腎臓・リウマチ膠原病科 診療内容

診療内容

 ネフローゼ症候群、IgA腎症をはじめとした慢性糸球体腎炎から透析、腎移植を要する末期腎不全まですべての小児腎臓病ならびに小児リウマチ/膠原病を対象としています。

1.高度専門医療

 泌尿器科・臓器移植科、外科、集中治療科など院内他科と協力し、小児腎領域の高度専門医療に積極的に取り組んでおります。

小児腎領域・他科領域関連の急性腎障害(AKI)診療

 急性腎障害(Acute Kidney Injury: AKI、かつては急性腎不全)は、何らかの原因で急激に腎機能が悪化し、尿量の減少・高血圧・浮腫・電解質異常(高カリウム血症、低カルシウム血症、高リン血症、代謝性アシドーシスなど)などをきたした状況です。
その原因として

腎臓領域では、
 溶血性尿毒症症候群(志賀毒素関連,非典型)、急速進行性糸球体腎炎(ANCA関連腎炎、溶連菌感染後急速糸球体腎炎、紫斑病性腎炎など)、急性尿細管壊死、急性尿細管間質性腎炎など

小児科他科領域では、
 血液・腫瘍疾患治療関連、心臓手術後、外科手術後、新生児関連(重症新生児仮死後、腎静脈血栓症など)などが知られています。
 急性腎障害は、元々の病気の治療予後にも影響をおよぼすため、専門医による原因の精査ならびに綿密な管理が必要な状態です。当院では当科を中心に、重症の方は集中治療科と協力しながら診療を行っております。

急性血液浄化療法

 急性血液浄化療法は、急性腎障害(AKI)に対する持続血液浄化療法(Continuous Renal Replacement Therapy: CRRT)を中心に、様々な急性かつ重篤な状態の病気に対して行われる体外循環療法の総称です。重症な患者さんに行うことに加え、体格の小さな小児に行う場合には副作用(低血圧、低体温など)にも注意しながら同領域に精通した医療従事者による管理がかかせない治療です。
 当院では比較的安定した状態の患者さんは病棟透析室、綿密な全身管理が必要な患者さんは集中治療室で、腎臓・リウマチ膠原病科医師、集中治療科医師、看護師、臨床工学技士がチームを組んで以下の治療に当たっております。

持続血液浄化療法:CHDF(持続血液濾過透析)、CHD(持続血液透析)、CHF(持続血液濾過)

様々な急性腎障害(AKI)に対して
血漿交換療法
 血液型不適合腎移植、巣状糸球体硬化症(FSGS)
 治療不応性川崎病
 血栓性血小板減少性紫斑病、非典型溶血性尿毒症症候群
 自己免疫性脳炎
白血球除去療法
 炎症性腸疾患
エンドトキシン吸着療法
 敗血症性ショック

末期腎不全診療

 当院でのこれまでの数々の経験をふまえ、小児期末期腎不全の患者さんが、少しでも健常児と遜色のない生活を送れるように診療にあたっております。

 当院では血液透析腹膜透析腎移植のいずれも行うことが可能です。

 各治療法にはそれぞれの長所ならびに短所があります。ですので保存期腎不全(CKD)の頃から、将来的な透析もしくは腎移植への展望をお話しし、より早期から泌尿器科医師、腎不全療法選択看護師と情報を共有することで、患者さん毎に最適な治療プラン・将来設計をチーム全体で計画していきます。

生物学的製剤使用

 近年、既存の薬剤では治療不応であった様々な難治例に効果を示す生物学的製剤が開発され承認を得ています.腎臓・リウマチ膠原病科では難治性の小児腎臓病、小児リウマチ/膠原病に対して積極的に以下の薬剤を使用しております。

1.リツキシマブ: 抗CD20モノクローナル抗体
 小児期発症難治性頻回再発型/ステロイド依存性ネフローゼ症候群
 難治性顕微鏡的多発血管炎
 血液型不適合腎移植
 血漿交換抵抗性血栓性血小板減少性紫斑病(適応外使用、院内倫理委員会承認)
 小児期発症難治性ステロイド抵抗性ネフローゼ症候群(適応外使用、院内倫理委員会承認)
 難治性全身性エリテマトーデス(適応外使用、院内倫理委員会承認)
2.エクリズマブ: 抗補体C5モノクローナル抗体
 非典型溶血性尿毒症症候群(aHUS)
3.アダリムマブ: ヒト型抗ヒトTNFαモノクローナル抗体
 若年性特発性関節炎
4.エタネルセプト: 完全ヒト型可溶性TNFα/LTαレセプター製剤
 若年性特発性関節炎
5.トシリズマブ: ヒト化抗ヒトIL-6レセプターモノクローナル抗体
 若年性特発性関節炎

2.各ご家庭の状況に応じた医療の推進

小児腎臓病ならびにリウマチ/膠原病は、慢性に経過することが多く(慢性疾患)、一生涯にわたって上手に付き合っていくことが必要です。
近年さまざまな病気のガイドラインが作成され世に出ており、標準治療が日本全国に浸透するようになりました.標準治療が行き渡るのは勿論素晴らしいことです。
しかし、同じ病気の患者さんであっても、「年齢により」、「兄弟の有無により」、「家庭状況により」など様々な因子により最適な治療・診療は異なるのが実際です。
ですので当科では、腎臓・リウマチ膠原病科の医師のみではなく院内の様々なスタッフ
 他科診療科医師
 心理・福祉科医師
 看護師/専門看護師
 保育士
 臨床心理士
 家族支援部門
 ソーシャル・ワーカー
 栄養科
 薬剤科 など
と月1~4回のカンファレンスで情報共有を行い、チームで患者さんならびにご家庭毎の最適な診療プランを立てることを重視しております。


当院でのチーム医療の例(腎移植療法決定のプロセス)

3.腎臓・リウマチ膠原病科で対象としている疾患

具体的には
<小児腎疾患>

<小児リウマチ・膠原病疾患>

が主な対象となる病気となります。