内視鏡センター

内視鏡センター

診療内容

当センターでは消化器内科(内視鏡センター長含め16名)・呼吸器内科 (8名)・呼吸器外科(4名)の医師が協力して消化器内視鏡検査・治療、気管支鏡検査、胸腔鏡検査を行っています。昨年度より内視鏡センター専属の内視鏡技師(臨床工学技士・看護師)を配置して、検査・治療のサポートや機器の整備などを行っています。

(気管支鏡検査については呼吸器内科、呼吸器外科のページを参照ください。)

地域がん診療連携拠点病院、ER・救命救急センターを擁する3次救急医療機関として下記の点に重点を置いています。

  1. 消化管腫瘍(食道癌、胃癌、大腸癌等)の診断・治療
  2. 胆膵疾患の診断・治療
  3. 消化器救急医療(内視鏡的消化管止血術、静脈瘤治療、胆道ステント留置術等)
  4. 肺癌、びまん性肺疾患の診断

主な検査・医療設備

消化器内視鏡治療室 1室、消化器内視鏡検査室 4室、透視室 2室

リカバリーベッド 6台

AI診断サポート機器(オリンパス社:EndoBrain-X、富士フイルム社:CADEYE)

高周波装置 ERBE:VIO3 2台、VIO200S 1台

Olympus:ESG-300 1台、ESG-100 3台

大腸カプセル内視鏡、小腸カプセル内視鏡、小腸ダブルバルーン内視鏡

SpyGlass™DS、超音波内視鏡装置 3台

新内視鏡室

消化管腫瘍(食道癌、胃癌、大腸癌等)の診断・治療

全室にオリンパス社製・富士フイルム社製の最新のシステムを導入しています。拡大機能や前方送水機能等を搭載した高画質のハイビジョンスコープを多数揃えており、特殊光観察(NBI/RDI/TXI/BLI/LCI/ACI)や拡大観察も含めた精密な内視鏡検査が施行可能です。また早期食道癌・早期胃癌・大腸ポリープの発見や腫瘍/非腫瘍の診断サポートが可能なAI診断機器(オリンパス社:EndoBrain-X、富士フイルム社:CADEYE)を搭載しており、見逃しの少ない精密な内視鏡検査が施行可能となっています。大腸の癒着や併存疾患などのために通常の大腸内視鏡検査が困難な患者様では大腸カプセル内視鏡検査を選択することもできます。

超音波内視鏡検査による早期がんの深達度診断、EUS-FNA(超音波内視鏡下穿刺吸引細胞診/生検)によるがんや粘膜下腫瘍の診断も行っています。

内視鏡検査画像1

内視鏡検査画像2

内視鏡検査画像3

2017年4月より厚生労働省のがん診療連携拠点病院に指定され、がん診療についても積極的に取り組んでおり、多くの治療実績があります。当院のがん治療の特徴は、心臓病、脳卒中、腎臓病(人工透析)などの持病がある方や、救急で搬送されたのを契機にがんが見つかった方など、状態の悪い患者さんが多いところです。そのような患者さんに対しても循環器内科、脳神経内科、脳神経外科、腎臓内科等と連携して、適切な治療を提供できるように努めています。
早期の胃癌、食道癌、大腸癌に対しては体への侵襲が少ない内視鏡治療(内視鏡的粘膜下層剥離術:ESD、内視鏡的粘膜切除術:EMR)を積極的に行っています。最近では咽頭癌や十二指腸癌に対するESDにも取り組んでいます。消化器内視鏡治療室では最新の高周波装置(ERBE:VIO3)を設置しており、出血の少ない安全な治療が可能です。咽頭癌や食道癌や一部の胃癌では手術室で全身麻酔下のESDを行っています。全身麻酔下で治療を行うことで、より安定した状態で繊細な治療が可能となるほか、患者様の苦痛も軽減させることができます。内視鏡治療を行うことで、従来の外科手術と比較して短い入院期間での治療が可能となっており、治療後の体の負担を軽減することができます。
ESDの標準的な入院期間は胃癌・食道癌の場合7日、大腸癌の場合は5日です。

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実技指導)
第7回レーザー内視鏡学術セミナー(2018.7) 講師 古本 洋平
第7、8回つくば鏡視下手技トレーニングセミナー(2019.3、2019.11) ESD講師 古本 洋平 

第5回琵琶湖ESDセミナー ハンズオンセミナー トレーナー 古本 洋平

第6回琵琶湖ESDセミナー ハンズオンセミナー アドバイザー 古本 洋平

苦痛の少ない内視鏡検査

当センターでは苦痛の少ない内視鏡検査を心がけています。希望により経鼻内視鏡検査(鼻から入れる胃カメラ)、静脈麻酔下での内視鏡検査(麻酔を使用して眠ったままできる胃カメラ・大腸カメラ)を受けることができます。麻酔薬を使用しても問題ない患者さんかどうかの確認や、検査機器や麻酔薬、リカバリーベッドの準備が必要なため、希望される場合は検査予約時に直接担当医へお伝えください。(検査当日に希望されても鎮静剤を使用することができません。)持病や全身状態から希望に添えない場合もありますのでご了承ください。

経鼻内視鏡とリカバリーベッド

胆膵疾患の診断・治療

総胆管結石や膵がん、胆道がんに対する診断・治療目的として、ERCP(内視鏡的逆行性胆管膵管造影)、EUS(超音波内視鏡検査)、EUS-FNA(超音波内視鏡下穿刺吸引法)などに積極的に取り組んでいます。急性胆管炎や急性膵炎などの救急疾患に対して、可能な限り迅速に対応できる体制を整えています。2020~2022年はコロナ禍の影響により内視鏡件数が減少していましたが、ようやく元の水準に戻ってきました。2017年に超音波内視鏡装置とスコープを導入以来、EUS、EUS-FNAの件数が飛躍的に増加しており、2024年度の施行件数は超音波内視鏡検査:717件、EUS-FNA(超音波内視鏡下穿刺吸引細胞診):96件でした。

急性膵炎後の膵周囲液体貯留(膵被包化壊死:walled-off necrosis [WON]、膵仮性嚢胞:pancreatic pseudocyst [PPC] )に対するEUSガイド下ドレナージ(EUS-TD)をはじめ、EUS-HGS(EUS-guided hepaticogastrostomy)やEUS-CDS(EUS-guided choledochoduodenostomy)などinterventional EUSも施行しています。

EUS


 2020年より新型の胆道鏡(胆管内を直接観察する内視鏡)であるSpyGlass™DSを導入しました。SpyGlass™DSは、従来の胆道鏡に比べて操作性が向上、デジタル化による画質の向上が特徴であり、また、ディスポーザブル(使い捨て)で簡便に使用可能のため、より実用的になっています。SpyGlass™DSを胆管・膵管内に直接挿入することにより、これまで直接見る事の出来なかった胆管や膵管を高精細なデジタル映像で観察でき、胆管・膵管腫瘍の精密検査が可能となります。また、巨大な結石は電気水圧衝撃波胆管結石破砕装置(EHL)と呼ばれるデバイスを用いて、衝撃波により結石を砕いて治療することが可能となりました。難易度の高いとされる胆道・膵管病変の検査・治療を、これまで以上に高いレベルで行えることが期待されます。

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EUS-FNA(超音波内視鏡下穿刺吸引法)

EUS-FNAとは、先端に超音波発生装置を取り付けた内視鏡(超音波内視鏡)を用い、病変組織を採取する検査方法です。画像検査で膵臓や胆道、リンパ節などに腫瘍の存在を疑ったり、消化管粘膜下腫瘍を認めた際などに、組織や細胞を採取して詳しく調べる目的で行います。内視鏡の先端に超音波の装置がついており、胃や十二指腸の内側から超音波で病変の位置を詳しく確認します。そして、そこに向かって細い針を刺し、検体を吸引して採取します。この検査により、がんかどうかを調べたり、治療方針を決めるための重要な情報を得ることができます。EUS-FNAは、体にメスを入れずに行える低侵襲の検査であり、当院では検査のみを目的とする場合、通常1泊2日のスケジュールでおこなっています。検査中は鎮静剤を使用し、ほとんど眠ったような状態で受けていただけますので、苦痛は最小限に抑えられます。

ダブルバルーン内視鏡によるERCP(DB-ERC)

過去に胃や腸の手術を受けられた患者さんは、腸のつなぎ方(再建方法)によって、通常の内視鏡では胆管や膵管に到達することが難しくなることがあります。当院では、このような再建術後の方にも対応できるダブルバルーン内視鏡(EI-580BT、富士フィルム)という特殊な内視鏡を用いて、胆管や膵管の検査・治療(DB-ERCP)を行っています。この内視鏡には2つのバルーンがついており、それを使って腸を少しずつたぐり寄せながら、深い位置にある胆管や膵管まで安全にアプローチすることが可能です。胆管結石に対する結石治療、閉塞性黄疸に対するステント留置など、通常では難しい症例でも治療可能なことが大きな特徴です。2024年度、術後再建腸管症例に対するDB-ERCPの施行件数は40件でした。


膵がん・胆道がんについて

膵臓がんや胆道がんは、他のがんと比べて診断が難しく、症状が出にくいまま進行してしまうことが多いため、早期発見が難しいとされています。また、治療も難しく、あらゆるがんの中でも最も治療成績が厳しいとされているのが現状です。そのため、チーム一丸となって、早期発見や治療成績の向上を目指しています。

<当科の取り組み>

■ 早期発見をめざして

・超音波内視鏡(EUS)やMRI、CTなどの高度な画像検査を組み合わせて、がんの早期発見につなげます。

  • ・特に、IPMN(膵管内乳頭粘液性腫瘍)などの膵嚢胞性病変については、膵がんの前段階となることがあるため、EUSやMRI検査などで厳重に経過観察・評価を行っています。必要に応じて更なる精密検査を行い、がん化の兆候を見逃さないよう努めています。
  • ■ 正確な診断・治療選択、高度な内視鏡治療
  • ・EUS、CT、MRIなどの詳細な画像診断により、病変の位置・大きさ・周囲への広がり(進行度)を正確に把握します。
  • ・超音波内視鏡下穿刺吸引術(EUS-FNA)を用いて、がんの種類や悪性度を正確に診断します。
  • ・当院では、外科と密に連携し、手術の可否を含めた最適な治療方針の検討を行っています。カンファレンスを通じて、患者さん一人ひとりに合わせた治療戦略を立てています。
  • ・がんによる胆管の閉塞や消化管の狭窄に対しては、内視鏡(ERCP)によるステント治療やEUSガイド下治療(EUS-BD)、など低侵襲で効果的な治療を行っています。これらには高度な内視鏡技術を要しますが、当院では積極的に行っています。

■ がん薬物療法(化学療法)

  • ・手術が難しい進行がんや再発例に対して、がん薬物療法(化学療法)を積極的に実施しています。膵がんに対する手術前の抗がん剤治療(術前化学療法)も当科で対応しています。
  • ・最新のガイドラインに基づく治療レジメンを導入し、副作用の管理にも細心の注意を払いながら、治療の効果と患者さんの生活の質(QOL)の両立を目指しています。
  • ・必要に応じて、緩和ケアや栄養管理、がん相談支援なども組み合わせて、患者さんとご家族を支える体制を整えています。
  •  消化器救急医療(上部消化管出血)

救急診療科(東京ER墨東)や救命救急センターと連携して、消化管出血や急性閉塞性化膿性胆管炎など、緊急の内視鏡治療を必要とする患者さんの受け入れを積極的に行っています。
新棟の新しいERでは、内視鏡治療が可能なブースを備えており、緊急の内視鏡治療にも対応できるようになっております。
また、消化器内科専門医と内視鏡センターの看護師が24時間365日常駐しており、いつでも緊急内視鏡ができる体制となっています。胃潰瘍や十二指腸潰瘍などによる吐血・下血にて救急搬送される症例が最も多く、迅速な対応をすることで良好な治療成績を得ております。上部消化管出血では血圧、脈拍などのバイタルサインが不安定なことも多いですが、必要に応じてER(2次救急)や救命救急センター(3次救急)のスタッフの協力を得ながら、安定した状態で止血術を行うことができるのが当院の強みです。

止血術

消化器救急医療(大腸憩室出血)

【大腸憩室出血に対する新しい治療法:留置スネアを用いた内視鏡的止血術 Endoscopic detachable snare ligation (EDSL)】

大腸憩室出血は下部消化管出血の原因として最も頻度が高い疾患です。多くは自然に止血し、保存的加療で軽快しますが、3~4割の頻度で再出血を来します。出血源となった責任憩室が同定できた場合、現在はクリップ法による内視鏡的止血術が一般的に行われています。クリップ法は比較的簡便で低コストであるというメリットがありますが、その再出血率が問題となります。近年、Endoscopic band ligation(EBL)法というゴムバンドによる出血憩室の結紮術が普及しつつありますが、当院では新しい治療法として2015年より留置スネアを用いた内視鏡的止血術(Endoscopic de-tachable snare ligation, EDSL)を施行しています。

大腸憩室出血の診断で入院なさり、担当医の説明を受けてこの治療法に同意していただいた場合、出血源が同定できれば留置スネア法による止血術を検討いたします。この治療法は当院に設置されている「倫理・個人情報保護委員会」にて、倫理的・科学的妥当性について審査され、その実施が承認されています。

これら大腸憩室出血に対する当院の治療成績は各学会や英語論文で積極的に報告しており、その有効性が認識されてきています。留置スネア法は、従来からのクリップ法と比較して、30日以内の再出血率を低減することが期待されます(K Kobayashi, et al. Digestion. 2020;101(2):208-216)。最新のデータで、留置スネア法後の30日以内の再出血率は11.0%でした(K Kobayashi et al. Dig Endosc. 2024;36(12):1357-1366.)

憩室画像

奨励賞

小腸内視鏡検査

原因不明の消化管出血や、小腸腫瘍が疑われる場合等に、小腸カプセル内視鏡検査、小腸ダブルバルーン内視鏡検査を行っています。カプセル内視鏡検査を施行前には必要に応じて消化管通過性検査(パテンシーカプセル)を行い、カプセルの滞留が起こらないように注意しています。小腸カプセル内視鏡検査で異常を認めた場合や、小腸狭窄等でカプセル内視鏡検査が禁忌となる場合には小腸ダブルバルーン内視鏡検査を行います。ダブルバルーン内視鏡は2024年に発売された最新の機器を導入しており、より高画質が得られるほか、その良好な挿入性能により患者様の苦痛が従来と比べて軽減することが期待できます。

小腸カプセル内視鏡

ダブルバルーン内視鏡

2024年度内視鏡検査・治療実績

上部消化管内視鏡検査4,886
咽頭内視鏡的粘膜下層剥離術(咽頭ESD)2
食道内視鏡的粘膜下層剥離術(食道ESD)27
胃内視鏡的粘膜下層剥離術(胃ESD)93
十二指腸内視鏡的粘膜下層剥離術(十二指腸ESD)3
内視鏡的消化管止血術262
内視鏡的食道・胃静脈瘤結紮術・硬化療法83
食道バルーン拡張術9
食道ステント留置術7
内視鏡的胃、十二指腸ステント留置術14
内視鏡的異物摘出術41
大腸内視鏡検査3,210
大腸カプセル内視鏡検査2
内視鏡的粘膜下層剥離術(大腸ESD)89
内視鏡的大腸ポリープ切除術939
小腸結腸内視鏡的止血術143
下部消化管ステント留置術22
内視鏡的結腸軸捻転解除術10
小腸内視鏡検査52
小腸カプセル内視鏡検査32
小腸ダブルバルーン内視鏡検査17
内視鏡的小腸ポリープ切除術3
超音波内視鏡検査加算(消化管他も含む)664
EUS-FNA(消化管他含む)100
ERCP(関連処置含む)549
内視鏡的胆道ステント留置術276
内視鏡的経鼻胆管ドレナージ術(ENBD)48
内視鏡的乳頭切開術・胆道結石除去術187
超音波内視鏡下瘻孔形成術(腹腔内膿瘍に対するもの)9
ダブルバルーンERCP26

臨床試験

当センターでは、JCOG(日本臨床腫瘍研究グループ)の消化器内視鏡グループに所属している他、様々な多施設共同臨床試験に参加しています。多施設共同臨床試験の他にも倫理委員会承認のもと、いくつかの新しい治療に取り組んでいます。

多施設共同臨床試験
  1. JCOG1902 早期胃癌に対する内視鏡的粘膜下層剥離術の高齢者適応に関する第III相単群検証的試験
  2. JCOG2215食道癌内視鏡的粘膜下層剥離術後狭窄に対するEBD単独療法およびステロイド局注併用EBD療法のランダム化比較第III相試験
  3. JCOG2315広範な食道表在癌に対する内視鏡的粘膜下層剥離術後の狭窄予防を目的とするステロイド局注+内服併用療法およびステロイド局注単独療法のランダム化比較第III相試験
  4. HEAT UP study:上部消化管出血に対する適切な内視鏡タイミングの多施設ランダム化比較試験
  5. CONCISE trial:10-20mmの大腸鋸歯状病変に対するコールドスネアポリペクトミーの有用性を検証する非盲検化ランダム化比較試験
  6. ONE PIECE study:20mm以上の大腸鋸歯状病変における細胞異型併存病変及び粘膜下層浸潤癌の有病率とその内視鏡予測に関する多施設共同前向き観察研究
  7. 術後良性胆管空腸吻合部狭窄に対する double fully covered self-expandable metallic stent (saddle-cross technique)を用いた内視鏡的治療の多施設検証的試験
  8. 無症候性胆管結石に対する内視鏡治療と経過観察を比較する多施設共同前向き研究(SILETNT study)
  9. 消化器内視鏡に関する疾患、治療手技データベース構築
  10. 家族性膵癌家系または遺伝性腫瘍症候群に対する早期膵癌発見を目指したサーベイランス方法の確立に関する試験

論文

論文一覧(PDF 217.8KB)

主な学会発表(主題演題等)(PDF 206KB)

スタッフ紹介外来担当表

2025年9月8日 最終更新