当院では骨盤臓器脱に対する治療を積極的に行っています。
骨盤の中には膀胱・子宮・直腸があり、これらは筋肉や靭帯で支えられています。
分娩による損傷や加齢によって筋肉や靭帯が弱くなると支えられなくなって骨盤内の臓器が下がってきます。
膀胱が下がるのを膀胱瘤、子宮が下がるのを子宮脱、直腸が下がるのを直腸瘤と言います。
子宮を摘出した後に腟の断端が下がるのを子宮摘出後腟脱または小腸瘤といいます。
骨盤臓器脱の症状
・脱出していることによって股に何か挟まった感じの違和感や異物感
・尿がでにくい、尿が近い、尿がもれるなど排尿に関する症状
・ひどい場合には水腎症をおこしたり腎盂腎炎を起こすことがあります
治療の適応
骨盤臓器脱は、脱出の程度が大きくても、本人の症状が辛くなければ特に治療は必要ありません。
辛い症状があり、希望があれば治療を行います。
但し水腎症をおこしている場合や、脱出していることで擦れてただれている場合は、積極的に治療を勧めます。
骨盤臓器脱の治療
1.骨盤底筋体操(ケーゲル体操)
2.生活指導;ダイエット、腹圧をかけない(重いものを持たない、便秘をしない)
3.ペッサリー
4.手術療法
●骨盤底筋体操
お尻の穴をキューッと引き締める体操をして骨盤底筋を鍛えます。
即効性はありませんが、程度が軽い場合は続けることで症状が良くなることが多いです。
●生活指導
日常的に重いものを持つ仕事をされていたり、腹圧をかける方に起こりやすいです。お腹に力をかけない生活を心がけてください。また肥満は腹圧がかかり症状が悪くなります。少しダイエットをするだけで症状が良くなることがあります。
●ペッサリー
ドーナツ型のリングを腟内に入れて骨盤臓器を支えます。
堅い異物を柔らかい腟の中に入れるので、擦れたりただれたりして出血することがあります。
定期的なチェックが必要です。ご自身でペッサリーの着脱をできれば、より快適に使用できます。
●手術療法
手術にはいくつか方法があります。
脱出の部位、年齢、性交渉の有無、子宮および卵巣病変の有無、健康状態などによりそれぞれ術式は異なります。
診察と詳しい問診により、ひとりひとりに最も適した手術法を提示します。
主に行っている手術法を紹介します。
- 経腟的腹腔鏡下子宮脱根治術(vNOTES)
(単純子宮全摘術+腟断端挙上術+前後腟壁形成+肛門挙筋縫合)
お腹を切らずに、腟から内視鏡を併用して子宮摘出した後、腟断端の吊りあげを行います。その後腟壁を縫い縮めます。手術時間は約3時間、入院期間は基本的に術後7日間です。術後腟が狭くなることがあり、性交渉のある方は要相談です。 - 腹腔鏡下仙骨腟固定術・ロボット支援下仙骨腟固定術(LSCまたはRSC)
腹腔鏡下またはロボット支援下にメッシュを使って骨盤臓器を引き上げます。子宮の上部を切断摘出する場合が多いです。股関節が開かない方、性交渉のある方に適しています。手術時間は約4時間。入院期間は基本的に術後約6日間です。 - 子宮脱根治術
お腹を切らずに腟から子宮を摘出して、たるんだ腟壁を縫い縮めます。手術時間は約2時間と比較的短く、高齢の方にも適した手術です。 - 腟閉鎖術
脱出している腟壁を縫い合わせる手術法です。体への負担が最も少ない方法で、持病の多い高齢の方に適しています。手術時間は約1時間です。術後3時間から歩いたり、食べたり、飲んだりすることができます。入院期間は基本的に術後約3日間です。子宮は摘出しません。腟を閉鎖するので術後、子宮癌の検診はできなくなります。
その他症例に応じて術式を選択します。
お悩みの方はまず婦人科外来でご相談ください。
性機能外来では、性機能障害でお悩みの方の相談をお受けしています。性に関するお悩みの中には、年齢に関係なく治療の適応になるものも少なく、医学的には性機能障害といいます。日本にも性機能障害を扱う専門の学会があり、数は少ないですが専門の医師がいます。性機能障害は放置すると重症化したり、慢性化して治療が難しくなる場合や、生涯に渡りご本人やパートナーの生活の質を著しく落とす原因となる場合もあります。
女性の症状として具体的に挙げると、痛みや恐怖、緊張で挿入ができない(挿入障害)、オルガズムがない、性欲がなくて相手の求めに応じられない、性行為がいや…などがあります。また、ご本人だけの問題だと思っていたことが、実はパートナーにも問題があることが発覚することもあります。逆もまた然りです。
ご相談内容は、ご本人のことでもパートナーやご家族のことでも構いません。ご家族やパートナーとの受診も可能です。是非一度ご相談ください。
●費用(保険適用外)
・初診 1時間 11,000円(税込)
・再診 30分 5,500円(税込)
(注)検査(血液・画像等)およびお薬も保険適用外となります。
2025年9月下旬から一時休診します。2026年5月頃に再開予定です。
当科では、豊富な腹腔鏡下手術の経験を活かし、Female to Maleの方への内性器摘出術を行っています。
平成16年に施行された「性同一性障害の性別の取り扱いに関する法律」(特例法)により、性別不合(性同一性障害)の方の戸籍変更において性別適合手術が必須となりました。
現在、日本で行われているトランスジェンダーの方への性別適合手術は、日本精神神経学会ガイドラインに基づいた判定会議を通過した方に対して保険適応が認められています。
しかし、保険適用のないホルモン治療を受けていただく必要性から、混合診療を防ぐため自費での施術となっています。
性別不合の方々に対する医療介入への取り組みは日々変化しており、また社会的な流れも大きく変わりつつあります。
そんな中でご自分のジェンダーと向き合い、社会の中で自分らしく生きようとする方々に、専門的な知識をもとに適切な医療介入をアドバイスさせていただいております。
必要な場合は、医療介入に必要な判定会議を行う組織(関東ジェンダー医療協議会)、連携する精神科、形成外科、泌尿器科、小児科などにご紹介する窓口となります。
戸籍上の性が男性であっても、女性であっても対応させていただきます。年齢も不問です。
ジェンダーにかかわる問題を抱えている方がいらっしゃった場合はどうぞご相談ください。
2025年9月下旬から一時休診します。2026年5月頃に再開予定です。