内分泌・代謝科

最先端、かつ、ご本人、ご家族の感じ方を尊重した治療を目指します

診療内容

小児科領域のすべての内分泌代謝疾患を扱っています。

その中で疾患数の多いものは、成長思春期の分化の異常、糖尿病くる病等のカルシウム代謝異常甲状腺副腎のホルモン異常肥満・高脂血症等の小児期成人病先天代謝異常症等です。

真に患者およびその家族を大切にする日常臨床、国内第一線での治療レベルを目標としており、外来は延べ7~8名のスタッフで診療しています。

こんな症状のお子さんが対象です

次のような訴えのある患者さんを診療しています。

  • 身長、体重<増えない・増えすぎる>
  • 思春期(乳腺発達・恥毛など) <早い、遅い>
  • 外性器<形が気になる、停留睾丸がある>
  • 皮膚<色が黒い、多毛がある>
  • 顔貌<骨格:形が気になる>
  • 糖尿病<多飲・多尿がある、糖尿がある>
  • 成人病肥満・コレステロールが高い>
  • 代謝異常症<発達が遅れる>
  • その他<低血糖がある、甲状腺が腫れている、代謝スクリーンニングで異常が出た>

主に取り扱っている疾患、治療内容

ここでは、外来にくる患者さんのなかで、比較的頻度の多い成長の心配(背の伸びがわるいなど) 、思春期の発達の心配(乳腺発達が早い、遅いなど) 、性分化の心配(外性器の形が気になる、停留精巣がある、思春期の体の発達が生じないなど) を取り上げて説明しました。

低身長

低身長がご心配のご家族、本人はたくさんいらっしゃいます。我々はこうした方の不安を小さくすること、何か身長の伸びない原因がないか確認することをしております。

外来に低身長を主訴にして来院する児としては、家族性低身長体質性思春期遅発症、あるいはその両者の重なったような方が多いです。家族性低身長は家族が小さいために低身長になっている方です。背の伸びは悪くないのが特徴です。

体質性思春期遅発症は、思春期がくるのが遅く伸び始めるのが遅いために他のお友達が伸びるとき(女の子では10~12歳、男の子では12~14歳) に低身長が目立ってきます。両者の成長曲線は図1、2に載せました。こうした方は通常、治療の対象にはなりません。

治療できるもののなかでは、男女ともにあり得る成長ホルモン分泌不全症、女の子にのみみられるターナー症候群の頻度が高いです。成長ホルモン分泌不全症では図3のように低身長の程度がだんだん強くなるのが特徴です。また、成長ホルモン分泌不全症の一部の方には、脳腫瘍を伴い他のホルモンの分泌不全の合併が生じます(図4) 。脳腫瘍が発生したときから急に低身長が生じるのが特徴です。

成長ホルモン分泌不全症については、我々が書いた医師向けの教科書「はじめて学ぶ小児内分泌疾患、2011年 診断と治療社、長谷川 行洋 著」から抜粋、引用しました。

GH分泌不全症

頻度の高さ、治療が可能であるという観点から低身長を示す疾患の中で、最も臨床的重要性の高い疾患は、後述のTurner症候群と GH分泌不全症である。

GH分泌不全症に関しては、いくつかの分類が可能である。

  1. GH関連遺伝子の異常によるもの
  2. septo-optic dysplasia など中枢神経を巻き込む先天奇形によるもの
  3. 周産期障害を伴いMRIで下垂体茎が細いなどの異常を認めるもの(invisible stalk syndrome)

に分けられる。

3の、invisible stalk syndromeは特発性に次いでかつて頻度が高かったものであるが、現在はまれとなっている、周産期障害を伴いMRIで下垂体茎が細いなどの異常を認めるGH分泌不全症に対してinvisible stalk syndromeと筆者らはよんでいる。

周産期障害(骨盤位、仮死など) 発生後1年から数年の経過で身長増加率の低下が発症する(図3) 。このような症例ではMRIにおいて下垂体茎の異常(みえない、細い) に加え、下垂体の異常 (前葉が小さい、みえない、後葉が正常より高い位置にある) を認める。

GHの分泌低下のみの場合もあるが、70~80%以上の患者がそのほかの下垂体前葉ホルモンの分泌低下を合併する。同時に数種類のホルモンが障害される場合、GHの分泌がはじめに低下する。

後天性のGH分泌不全症は脳腫瘍、頭部放射線照射後などに発症する。脳腫瘍放射線治療に関連して下垂体前葉機能低下症が発症する場合、ほとんどすべての症例で最終的にはGH以外の複数のホルモン欠損が生じる。こうしたホルモン欠損が生じる場合、invisible stalk syndromeと同様に、前葉ホルモンの中ではGHがはじめに欠損し、その後、そのほかの前葉ホルモンが遅れて欠損してくる。

一般的に、小児期のGH分泌不全症の診断には身長増加率の低下を認めること、および検査所見においてGHの分泌低下を認めること、の両者がそろっていることが必要である。GH以外の下垂体ホルモンの分泌不全を合併する場合はGH分泌不全症は重度であるため、診断は容易である。

遺伝子の異常以外の原因による単独分泌不全の場合、特に特発性GH分泌不全症はGH分泌不全の程度がより軽度であるため、慎重に診断する必要がある。こうした軽症のGH単独分泌不全は以下の理由から診断が困難である。

  1. 身長身長増加率、検査はいずれも連続した値であり、正常と異常の境界は人為的なものである。
  2. 成長ホルモン分泌誘発試験は再現性に問題がある。

表1 GH分泌不全症の分類

  1. 1.突発性GH分泌不残照
  2. 2.先天性GH分泌不全症
    1. GH関連遺伝子の異常:GH-1遺伝子異常など
    2. 奇形症候群(septo-optic dysplasia など) 、holoprosencephaly cleft lip and palate に伴うもの
    3. invisible stalk syndrome(筆者の造語であり、通常は特発性の中に含まれる) (注)1(注)2
  3. 3.後天性GH分泌不全症(注)1
    1. 視床下部、下垂体を巻き込む腫瘍(胚腫、頭蓋因頭腫、ヒスティオサイトーシスなど)
    2. 頭部放射線治療後

(注)1 多くはGH以外の下垂体前葉機能低下、尿崩症を伴う。
(注)2 まれに外傷後に同様のMRI異常とともに後天的GH分泌不全(+ほかの下垂体前葉機能低下症) が生じることがある。

以下の文章は我々の(ターナー体質の子をもつ)親の会での説明文から取っています。我々の外来でも多くの方がいらっしゃり、親の会のほか、本人の会などの活動もしております。

ターナー症候群

「はじめて学ぶ小児内分泌疾患、2011年 診断と治療社、長谷川 行洋 著」から抜粋、引用

ターナー症候群は女児2,000人に一人程度にみられる頻度の極めて多い染色体の形の違い(体質)ですターナー症候群にみられうる症状は年齢ごとに異なります。いずれの症状も各年齢にみられる可能性がある症状であり、以下に説明した年齢ごとにすべての症状を本症女性がもつわけではありません。

新生児・乳児期においてほとんど症状を認めない方、幼児期以降において低身長以外に症状を認めない方などが存在します。診断のきっかけになることとしては、頻度として低身長が一番多いです。なお、低身長GH治療により改善します。

1.新生児・乳児期にみつかる方

この時期には、合併する心疾患(心不全・心雑音)、手足のむくみ(リンパ管浮腫)などをきっかけにみつかることが多いです。心疾患の中では大動脈縮窄症はターナー症候群に特異的とされています。

2.幼児から中学入学以前まで

1~2歳以降ターナー症候群では、ほかの健常女性と比べ身長増加率が徐々に低下します。このため、この時期に低身長をきっかけに診断されることが多いです。

3.中学入学以降高校卒業まで

この時期は低身長あるいは性腺機能低下症による症状(乳腺発達の遅れ、初経がこない)のためみつかります。

思春期発達の異常

1) 思春期年齢に生じる体つきの変化

男の子も、女の子も小学生から中学生の間に、大きく体が変化します。ここではこの思春期年齢にみられる体の変化を成熟という言葉で表現しました。(これに対し成長という言葉は体の大きさについて用いることが一般的です。)
女の子の思春期に現れる体の成熟は、10歳ころに、乳腺発達から始まります。その後、外性器の周りに毛がはえます(恥毛といいます)。さらにその後、乳腺発達から2~3年以内には生理が始まります。初潮(はじめての生理)の年齢の国内平均は12歳から12歳半程度といわれています。
そのほか、友人、家族、先生方が気づくこととしては、腰回りが大きくなり、全体として女性らしいふっくらとした体つきになることがあげられます。
男の子の思春期に現れる体の成熟のなかで一番はじめにとらえられるのは11歳ころに精巣の大きさが大きくなることですが、これは(医師が診察で気づくことがあっても)本人、家族がわかることはありません。
本人が気付くこととしては、13歳ごろの恥毛の出現が一番はじめだと思います。友人、家族、先生方が観察できることとしては(恥毛出現よりさらに遅れた時期に)、声変わりすること、筋肉が発達してたくましく、がっしりとした体つきになることがあげられます。
なお、こうした体の成熟は先に時期としてあげた年齢からわかるように、全体として女性の方が男性より早く始まります。また、体の成熟に伴って成長(身長増加)もみられますが、これも女の子が11歳くらいに、男の子が13歳くらいに一番のびるという男女差があります。

2) 体の成熟を引き起こすのは体の中で作られる性ホルモン(女性ホルモンと男性ホルモンの総称)の作用

思春期に現れる体の成熟は、女の子の場合も、男の子の場合も、性ホルモンの作用によります。ホルモンというのは体の一定の場所で作られ、体の別の場所へ血液により運ばれ、そこで作用するものです。女の子では、女性ホルモンが卵巣で作られ、例えば、乳腺に作用して発達を促すことになります。
男の子なら、男性ホルモンが精巣で作られ、例えば、筋肉に作用して発達を促すことになります。

3) 体の成熟の始まり、進む時期の個人差は大きい

体の成熟の進行する時期には個人差が少なくないことが知られ、例えば、女の子の乳腺発達は病気でなくとも7歳から始まる子がいますし、逆に12歳になって始まるような子もいます。男の子でも体の成熟の時期の個人差は大きいことが知られています。
また、体の成熟と同じように、背が伸び始める時期も早い子と、遅い子がいます。伸びはじめが早い子は早くに背が止まり、遅い子は高校生になっても背が伸びることになります。
なお、女の子場合、1~2歳で乳腺発達が生じることがよくあります。多くの場合、ごく軽度の乳腺発達であり、自然に消退し治療の対象になりません。代表的な方を一例提示しておきます。

症例早発乳房 女児 3歳6ヶ月
経過6ヶ月健診で乳腺腫大を指摘され、2歳2ヶ月、小さくなる傾向がないため、紹介された。成長速度の増大(身長が急に伸びること)はなく、その後、徐々に小さくなっているので無治療で経過観察した。現在ほぼ、乳腺腫大は消えている。

「はじめて学ぶ小児内分泌疾患、2011年 診断と治療社、長谷川 行洋 著」から抜粋、引用

図1:早発乳房
図1

4) 治療の対象になる思春期相当の体の変化

女児、男児でそれぞれ7~8歳未満、8~9歳未満で思春期に生じるような体つきの変化が生じたときには、検査、治療が必要となることがあります。
逆に女児、男児でそれぞれ12~13歳以降、13~14歳以降になっても思春期発達がみられないようあれば、やはり、検査、治療が必要なときがあります。

性分化 (生まれるまでに起きる男児、女児の外性器の変化) の異常

精子と卵子が受精するときには、一つの細胞ですが、そこから体のすべての部分が出来上がります。

生まれるときには男児、女児の差が生じますが、お母さんのおなかのなかでははじめは男女の差異はありません。この生まれるまでにだんだん生じる性差ができる道のりのことを性分化といいます。

この性分化の道のりは通常はどのように進むか、細かいところまで医学でわかりはじめています。数千人に一人の割合で、この道のりが通常とは異なって進みます。

こうした場合、生まれたときに外性器の形が違う(精巣が触れない、尿の出る道が通常とは違うなど)、思春期年齢になっても思春期が通常と同じように進まない(乳腺発達が生じない、生理が生じない恥毛がはえないなど)のようなことがおきます。

こうした性分化の道のりが通常とは異なる体質をもつ方をまとめて性分化疾患といいます。性分化疾患では、多くの方とは異なる性腺、外から見た性器の形の違いなどが起こります。性分化疾患にはさまざまな種類がありますが、ここでは、一つだけ、頻度が多く、新生児早期に治療を開始する必要のあるものの代表としてCYP21A2欠損症(21水酸化酵素異常症)をあげておきました。

2万人に1人以上の比較的多い遺伝子異常であり、生後数日に血中17OHP値を用いたスクリーニングが行われています。無治療では生後2~3週以内に副腎不全をきたす可能性があり、XXにみられる男性化の中で最も多い原疾患です。

症例CYP21A2遺伝子異常症(21水酸化酵素欠損症) 女児 日齢2
経過生後直後に陰核肥大、色素沈着を指摘され、生後2日目に当院に転院となった。
診察所見一般状態は悪くなく、陰核肥大、陰嚢様の大陰唇を認めたが、精巣と思われる腫瘤は蝕知しなかった。
検査所見・超音波では子宮、腟と思われる構造物を確認
・すぐに結果が出たNa、K、血糖を含めた一般検査は異常なし
・3日後に結果が出た検査;ACTH 280 pg/mL、17OHP 77 ng/mL
超音波検査の直後から
はじめた治療
子宮、腟と思われる構造物を確認できたことから染色体は46,XXであることが予想でき、男性化徴候とあわせて考えて、CYP21A2遺伝子異常症(21水酸化酵素欠損症)の診断が最も考えられるため、コートリルRを80 mg/平方メートル/日、分4で開始した。3日後に診断が確定した。

「はじめて学ぶ小児内分泌疾患、診断と治療社、長谷川 行洋 著」から抜粋、引用

フリージア

なお、我々は性分化疾患において、「フリージア」という性分化疾患に特化したチーム医療を実施しています。

フリージアは、高い水準で診療する性分化疾患センター的機能を持ち合わせているチームです。出生直後、外から見た性器が典型的でない方から、成人になられて、性のことで悩みを抱えている方まで、紹介を受けています。外科、泌尿器科、内分泌・代謝科、児童・思春期精神科、家族支援部門、看護部門で構成され、外来およびカンファレンスをしております。看護師は、性分化疾患の診療の経験が長い専門性が高いスタッフが所属しています。我々は短期的にも長期的にも、医療面、社会面、精神面まで責任をもって診ることができるチームです。成人の方は、我々の施設を通して、性分化疾患にも専門的診療を行っている成人施設にご紹介できます。

フリージアの会はいつでもオープン

相談、共同勉強会歓迎です。

お問い合わせの際は、下記までご連絡下さい。
・ 042-300-5111 (代表)

糖尿病診療でのチーム医療

糖尿病診療でのチーム医療

我々は糖尿病診療においても、チーム医療を実施しています。医師、外来看護師、病棟看護師、栄養士で、入院患者、コントロールが容易でない患者の情報を密接に共有して、患者及びその家族を支えています。年一回、患者、その家族のための「きずなの会」という勉強会、講演会も行っています。