リウマチ膠原病科診療内容・特色

診療内容・特色

当科の使命~多摩地域の全てのリウマチ膠原病患者が多摩地域で継続して標準的な診療が受けられるように

当科は日本でも最も歴史の古いリウマチ膠原病科の一つです。平成2年7月のリウマチ膠原病科開設(旧都立府中病院)以来、当科ではリウマチ内科とリウマチ外科の連携を全国でも先駆けて行っています。多摩地域は約400万人の医療圏でリウマチ膠原病患者は数万人いることが想定されていますが、重症病態まで診ることができる施設は非常に限られています。現在、当科には約3000人超の患者が通院しており、多摩地域のリウマチ膠原病診療の中核の一つとなっています。さらに東京都全体の難病医療の充実にも貢献したいと考えています。

私たちは、多摩地域の全てのリウマチ膠原病患者が多摩地域で継続して標準的な診療が受けられるようにすることを第一の使命と考えています。そのため地域の病院およびクリニックと緊密に連絡しながら、急性期や合併症の診療は当院で行い、慢性期や安定期の診療はお近くのリウマチ専門医のいるクリニックで診療を行う体制をとっています。また当科の医師は東京都保健医療公社である多摩北部医療センターリウマチ膠原病科多摩南部地域病院(リウマチ膠原病)でも診療を行っており、また当院及び日野市立病院内科を含む4病院で定期的なWEBカンファレンスを行っています。
この体制により、これまで都内の大学病院への通院を余儀なくされていた患者さんも多摩地域で継続して高いレベルの標準的な診療が受けることが可能となりました。また当院に隣接する都立小児総合医療センターに小児リウマチ膠原病外来が開設されました。当科では小児総合医療センターとの連携にとどまらず、他院からの受け入れもふくめ成人への移行医療を積極的に行っています。

多摩総合医療センターと多摩北部医療センター、多摩南部地域病院、小児総合医療センターのリウマチ連携

入院治療においてリウマチ内科ではチーム制をとっており、主治医だけでなくチーム全員でベストの治療方針を毎日検討しながら診療を行っています。またリウマチ外科で入院してもリウマチ内科が併診して合併症の管理などを行っています。

当科の特徴

1. 関節リウマチの診療

リウマチ内科と外科の合同カンファレンス

関節リウマチでは主に滑膜の炎症により関節軟骨やその近傍の骨が障害されます。その結果、痛みや腫れが出るだけでなく、放置していると関節が破壊され、関節機能が障害されます。幸いなことに、最近の生物学的製剤をはじめとする治療薬および治療戦略の進歩により、関節の機能の障害や破壊をかなり抑えることができるようになりましたので、関節リウマチの患者の生活の質(QoL)は著しく改善しました。
当科は内科系医師と整形外科系医師が一緒に従事している専門科で、このような形態をとる専門科は全国的にも珍しく、そのメリットを最大限生かして診療しています。内科的治療および外科的治療に加えて、地域のかかりつけ医や専門医、近隣の病院やリハビリ専門病院と連携することにより包括的な診療を行っているのが特徴です。

関節リウマチの治療では、疾患活動性(病勢)を算出し、積極的に抗リウマチ薬を使用しながらその値を目標の値(寛解)にまで治療する戦略が個々の治療薬の選択よりも重要です。また患者自身がこの治療戦略を理解し、治療方針の決定を医師とともに決めることがガイドラインでも強調されています。
当科では、タッチパネル問診を用いたリウマチ診療支援システムの導入により、毎回、患者さんの疾患活動性(RAPID3)を診察前に算出し、個々の患者さんの治療方針を決定に活用しています。たとえば、ずっとその値が3以下でしたら寛解を維持できていることが示唆され、急に高くなった場合は、悪化(再燃)が示唆され、治療の強化が必要である可能性があります。このように患者さん自身が疾患活動性を把握することは治療方針の決定に役に立ちます。 (読売新聞(外部リンク)

タッチパネル問診
疾患活動性の評価

関節リウマチの状態は血液検査やレントゲンでは十分にはわからないことも少なくありません。関節超音波で症状や所見のある部位を詳しく調べ、治療に役立てることも行っています。

関節超音波

また当院には複数の日本リウマチ財団登録リウマチケア看護師がいます。リウマチ膠原病に関する患者指導や生物学的製剤などの自己注射指導、自助具の紹介、リウマチ膠原病外来だよりの発行なども行っています。

自助具
リウマチ膠原病外来だより

リウマチ外科では、外来での薬物療法に加えて、関節破壊が進行し生活の質(QoL)が落ちてしまった患者さんには手術療法を行っています。
手術療法には、大きく分けて人工関節置換術と関節形成術の2つがあります。肩関節・肘関節・股関節・膝関節といった、中・大関節がいたんでしまった場合、人工関節置換術が検討されます。当院では、感染予防のため、最高ランクのクリーンルームにて人工関節置換術を行っています。また、人工膝関節置換術では、手術中ナビゲーションシステムを使用したり、術前CTからご本人専用の手術器具を作製したりするなど、技術の進歩もみられ、当科でもすでに導入しています。
手や足のゆびの変形に対しては、関節形成術を行っています。手指の変形は、外見上の問題だけでなく機能障害にもつながります。母指やその他の指の関節変形を矯正することによって、使いやすくなります。また、足は外反母趾や足の裏の「ウオノメ」などから、歩行障害がおこることがあります。これも関節の脱臼が原因ですので、これを矯正することにより、足ゆびがまっすぐになり、当たって痛いということがなくなります。
リウマチ患者さんは、骨や皮膚などの組織が弱いことが多く、間質性肺炎や糖尿病などの合併症がある場合もあります。また、免疫機能を抑制する薬も多く、感染やキズの治りが心配です。それらのことに細心の注意をはらいながら、日々手術を行っています。さらに、リウマチ外科で入院中にもリウマチ内科のサポートがあり、より安心して手術に臨めるという点も当科の特徴です。

2. 膠原病の診療

膠原病には、全身性エリテマトーデス、シェーグレン症候群、全身性強皮症、血管炎症候群、多発性筋炎・皮膚筋炎をはじめ多くの疾患が含まれます。関節リウマチだけでなく、膠原病も治療が進歩し、学業・就労・結婚・妊娠出産・旅行など、生活の質(QoL)は著しく改善しています。膠原病では、複数の臓器に障害をきたすことがありますが、呼吸器内科、腎臓内科、消化器内科、皮膚科、脳神経内科など複数の専門診療科と協力しながら診療を行っています。

全身性エリテマトーデス(SLE)専門外来

全身性エリテマトーデス(SLE)は皮膚症状、関節症状、全身倦怠感などの症状の他、腎炎など全身の合併症をきたしうる疾患です。近年になり治療薬も増え、QoLも改善が期待されますが、日本では漫然とステロイドが投与されていることが少なくありません。そこで当科では全国に先駆けて2016年4月にSLE専門外来を開設しました。当院には2009年より、SLEの標準的治療薬であるヒドロキシクロロキンの国内での開発および適正使用に関して全国的に啓発活動を行っています。SLEの治験やヒドロキシクロロキンを用いた医師主導臨床試験なども行っています。予約取得時に「SLE外来」の予約とお伝えください。

レイノー外来

全身性強皮症は全身の皮膚が硬くなることが特徴で、早期に発見し治療介入を行うことがQoLの改善に大切です。寒冷刺激で手指の色が白くなるレイノー現象は初期の全身性強皮症のサインとして重要です。しかしこの現象は健康な人でも約5~10%に認められ、病気との区別が大切です。当科では2016年4月に紹介状なしでも受診できるレイノー外来を開設しました(要予約)。爪の生え際の毛細血管をみる特殊な顕微鏡(ビデオキャピラロスコピー)を日本では先駆けて導入し、全身性強皮症の早期発見を目指します。予約取得時に「レイノー外来」の予約とお伝えください。

ビデオキャピラロスコピー

3. 結晶性関節炎の診療

その他のリウマチ性疾患として、たとえば痛風や偽痛風などの結晶性関節炎が日常診療で見落とされることも少なくありませんが、当科ではリウマチ医が偏光顕微鏡を用いて迅速に診断および治療を行っています。 当院は偏光顕微鏡を用いた結晶性関節炎の診療の啓発活動を全国的に行っています。(詳細

偏光顕微鏡


4. 小児リウマチ膠原病外来(都立小児総合医療センター)

隣接する都立小児総合医療センター腎臓・リウマチ膠原病科に「小児リウマチ膠原病外来」が開設されています。主な対象疾患は、若年性特発性関節炎、全身性エリテマトーデス、若年性皮膚筋炎、全身性強皮症、ベーチェット病、シェーグレン症候群、血管炎症候群、周期性発熱症候群などです。本外来では、米国で臨床経験のある小児リウマチ膠原病医が標準的医療をアップデートしながら行っています。また成人への移行医療もシームレスに可能です。

将来のリウマチ膠原病診療の発展のために

当院はリウマチ専門医研修指定施設であり、次世代のリウマチ膠原病専門医を育てる使命があります。また当科は多摩地域の基幹病院として、厚生労働省研究班にも参加しているほか、臨床研究や治験 、雑誌や書籍の執筆、海外との交流、他院からの研修受け入れ(短期・長期)なども積極的に行っています。

受診の仕方について

少しでも混雑の緩和のため受診はすべて予約制です。また新患の場合はより精度の高い円滑な診療をするために診療情報提供書の持参をお願いしています。
(レイノー外来は、紹介状なしでも予約を行い受診することができますが、非紹介患者初診加算料がかかります。)

病院の「予約センター」にお電話をして予約をとってください。受診までの待ち日数の不均衡を減らし、どの患者さんもできるだけ早く診察ができるようにするため医師の指名は受けておりませんのでご了承ください。また、診療の円滑化のため、特に初診患者さんにつきましては紹介元医療機関様にあらかじめ診療情報提供書のファクス(または郵送(リウマチ外来宛て))をお願いしております。ご理解をお願いいたします(前もっての情報のご提供が困難な場合には、予約時にお知らせください)。

なお急を要する場合、できるだけ正確な情報をいただくために、ご紹介の医師から直接当科の当番医までご連絡くださいますようお願い申し上げます。