9月21日は認知症の日
9月は「認知症月間」です
「認知症」とは、脳神経が変性して脳の一部が萎縮してしまったり、脳の神経細胞の働きが徐々に低下してしまうことで、記憶力や判断力などの認知機能が低下して、社会生活に支障をきたした状態を指します。
認知症のリスクと食事について、都立病院の管理栄養士が解説します。
私たちの脳は、日々、多くのブドウ糖を消費しています
「脳の主要なエネルギー源はブドウ糖」という言葉を耳にしたことがある方も多いと思います。
しかし、ブドウ糖だけでは脳の健康を維持することはできません。
ブドウ糖のもととなる糖質だけでなく、たんぱく質や脂質、ビタミン、ミネラルなどの代謝に関わる様々な栄養素も必要で、これらをバランス良く摂取することが大切です。
バランスの良い食事を心がけましょう
バランスの良い食事のために、毎食の食事の中で、次の組み合わせを意識しましょう。
- 主食
(ご飯・おかゆ、パン、麺類など) - 主菜
(魚介類、肉類、卵、大豆製品) - 副菜
(野菜、きのこ、海藻類)
主食に主に含まれる糖質はエネルギー源に、主菜に主に含まれるたんぱく質は、体をつくるもとになります。
そして、副菜に主に含まれるビタミン、ミネラル、食物繊維は体の調子を整えてくれます。
糖質がエネルギー源になり、たんぱく質が体をつくるためには、ビタミン、ミネラルの働きが必要で、どれが欠けても人間の体はうまく働かなくなります。
「バランスの良い食事」=「体をうまく働かせるための食事」です。
これは、脳も同じです。
脳の健康を維持するための方法のひとつとして、やはり、バランスの良い食事がポイントとなります。
私たちのまわりには、DHA、EPA、大豆イソフラボン、葉酸をはじめ、○○は脳によいなどといった栄養素に関する様々な情報が溢れています。
しかし、普段から私たちは、特定の栄養素のみを摂取しているわけではありません。1つの食物には様々な栄養素が含まれています。そして、栄養素間には相互作用もあります。
だからこそ、ある特定の食物のみに偏らず、いろいろな食物を摂ることは大切です。
「認知機能低下および認知症のリスク低減のためのガイドライン」(WHO:世界保健機構)でもバランスの良い食事を推奨しています。
【主食・主菜・副菜のそろったバランスの良い食事】
食物繊維の摂取で、病気の発症リスクを低下
日本人の食事摂取基準(2020年版)(厚生労働省策定)では、食物繊維の1日あたりの「目標量」(生活習慣病の発症予防を目的として、現在の日本人が当面の目標とすべき摂取量)は、18~64歳で男性21g以上、女性18g以上となっています。
日本人の平均食物繊維摂取量は、年々減少傾向にあります。
欧米での研究では、1日あたり24g以上の摂取で、心筋梗塞や脳卒中、2型糖尿病、大腸がんなどの発症リスク低下が観察されるとの報告があります。
「1日1回、規則的に排便がある」ことは、食物繊維が必要量とれているかのひとつの目安となります。
また、野菜に含まれているビタミンの一部には、抗酸化作用や抗炎症作用などの働きがあります。
【野菜中心の料理の例】
野菜は1日350g(1食当たり120g)以上の摂取が推奨されています。
毎食、お浸しや煮物など、野菜中心の料理(副菜)を2品程度食べましょう。
適正な体重を維持することも大切です。
肥満は生活習慣病をはじめとする様々な疾患に関与すると言われています。
脳の健康のためにも、肥満のある方は生活習慣を見直して、太りすぎを改善することは有効です。
月に1回は体重を測定して、体重の変動を確認してみましょう。
認知症のリスクを低減するために
食事をはじめとした生活習慣を見直し、脳の健康を維持することが大切です。
ただ、食事は生きていくために必要な栄養素を補給する手段だけでなく、「五感を刺激する」「精神的満足度を与える」「食事を介して他者とコミュニケーションを図る」などのいろいろな役割も持ち合わせています。
楽しく生き生きと毎日を過ごしていくためにも、脳の健康維持のためにも、バランスの良い食事を意識してみましょう。
参考
「認知機能低下および認知症のリスク低減のためのガイドライン」(WHO)
https://www.jri.co.jp/MediaLibrary/file/column/opinion/detail/20200410_theme_t22.pdf(外部リンク)
「あたまとからだを元気にする MCIハンドブック」(厚生労働省ホームページ 認知症施策 認知症について知りたい方へより)
https://www.mhlw.go.jp/content/001100282.pdf(外部リンク)
「食物繊維の必要性と健康」(厚生労働省ホームページ e-ヘルスネット)
https://www.e-healthnet.mhlw.go.jp/information/food/e-05-001.html(外部リンク)
最終更新日:令和6年8月23日