臨床遺伝科 診療内容

 臨床遺伝科では、家族歴、診察所見、これまでの経過、必要に応じて行われる染色体や遺伝子の検査結果などを総合的に検討し、正確な診断につなげることをめざしています。

 診断後は、疾患の自然歴や併発しやすい症状の傾向を踏まえ、定期的な健康管理、合併症の早期発見、必要な治療につながるよう支援します。当院の総合診療科や専門診療科と連携した診療を行い、ご本人の発達段階や生活状況に応じて、療育施設や地域の支援機関をご紹介させて頂くこともあります。

 主に小児期の疾患を対象としていますが、周産期から小児期、成人期への移行、さらにご家族の健康や遺伝に関するご相談まで、ライフステージにおいてさまざまな遺伝医療に関連したご相談を受けています。必要に応じて、成人診療科や関係機関とも連携しています。

 臨床遺伝科では、多くの診療科や地域の医療機関、ご家族から、先天性疾患・遺伝性疾患に関するさまざまなご相談をお受けしていますが、主な対象疾患は、染色体疾患、単一遺伝子疾患のほか、遺伝性腫瘍、骨・結合織疾患、希少遺伝性疾患、周産期疾患などです。

当科が遺伝診療で対応してきた主な疾患

染色体疾患ダウン症候群、1p36欠失症候群、4pモノソミー症候群、5pモノソミー症候群、22q11.2欠失症候群、13トリソミー症候群、18トリソミー症候群、ターナー(Turner)症候群、クラインフェルター(Klinefelter)症候群、11/22混合トリソミー(エマヌエル:Emanuel)症候群、1q重複症候群、2q37欠失症候群、3p欠失症候群、6q欠失症候群、逆位重複欠失8p、9q34欠失(Kleefstra)症候群、11q欠失(Jacobsen)症候群、17q21欠失(Koolen de Vries)症候群、18pモノソミー症候群、18qモノソミー症候群、22q13.3欠失(Phelan-Mc Dermid)症候群、22q部分テトラソミー症候群、パリスター・キリアン(Pallister-Killian)症候群、PCS/MVA症候群、染色体構造異常(不均衡型相互転座、Robertson型転座、コピー数異常、リング染色体など)、過剰マーカー染色体、トリソミー8モザイク、トリソミー9モザイクなど

先天異常
症候群

コフィン・ローリー(Coffin-Lowry)症候群、ソトス(Sotos)症候群、スミス・マギニス(Smith-Magenis)症候群、ルビンシュタイン・テイビ(Rubinstein-Taybi)症候群、歌舞伎症候群、ウィーバー(Weaver)症候群、コルネリア・デ・ランゲ(Cornelia de Lange)症候群、ベックウィズ・ヴィーデマン(Beckwith-Wiedemann)症候群、シルバー・ラッセル(Silver-Russell)症候群、ウィリアムズ(Williams)症候群、アンジェルマン(Angelman)症候群、プラダ―・ウィリ(Prader-Willi)症候群、ヌーナン(Noonan)症候群、CFC(Cardio-facio-cutaneous)症候群、コステロ(Costello)症候群、ビールズ(Beals)症候群、 チャージ(CHARGE)症候群、ハラーマン・ストライフ(Hallermann-Streiff)症候群、アントレー・ビクスラー(Antley-Bixler)症候群、コフィン・サイリス(Coffin-Siris)症候群、シンプソン・ゴラビ・ベーメル(Simpson-Golabi-Behmel)症候群、スミス・レムリ・オピッツ(Smith-Lemli-Opitz)症候群、モワット・ウィルソン(Mowat-Wilson)症候群、ロビノー(Robinow)症候群、EEC症候群、トリ―チャー・コリンズ(Treacher-Collins)症候群、ミラー・ディーカー(Miller-Dieker)症候群、ゴールデンハー(Goldenhar)症候群、コケイン(Cockayne)症候群、ロスムンド・トムソン(Rothmund-Thomson)症候群、シンゼル・ギデオン(Shinzel-Giedion)症候群、ピット・ホプキンス(Pitt-Hopkins症候群)、ミール(Myhre)症候群、ゴルツ(Goltz)症候群、アラジール(Alagille)症候群、グラス(Glass)症候群、マーシャル・スミス(Marshall-Smith)症候群、デサント・シナウィ(Desanto-Shinawi)症候群、Geleophysic dysplasia、FG症候群、Noonan症候群類縁疾患
遺伝性腫瘍フォンヒッペル・リンドウ(von Hippel-Lindau)病、多発内分泌腫瘍症2型(MEN2)、ポイツ・イェーガース(Peutz-Jeghers)症候群、リ・フラウメニ(Li-Fraumeni)症候群、家族性腺腫性ポリポーシス(FAP)、若年性ポリポーシス、色素性乾皮症
骨・結合織疾患軟骨無(低)形成症、骨形成不全症、 低ホスファターゼ症、点状軟骨異形成症、先天性脊椎骨端異形成(SEDC)、脊椎肋骨異形成(SCD)、変容性骨異形成症、鎖骨頭蓋異形成、エリス・バン・クレベルト(Ellis-van Creveld)症候群、スティックラー(Stickler)症候群、MOPD2、頭蓋縫合早期癒合症(クルーゾン症候群、アペール症候群、ファイファー症候群など)、爪膝蓋(Nail-patella)症候群、エーラス・ダンロス(Ehlers-Danlos)症候群(古典型、血管型)、マルファン(Marfan)症候群、ロイス・ディーツ(Loeys Dietz)症候群、ラールセン(Larsen)症候群、MCTO(Muliticentric Carpal Tarsal Osteolysis)など
希少遺伝性疾患ACTL6B遺伝子異常症、進行性骨化性線維異形成症、ADNP遺伝子異常症、シア・ギブス(Xia-Gibubs)症候群、巨脳症-毛細血管奇形症候群、先手性グリコシル化異常症、KBG症候群、ASPM遺伝子異常症、ブルーム(Bloom)症候群、CASK異常症、CDK13遺伝子異常症、CDK8遺伝子異常症、CHD8遺伝子異常症、メンケ・ヘネカム(Menke-Hennekam)症候群、CSNK2A1遺伝子異常症、CTCF遺伝子異常症、CTNNB1遺伝子異常症、DDX3X関連神経発達異常症、Heyn-Sproul-Jackson症候群、EBF3遺伝子異常症、下顎顔面異骨症、硫黄欠乏性毛髪発育異常症、EXOSC9遺伝子異常症、FBXO31遺伝子異常症、脳室周囲結節性異所性灰白質、FOXP1遺伝子異常症、フレイザー(Fraser)症候群、GRIN2B関連神経発達異常症、HNRNPU遺伝子異常症、ヤング・シンプソン(Young-Simpson)症候群、KCNA2遺伝子異常症、KDM5C遺伝子異常症、KIF1A遺伝子異常症、KIFF22遺伝子異常症、ヴィーデマン・スタイナー(Wiedemann-Steiner)症候群、コダス(CODAS)症候群、シャーフ・ヤング(Schaaf-Yang)症候群、MEF2C遺伝子異常症、NF1A遺伝子異常症、マーシャル・スミス(Marshall-Smith)症候群、マラン(Malan)症候群、PACS1遺伝子異常症、PBX1遺伝子異常症、Borjeson-Forssman-Lehmann症候群、Jansen-de-Vries症候群、Houge-Janssens症候群、Verheij症候群、Ververi-Brady症候群、軟骨毛髪低形成症、RNU5B-1神経発達異常症、Luscan-Lumish症候群、SEMA6B遺伝子異常症、捻曲性骨異形成症、クリスチャンソン(Christianson)症候群、ニコライデス・バライスター(Nicolaides-Baraister)症候群、YY1遺伝子異常症、Mullegama-Klein-Martinez症候群、TBCK遺伝子異常症、TEF3遺伝子異常症、TRAF7遺伝子異常症、TRPM3神経発達異常症、UBA5遺伝子異常症、USP9X遺伝子異常症、コーエン(Cohen)症候群、Wieacker-Wolff症候群、

その他
遺伝性疾患

神経線維腫症、色素性失調症、ファブリー病、ポンぺ病、無汗性外胚葉異形成、基底細胞母斑(Gorlin)症候群、てんかん、副腎白質ジストロフィー、結節性硬化症、レット(Rett)症候群、ヒアリン線維腫症候群、アルポート症候群、眼皮膚白皮症、QT延長症候群、Brugada症候群、カテコラミン心室頻拍、先天性難聴、VACTERL連合、先天性魚鱗癬、筋強直性ジストロフィー、脊髄小脳変性症、Duchenne型/Becker型筋ジストロフィー、ミオチュブラーミパチー、先天性多発関節拘縮症、クリッペル・ファイル(Klippel-Feil)シーケンス、羊膜破裂シーケンスなど
周産期NT肥厚、高年妊娠、前児染色体疾患、前児先天異常症候群、胎児形態異常、胎児ダウン症候群、胎児18トリソミー症候群、胎児13トリソミー症候群、cystic hygroma、 胎児染色体異常(XXX症候群、クラインフェルター症候群)など

1.遺伝診療

 成長や発達の遅れ、形態的な特徴、行動特性などに注目し、その組み合わせから、生まれながらの体質や遺伝学的な背景を検討し、専門的な遺伝医療を提供しています。

 まず最初に、体つきや顔立ち、からだの特徴に対し、異常形態学(dysmorphology)という考え方を用いて評価します。特徴的な組み合わせから疑われる先天異常症候群や遺伝性疾患はないか、原因について臨床的に検討していきます。

 これらの診察や一般的な検査結果だけでは、原因を絞り込めないときには、染色体や遺伝子を調べる遺伝学的検査を用いて詳しく調べる方法を提案することもあります。遺伝学的検査は、その人が生まれながらにもつ遺伝情報の変化を調べる検査です。遺伝情報には、[1]生涯変化しにくい情報であること、[2]将来の発症や健康状態に関する情報を含む場合があること、[3]血縁者と共有している可能性があること、など通常の検査とは異なる特徴があるため留意しておく必要があります。

 検査結果によっては、ご本人だけでなくご家族にも関係する遺伝情報の変化が想定されたり、明らかになることもあります。検査の目的、わかること・わからないこと、検査結果が家系内に与えうる影響などについて、検査を受ける前から臨床遺伝科の医師、スタッフと丁寧に情報を共有、整理しています。遺伝学的検査の有用性と留意点を理解した上で、検査を受けるかどうか決めることが大切です。

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外来初診の依頼元内訳(2016-2025年)n=2346

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外来初診の疾患内訳(2016-2025年)n=3213

2.遺伝カウンセリング

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 遺伝医療に特徴的な診療の一つに、遺伝カウンセリングがあります。遺伝カウンセリングは、おもにご自身や家系内の遺伝に関するあらゆる諸問題について、どうして?なぜ?と思っておられる方、具体的な遺伝関連情報を得たいと考えられている方などが対象となります。

 相談内容に対して、ご本人やご家族が置かれた状況やお気持ちを確認させて頂き、時間をかけた対話を通じて必要とされている医療情報や最新の遺伝学的知見、生活上の問題に沿った療育・子育て情報を提供しています。

 意思決定に悩む場面では、その人らしい生活や将来設計をご自身で描くことができるよう、遺伝学的、心理的な側面からサポートします。遺伝カウンセリングへの来談のきっかけとしては、地域のクリニックや当院診療科からのご紹介のほか、ご本人やご家族が当科ホームページをご覧になってからのお電話など様々です。以下、遺伝カウンセリングの相談例を示します。

相談例1
「子どもが遺伝する病気をもっていると伝えられ、説明を受けたのですが、気も動転していてよくわかりませんでした。次の妊娠も考えていたので、同じことを繰り返す可能性について気になります。」

→病気や体質がご家族に遺伝するのかどうかについてのご相談では、家系内の健康状態や診断経緯を確認させていただいております。疑われている疾患や、実施された遺伝学的検査があれば結果なども参考に、診断を検討します。そのうえで、どのような遺伝的問題が考えられるのか、次回妊娠時までにはどのような情報を整理しておく必要があるのかなどを一緒に考えさせていただきます。

相談例2
「私には生来体つきの特徴があるのですが、将来、結婚をして家庭を築きたいと思っています。両親には相談しづらくて何も聞けていません。子どもに遺伝する可能性や何か調べられる検査があれば教えて欲しいです。」

→結婚や出産のようなライフイベントでは、家族内の遺伝的問題を見つめ直す機会の一つになることがあります。遺伝学的検査ですべてが明らかになるわけではありませんが、ご自身が心配や不安を感じていらっしゃる部分を具体的にお聞かせいただき、最新の検査事情をもとに情報を整理させていただきます。

相談例3
「おなかの赤ちゃんについて出生前遺伝学的検査を受けたら、染色体に違いがみられる、と言われました。家族として迎え入れるにあたり、生まれてからどのようなことに注意したらよいのか知りたいと思っています。」

→当科では出生前遺伝学的検査は実施しておりません。その代り、隣接する多摩総合医療センター産婦人科と連携し、おなかの赤ちゃんの状態をご家族が想像しやすいよう、小児科の立場から標準的な疾患情報を共有させていただいております。疾患に関する実際的な情報と共に、お子さんそれぞれがもつ個人差にも目を向けた説明を心掛けています。妊娠する前の備えとして、出生前遺伝学的検査の考え方を知りたい方、高年妊娠を心配されている方などへの対応もおこなっておりますので、ご相談ください。

遺伝カウンセリング料

自費診療にて行っております。
初回(60分まで) 13,000円、以後30分毎に5,500円を加算
2回目以降(60分まで) 11,000円、以後30分毎に5,500円を加算
特定の遺伝性疾患や遺伝学的検査を行った際の遺伝カウンセリングでは、保険適応となる場合があります。ご不明な点はご相談ください。

遺伝カウンセリングの予約方法

  • 連絡先:042-300-5111(病院代表)
  • 遺伝カウンセリング窓口:遺伝カウンセラーが対応いたします。
  • お聞きすること:相談されたいこと、疾患のお名前、家族や血縁者の健康状態、必要に応じて検査結果など
  • 相談内容、緊急性などを検討し、適切な時期で予約枠を確保します。相談内容が遺伝カウンセリングに適しているか判断が難しい場合でも、お気軽にお問い合わせ下さい。

遺伝カウンセリング外来パンフレット(既存)(PDF 4.4MB)

 また先天性・遺伝性疾患は比較的少ないことから、症例数の多い小児専門病院が果たすことのできる支援形態の一つとして、ピアサポート(peer support)も実施しています。当科に受診の方を中心にご家族の希望に応じて、同じ疾患をもつお子さんを育て、共通の課題に直面されているご家族同志が少数単位から語らうためのお手伝いをしています。ご希望の方は、遺伝カウンセリング窓口よりお問い合わせ下さい。

NIPTに関するご相談

 東京都立小児総合医療センターおよび東京都立多摩総合医療センターは、2022年6月に日本医学会より「NIPTを実施する医療機関」の基幹施設として認証され、2022年10月よりNIPT外来を開設しました。NIPTに関するご相談についても、産科部門と小児部門が連携しながら対応しています。予約はこちらのページよりお願いします。