遺伝子診療科

都立駒込病院 遺伝子診療科 部長 山口 達郎

患者さんへのメッセージ

“がん”は、心疾患、脳血管疾患とともに三大疾病のひとつと言われています。最近の統計によれば、日本人の2人に1人は”がん”を発症し、3人に1人は”がん”でお亡くなりになると報告されています。なぜヒトは”がん”を発症するのでしょうか?”がん”は、遺伝的要因(親から受け継いだ遺伝子の情報)と環境的要因(食生活、生活習慣、生活環境など)により発生すると考えられていますが、多くの場合、その原因を特定することはできません。しかし、一部では”がん”発症の原因遺伝子が特定されされていることがあり、そのような腫瘍を『遺伝性腫瘍』と呼びます。『遺伝性腫瘍』には、「遺伝性乳がん卵巣がん」や「リンチ症候群」、「家族性大腸腺腫症」などがあります。「遺伝性腫瘍」の患者さんでは、同じ”がん”を繰り返し発症したり(多発性)、様々な”がん”を発症したり(多重性)、比較的若く発症したり(若年性)、ご家族に”がん”の患者さんが多くいらっしゃったり(家族集積性)します。そのため、生涯に渡る検査やご家族への啓発が重要です。
私達は『遺伝性腫瘍』についての遺伝カウンセリング・遺伝学的検査などを行っています。遺伝カウンセリングでは遺伝の問題に直面した患者さんに対して、患者さんが自分の力で意思決定を行えるように正確な情報提供と継続的な心理社会的な支援を行います。遺伝学的検査を受けようか迷っている場合の相談窓口でもあります。「多発性内分泌腫瘍症2型」と特定の条件*に当てはまる「遺伝性乳がん卵巣がん」については保険診療となりますが、それらを除く遺伝学的検査は保険償還されていないため全額自費負担となります。なお、一部の遺伝学的検査は多施設共同研究へのご参加などにより無料で行っていることもありますのでお問い合わせください。

*化学療法歴のあるHER2陰性の再発または手術不能乳がんで、リムパーザ®(抗悪性腫瘍剤)適応の目的で受検する場合

リンク:駒込コラム『がんと遺伝の関係 ~がんが遺伝する可能性と遺伝性腫瘍について~』
https://www.tmhp.jp/komagome/section/column/dept/idenshi/203.html