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神経難病対策と神経病院の歩み

スモン研究班を嚆矢として,我が国の稀少難治性疾患克服事業は世界に先駆けて導入されました。1972年に厚生省は難病対策要綱を定め、難病を(1)原因不明、治療法未確立であり、かつ後遺症を残すおそれの少なくない疾病、(2)経過が慢性にわたり、単に経済的な問題のみならず介護等に著しく人手を要するために家庭の負担が重く、また精神的にも負担の大きい疾病と定義しました。

当時8疾患の研究事業のうち4疾患への医療費助成から始まった対策は、徐々に対象を広げ、2009年には臨床調査研究事業対象疾患は130疾患に増え、「特定疾患治療研究事業」による医療費助成対象は56疾患(約35%は神経難病)にまで広がりました。

その後、医学医療の進歩を反映した制度の見直しの必要性、対象疾患限定による不公平さ、自治体の医療費負担増大による財政的破綻、疾患登録内容の質の劣化と登録数の不均一等の問題が顕在化し、2011年から難病対策委員会で見直しがなされた結果、2015年1月1日に「難病の患者に対する医療等に関する法律」(いわゆる難病新法)が施行されました。この時点から、難病のうち患者数が本邦において人口の0.1%程度以下であり、かつ客観的な診断基準(又はそれに準ずるもの)が確立しているとの要件を満たし、厚労大臣が医療費助成の対象と定めた疾患が「指定難病」と定義されました。2015年7月1日には、指定難病は306疾患(そのうち神経難病は約26%)に増加しました。

当院開設の経緯を紹介するパネル展示(2階談話室に掲示)

当院は1980年の開設以来、外来・入院・在宅訪問診療等を通じて、診断時点から通院困難になった時点においても長期にわたって医療とケアを提供してきました。診断、初期治療はもちろんのこと、その後の維持療法,リハビリテーション、ケア、在宅療養におけるサポート、地域連携、そして緩和ケアにいたるまで、多職種の連携のもとで患者さんとその家族を長期にわたってお支えするシステムを構築しております。近年の医学の発展は著しいものがあり、従来は治療法がないとされていた神経難病において新たな治療法が次々と開発されてきました。とくに神経免疫疾患における治療法の進歩は著しく、多くの疾患で寛解導入が可能となりました。また遺伝性神経疾患においても遺伝子治療・核酸治療が導入されるようになってきました。その一方で,治療法がない疾患もまだ数多く、継続的・専門的で高度なサポートが求められています。私たち神経病院には、各疾患のエキスパートが揃っており、また神経難病に関する豊富な経験があります。

高度に発展したこの21世紀の社会あって健康長寿を謳歌している日本ではありますが、その影で病や障害をかかえた人生を生かされている方々の思いに寄り添いながら、神経病院の医療を展開していきたいと、私たちは願っております。患者さんとそのご家族の幸福を最優先に考えながら、またオーダーメードの治療とケアのオプションを探りながら、希望を持って前向きに取り組んでいく所存です。ぜひ、神経病院にご相談ください。そして私たちとともに病を克服していきましょう。