確定診断に至っています。

  1. 「IRUDコンサルトシート記入に関するご案内」(PDF 655KB)
  2. 「IRUDコンサルトシート_都立小児版」(Excel 158.4KB)
  3. 「記入例:コンサルトシート_都立小児版」(PDF 763.5KB)
  4. 「記入例:診療情報提供書_都立小児版」(PDF 690KB)

関連するホームページ:IRUD未診断疾患イニシアチブ(外部リンク)

2.遺伝カウンセリング

遺伝カウンセリングの様子

 遺伝医療に特徴的な診療の一つに、遺伝カウンセリングがあります。遺伝カウンセリングは、おもにご自身や家系内の遺伝に関するあらゆる諸問題について、どうして?なぜ?と思っておられる方、具体的な遺伝関連情報を得たいと考えられている方などが対象となります。相談内容に対して、ご本人やご家族が置かれた状況やお気持ちを確認させて頂き、時間をかけた対話を通じて必要とされている医療情報や最新の遺伝学的知見、生活上の問題に沿った療育・子育て情報を提供しています。意思決定に悩む場面では、その人らしい生活や将来設計をご自身で描くことができるよう、遺伝学的、心理的な側面からサポートします。遺伝カウンセリングへの来談のきっかけとしては、地域のクリニックや当院診療科からのご紹介のほか、ご本人やご家族が当科ホームページをご覧になってからのお電話など様々です。以下、遺伝カウンセリングの相談例を示します。

相談例1
「子どもが遺伝する病気をもっていると伝えられ、説明を受けたのですが、気も動転していてよくわかりませんでした。次の妊娠も考えていたので、同じことを繰り返す可能性について気になります。」

→病気や体質がご家族に遺伝するのかどうかについてのご相談では、家系内の健康状態や診断経緯を確認させていただいております。疑われている疾患や、実施された遺伝学的検査があれば結果なども参考に、診断を検討します。そのうえで、どのような遺伝的問題が考えられるのか、次回妊娠時までにはどのような情報を整理しておく必要があるのかなどを一緒に考えさせていただきます。

相談例2
「私には生来体つきの特徴があるのですが、将来、結婚をして家庭を築きたいと思っています。両親には相談しづらくて何も聞けていません。子どもに遺伝する可能性や何か調べられる検査があれば教えて欲しいです。」

→結婚や出産のようなライフイベントでは、家族内の遺伝的問題を見つめ直す機会の一つになることがあります。遺伝学的検査ですべてが明らかになるわけではありませんが、ご自身が心配や不安を感じていらっしゃる部分を具体的にお聞かせいただき、最新の検査事情をもとに情報を整理させていただきます。

相談例3
「おなかの赤ちゃんについて出生前遺伝学的検査を受けたら、染色体に違いがみられる、と言われました。家族として迎え入れるにあたり、生まれてからどのようなことに注意したらよいのか知りたいと思っています。」

→当科では出生前遺伝学的検査は実施しておりません。その代り、隣接する多摩総合医療センター産婦人科と連携し、おなかの赤ちゃんの状態をご家族が想像しやすいよう、小児科の立場から標準的な疾患情報を共有させていただいております。疾患に関する実際的な情報と共に、お子さんそれぞれがもつ個人差にも目を向けた説明を心掛けています。妊娠する前の備えとして、出生前遺伝学的検査の考え方を知りたい方、高年妊娠を心配されている方などへの対応もおこなっておりますので、ご相談ください。

遺伝カウンセリングの予約方法

  • 連絡先:042-300-5111(病院代表)
  • 遺伝カウンセリング窓口:認定遺伝カウンセラー 伊藤志帆(内線5433)
  • お聞きすること:相談されたいこと、疾患のお名前、家族や血縁者の健康状態、必要に応じて検査結果など
  • 相談内容、緊急性などを検討し、適切な時期で予約枠を確保します。相談内容が遺伝カウンセリングに適しているか判断が難しい場合でも、お気軽にお問い合わせ下さい。

遺伝カウンセリング外来パンフレット(既存)(PDF 4.6MB)
当科が遺伝診療/遺伝カウンセリングで対応してきた主な疾患表(新規)(Excel 14.3KB)

 また先天性・遺伝性疾患は比較的少ないことから、症例数の多い小児専門病院が果たすことのできる支援形態の一つとして、ピアサポート(peer support)も実施しています。当科に受診の方を中心にご家族の希望に応じて、同じ疾患をもつお子さんを育て、共通の課題に直面されているご家族同志が少数単位から語らうためのお手伝いをしています。ご希望の方は、遺伝カウンセリング窓口よりお問い合わせ下さい。