心臓血管外科

丁寧で安全な手術を提供し、心臓病の子どもの命と健康を守ります
心臓血管外科 部長 吉村 幸浩

診療内容

心臓血管外科は先天性心臓病に対する安全かつ確実な手術、ご家族への適切かつ充分な説明を最重要と考え日々臨床に励んでおります。また、小児総合病院の強みを生かし、新生児科、循環器科、外科、集中治療科、呼吸器科、麻酔科、臨床工学部など、さまざまな専門分野の総力を結集したチーム医療により最良の医療を提供することを心がけています。

平成30年度の心臓血管外科手術件数は136件で、そのうち人工心肺を使用した開心術は96件と前年度と同数でしたが、人工心肺を使用しない姑息手術やペースメーカ手術が30件、急性呼吸循環不全に対する補助循環(ECMO)導入件数は10件と若干減少しました。胎児診断症例は24例36件、手術時年齢は1歳未満の乳児が90例(うち新生児19例)で全体の66%を占め、幼児~小児44例、成人2例でした。開心術あるいは姑息手術125件中、動脈管開存症、心室中隔欠損症や房室中隔欠損症などの非チアノーゼ性心疾患が77件、左心低形成症候群や完全大血管転位症などの複雑なチアノーゼ性心疾患は48件でした。

通常の先天性心臓病手術に加えて、乳児・小児の急性心筋炎や拡張型心筋症の急性増悪による心不全や急性呼吸不全に対しても、集中治療科、循環器科、外科、臨床工学部との合同チームを組んで、緊急補助循環(ECMO、膜型人工肺)導入や短期型の左心補助装置(LVAD)などによる急性期治療に取り組んでいます。

先天性気管狭窄症は生命を危険にさらす重篤な疾患で、先天性心臓病を合併することも多く、外科治療が難しい病気です。呼吸器科、集中治療科による診断と周術期管理、都立清瀬小児病院時代から気管の外科治療に携わってきた外科と心臓血管外科との合同チームにより手術を行っています。

当院循環器科では隣接する総合周産期母子医療センターおよび多摩地区産科からの紹介を得て、積極的に胎児診断を行っています。胎児診断によって出生前より外科的あるいは内科的治療計画を立て、より良い治療の提供ができることから、今後も多摩地区産科の先生方のご協力を得ながら胎児診断症例の外科治療件数の増加を望んでいます。

小児総合病院の利点を最大限に生かして、生まれながらの心臓病を持った子供たちに将来より良い生活を楽しんでもらえるように、高水準の医療を提供できるように日々努力していきたいと考えています。

主に取り扱っている疾患、治療内容

  • 先天性心臓病に対する外科治療
    心房中隔欠損症
    心室中隔欠損症
    動脈管開存症
    房室中隔欠損症
    ファロー四徴症
    完全大血管転位症
    大動脈縮窄症、離断症
    総肺静脈還流異常症
    左心低形成症候群 など
  • 気管狭窄を合併する心臓病に対する外科治療
    肺動脈スリング
    血管輪 など
  • 急性心不全(心筋炎、心筋症など)に対する補助循環治療
  • 不整脈 (完全房室ブロック、洞不全症候群など)に対するペースメーカ治療

ご家族の皆さまへ

先天性心臓病の中には、誕生してまもない時期に手術を行う必要がある病気もあります。また、誕生から数ヶ月で最初の手術を行い、その後数回の手術を行って最終的な手術治療に到達する病気もあります。

これから心臓手術をお受けになるお子さんのご家族の皆さまのなかには、心臓手術という言葉の響きだけで驚かれ、とても不安な気持ちをお持ちの方もいらっしゃることと思います。確かに心臓手術はほかの外科手術に比べて命にかかわる大手術ではありますが、最近の技術の進歩によってより安全な心臓手術ができるようになっています。

ご家族の皆さまに少しでも心臓手術についての理解を深め、少しでも不安感を解消して、積極的にお子さんの心臓病と取り組んでいただくために「心臓病と心臓手術について」を作成しましたので、是非ご一読ください。

心臓病の手術が必要なお子さんについて

初診の窓口は循環器科になっておりますので、そちらのホームページもご覧ください。