子宮頸癌に対する定位放射線治療

概要

子宮頸癌の患者さんのうち子宮腔内照射が出来ない方を対象に、標準的な子宮腔内照射ではなく定位放射線治療(いわゆるピンポイント照射)を行います。

対象となる患者さん

  • 病気:遠隔転移のない子宮頸癌
    以下の理由で子宮腔内照射ができない
     - 子宮頸癌によるもの:巨大な原発巣
     - 解剖学的問題によるもの:腟狭小、子宮脱
     - 併存疾患によるもの:子宮筋腫
     - 腔内照射拒否

子宮頸がんの標準治療

子宮頸癌に対する標準的な放射線治療は、体の外から放射線をあてる方法(体外照射)に続いて子宮の中から放射線をあてる方法(子宮腔内照射)です。子宮腔内照射は治療効果に直結するとても大事な治療ですが、患者さんの中には何らかの理由で腔内照射が出来ない方がしばしばいらっしゃいます。
(標準治療の詳細については子宮頸癌の放射線治療をご参照ください。)

定位放射線治療

近年、放射線治療機器の発達により、放射線を腫瘍に集中させる『定位放射線治療』という高精度治療が可能となりました。腔内照射が出来ない患者さんに、腔内照射の代わりとして定位放射線治療を行います。
まず体の外から骨盤全体へ25回の照射をします(この部分は標準治療と同様です。左図)。その後、ターゲットを原発巣に絞って定位放射線治療7グレイ×3回(計21グレイ)を行います(右図)。一回の治療時間は、骨盤全体への照射が約15分、3回の定位放射線治療が約20分です。

子宮SBRT分布ax
子宮SBRT分布sag

予想される副作用

放射線による副作用は、基本的に放射線が照射されている範囲内に起こり、どのような副作用が現れるかある程度は予測できます。しかし、副作用の現れ方には個人差があるため、その頻度や程度などを完全に予測することはできません。以下に主な副作用を列挙します。

1)治療中に現れうる副作用

  • 皮膚炎…塗り薬で対応します。
  • 腸炎…下痢症状があれば下痢止め、腹痛があれば痛み止めを使用します。
  • 膀胱炎
  • その他:骨髄抑制、陰部脱毛、倦怠感・悪心など

2)治療後、数ヶ月して現れうる副作用

  • 皮膚炎…皮膚が硬くなります。
  • 腸炎…下痢や出血など。
  • 膀胱炎
  • 足の浮腫
  • その他:骨折、卵巣機能低下、二次発癌など

2021年7月 伊藤 慶 更新