リウマチ膠原病内科 診療内容・特色

疾患別の当科の診療の特徴

1. 関節リウマチの診療

当科には約1,400人の患者さんが通院しています。
関節リウマチでは主に滑膜の炎症により、関節軟骨やその近傍の骨が障害されます。その結果、痛みや腫れが出るだけでなく、放置していると関節が破壊され、関節機能が障害されます。幸いなことに、最近の生物学的製剤やJAK阻害薬をはじめとする治療薬および治療戦略の進歩により、関節の機能の障害や破壊を抑えることができるようになり、関節リウマチの患者さんの生活の質(QoL)は著しく改善しました。その結果、関節の痛みや腫れ、炎症などがなく日常生活に支障がない「寛解」を維持できるようになりました。

連携しているお近くのリウマチ専門医で診療を継続する患者の数が増加し、当科で通院を継続している患者数は減少しています。
しかし、間質性肺炎などの合併症や最新の薬物療法を行っていても、関節破壊による機能障害のため日常生活に支障のある患者や、治療が困難な関節リウマチの患者さんはまだいらっしゃいます。
当科は最新の薬物療法と最新の手術療法を駆使し、すべての患者さんのQoLを最大化できるように努めています。

疾患活動性の評価

関節リウマチの治療では、疾患活動性(病勢)を算出し、積極的に抗リウマチ薬を使用しながらその値を目標の値(寛解)にまで治療する戦略が、個々の治療薬の選択よりも重要です。
また患者さんご自身がこの治療戦略を理解し、治療方針の決定を医師とともに決めることがガイドラインでも強調されています。

当科では、タッチパネル問診を用いたリウマチ診療支援システムの導入により、毎回、患者さんの疾患活動性を診察前に算出し、個々の患者さんの治療方針を決定に活用しています。
たとえば、ずっとその値が3以下でしたら寛解を維持できていることが示唆され、急に高くなった場合は悪化(再燃)が示唆され治療の強化が必要である可能性があります。
このように患者さんご自身が疾患活動性を把握することは治療方針の決定に役立ちます。(読売新聞オンライン ヨミドクター(外部リンク)
本システムは極めて有用であり、他の都立病院でも導入されました。

タッチパネル問診
疾患活動性の評価

筋骨格超音波検査

当科では年間約2,000件の筋骨格超音波を実施しています。当科の特徴として診察室の中に超音波を設置しています。
外来受診時に担当医が症状や所見のある部位に超音波をあてることにより、診断と治療に迅速に役立てています。リウマチ性多発性筋痛症や脊椎関節炎の評価など、より専門的な評価については超音波を専門とするリウマチ医が生理検査室で行っています。

関節超音波

手術療法

外来での薬物療法に加えて、関節破壊が進行し生活の質(QoL)が落ちてしまった場合は、リウマチ外科と手術療法について検討します。

手術療法には大きく分けて、人工関節置換術と関節形成術の2つがあります。
肩関節・肘関節・股関節・膝関節といった、中・大関節がいたんでしまった場合、人工関節置換術が検討されます。
当院では感染予防のため、最高ランクのクリーンルームにて人工関節置換術を行っています。また、人工股関節置換術では手術中になびげージョンシステムを使用したり、術前CTからご本人専用の手術器具を作製したりするなど、最先端の技術を導入しています。

手や足のゆびの変形に対しては、関節形成術を行っています。
手指の変形は外見上の問題だけでなく、機能障害にもつながります。母指やその他の指の関節変形を矯正することによって使いやすくなります。また、足は外反母趾や足の裏の「ウオノメ」などから、歩行障害が起こることがあります。これも関節の脱臼を原因ですので、これを矯正することにより、足ゆびがまっすぐになり、当たって痛いということがなくなります。

リウマチ患者さんは、骨や皮膚などの組織が弱いことが多く、間質性肺炎や糖尿病などの合併症がある場合もあります。また、免疫機能を抑制すること薬も多く、感染やキズの治りが心配です。
それらのことに細心の注意をはらいながら、日々手術を行っています。
さらに、リウマチ外科で入院中にもリウマチ膠原病内科のサポートがあり、より安心して手術に臨めるという点も当科の特徴です。

合同カンファレンス
リウマチ膠原病内科とリウマチ外科の合同カンファレンス

2. 全身性エリテマトーデス(SLE)の診療

全身性エリテマトーデス(SLE)は、全身の臓器に炎症を起こす自己免疫疾患で、特に若年女性に多く見られます。
当科には約500人の患者が通院している国内有数のSLE診療の施設で、新薬の開発治験も複数行っています。2016年にSLE専門外来を開設し、積極的にSLEの患者の受入を行っています。
ヒドロキシクロロキンは長年未承認薬でしたが当院の活動もあり2015年に国内でも使用できるようになりました。
SLE患者の生命予後を改善するため、すべてのSLE患者が服用することが推奨されており、当科では83%が継続しています。
ヒドロキシクロロキン網膜症に関する相談も全国の医師・患者から受け付けています。

3. シェーグレン症候群の診療

シェーグレン症候群は、涙や唾液の分泌が低下する自己免疫疾患で、目や口の乾燥が主な症状です。
当科には約380人の患者が通院しています。確定診断で口唇生検および病理学的検査が必要となることがありますが、これらに習熟した施設で行うことが重要です。当院は多数の口唇生検の経験だけでなく、最近は超音波を用いた評価も積極的に行っています。
眼科、口腔外科、耳鼻咽喉科、呼吸器内科などの専門各科と連携しながら診療を行い、また新薬の開発治験も行っています。

4. 全身性強皮症の診療

全身性強皮症は、皮膚や内臓が硬くなる自己免疫性疾患で、レイノー現象が初期の兆候として知られています。
当科には約200人の患者が通院しています。寒冷刺激で手指の色が白くなるレイノー現象は初期の全身性強皮症のサインとして重要です。しかしこの現象は健康な人でも約5~10%に認められ(本態性レイノー)、その区別は容易ではありません。私たちは爪の生え際の毛細血管をみる特殊な顕微鏡(ビデオキャピラロスコピー)を用いてその区別を行っています。
2016年にレイノー外来を開設し、治療については臓器障害に応じて呼吸器内科や皮膚科など専門各科と連携しながら診療を行っています。

ビデオキャピラロスコピー
ビデオキャピラロスコピー

5. 巨細胞性動脈炎

巨細胞性動脈炎は、主に高齢者にみられる血管の炎症性疾患で、放置すると失明などの重篤な合併症を引き起こす可能性がある疾患です。
当科には約50人の患者が通院しています。失明のリスクがある疾患ですが、早期に診断し治療を開始することにより視力低下などの合併症を防ぐことができます。
2025年にGCA専門外来を開設し迅速に精査をする体制を整えました。
本邦でも患者数が最も多い施設の一つですが、新規の失明患者は1人も発生していません。

6. ANCA関連血管炎

ANCA関連血管炎は、自己免疫によって全身の小型血管が炎症を起こし、腎臓や肺などの重要臓器に障害をもたらす疾患群で顕微鏡的多発血管炎、多発血管炎性肉芽腫症、好酸球性多発血管炎性肉芽腫症が含まれます。
当科には約140人の患者が通院しています。診断は血液検査に加えて病理学的検査が重要であり、当院の場合は迅速に検査を行う体制が整っています。治療については臓器障害に応じて、呼吸器内科や腎臓内科など専門各科と連携しながら診療を行っています。

7. 皮膚筋炎・多発性筋炎

皮膚筋炎・多発性筋炎は、筋力低下や筋肉の炎症を主症状とし、皮膚の発疹を伴うこともある自己免疫性疾患です。
当科には約170人の患者が通院しています。東京都立神経病院と連携して診療を行っていることが特徴です。

8. 脊椎関節炎

脊椎関節炎は、脊椎や仙腸関節に炎症をきたす慢性疾患で、腰痛や関節のこわばりが主な症状です。
当科には約190人の患者が通院しています。当科では筋骨格超音波を積極的に診療に用いています。乾癬や掌蹠膿疱症など皮膚疾患が合併する場合は、皮膚科とも緊密に連携しながら診療を行っています。

9. リウマチ性多発性筋痛症

リウマチ性多発性筋痛症は、高齢者に多く見られ、肩や腰の痛みと朝のこわばりを特徴とする炎症性疾患でステロイドが著効します。
当科には約130人の患者が通院しています。高齢者でADLが低下している場合は入院で精査および治療開始を行うことも多いです。本疾患についても当科では筋骨格超音波を積極的に診療に用いています。

10. 結晶性関節炎(痛風・偽痛風)

結晶性関節炎(痛風・偽痛風)は、関節内に尿酸やピロリン酸カルシウムなどの結晶が沈着し、急激な関節の炎症と激しい痛みを引き起こす疾患です。非常に頻度が高い疾患ですが、典型的でない場合は誤診されていることが多い疾患です。
当科では(超音波を用いて)関節液を採取し、偏光顕微鏡を用いて迅速に診断する診療を2009年から行っており、全国的に啓発活動を行っています。本活動は2022年の関節液検査の保険収載に貢献しました。

偏光顕微鏡

偏光顕微鏡

11. 自己炎症症候群

遺伝子異常により免疫が過剰に反応し、発熱や腹痛、関節痛などの症状を周期的に繰り返す疾患群です。
遺伝性の自己炎症性疾患(家族性地中海熱など)が疑われるかたは臨床遺伝専門医の資格を有するリウマチ専門医がゲノム外来で診療を行っています。認定遺伝カウンセラーも一緒に診療にあたっており、2019年以降、44件の自己炎症症候群に関する遺伝カウンセリングを実施しています。

東京都の難病医療の発展に向けて

当院は、東京都立神経病院とともに、東京都難病診療連携拠点病院のひとつです。
リウマチ膠原病患者では免疫異常によって引き起こされる神経疾患や神経筋疾患を合併することも少なくありません。同じ多摩キャンパスにあり、神経疾患に特化した専門病院として日本最大規模である東京都立神経病院と協力して診療にあたります。また高度な医療の提供だけでなく就業相談などのQoLを高めるサポートを積極的に行います。
なお、2029年以降は、当科は東京都立神経病院と併合し、東京都立難病センター(仮称)として難病医療の発展に貢献します。

東京都23区内の都立病院のリウマチ膠原病科とも定期的にカンファレンスを行い、各施設の専門性・特性を活かした連携を行っています。

  • 東京都立松沢病院:リウマチ膠原病科
    日本最大の精神科病院で新たにリウマチ膠原病科を開設しました。
    こころとからだの両面でのQoLを最大化することが可能です。
  • 東京都立駒込病院:膠原病科
    全国的にIgG4関連疾患やキャッスルマン病の専門施設として知られています。
  • 東京都立墨東病院:リウマチ膠原病科
  • 東京都立大塚病院:リウマチ膠原病科

受診の仕方について

少しでも混雑の緩和のため受診はすべて予約制です。また新規の患者さんの場合は、より精度の高い円滑な診療をするために診療情報提供書の持参をお願いしています。
病院の「予約センター」に電話をして予約をお取りください。
受診までの待ち日数の不均衡を減らし、どの患者さんもできるだけ早く診察ができるようにするため医師の指名は受けておりませんのでご了承ください。
また、診療の円滑化のため、特に初診の患者さんにつきましては紹介元医療機関にあらかじめ診療情報提供書のFAXをお願いしております(FAXが難しい場合はリウマチ外来宛ての郵送でも構いません)。
なお急を要する場合、できるだけ正確な情報をいただくために、ご紹介の医師から直接当科までご連絡くださいますようお願い申し上げます。 

また、お住まいの地域・病状・混雑状況によって、緊密な連携を行っている東京都立多摩北部医療センター、あるいは東京都立多摩南部地域病院をご案内させていただくことがあります。

線維筋痛症は全身に慢性疼痛を来す疾患ですが、当科の十分な経験がないこと、診断や治療にリウマチ膠原病一般とは異なるアプローチを必要とすることなどの理由により、診療は行っておりません。