脳神経外科

脳神経外科

  • 脳神経外科とは、中枢神経(脳、脊髄)と一部の末梢神経疾患およびその付属器官(血管、骨、筋肉など)を含めた神経系全般の疾患の中で、主に外科的治療の対象となりうる疾患について診断・治療を行う医療分野です。当院の重点医療課題である「脳血管障害の急性期医療」は、神経内科と共同して24時間365日の救急体制をとっています。脳卒中患者さんに対して多職種による集学的な診療を行う一環として、平成15年10月より脳卒中専門病棟(Stroke Unit)を開設し、脳神経外科・神経内科・リハビリテーション科と合同でチーム医療を行っています。また急性期治療後、自宅退院できない患者さんには、病状や家庭の状況に応じて回復期リハビリテーション病院や療養型病院に転院して頂き、切れ目なく医療を受けられるよう、地域の病院と緊密に連携をとっています。
  • くも膜下出血や脳出血などの出血性疾患は脳神経外科、脳梗塞は神経内科が担当という体制をとっていますが、2017年5月から急性期脳主幹動脈閉塞症に対する血栓回収療法を開始し、今までtPAで効果が見られなかった急性期脳梗塞患者さんにも、積極的にカテーテルによる脳血管内治療を脳神経外科主導で行っています。

特色

当科の特徴

  • くも膜下出血や脳出血に対する緊急手術対応
  • 術中神経モニタリング、蛍光血管撮影(ICG)、手術用ナビゲーション等を駆使した手術の実施
  • 未破裂脳動脈瘤や内頚動脈狭窄症に対し手術と血管内治療を検討し、患者さんにとって最良の治療を提供
  • 来院1時間以内にt-PA投与可能な脳卒中患者受け入れ態勢
  • 緊急MRIによる早期の脳梗塞病型診断と治療方法の決定
  • 急性期脳主幹動脈閉塞に対する、カテーテルを用いた血栓回収療法
  • リハビリテーション科スタッフによる脳卒中発症3日以内のリハビリ開始

主な対象疾患と治療法

脳血管障害

1.脳動脈瘤

未破裂脳動脈瘤に対しては、動脈瘤の部位や大きさから破裂の危険性を説明し、治療方針を決定します。当院では長期成績の点からも開頭クリッピング術をお勧めしています。くも膜下出血を起こした破裂脳動脈瘤に対しては、開頭クリッピングとコイル塞栓術の両面を検討し、患者さんにとって良い結果が得られると考えられる治療を行います。

73歳 女性 未破裂左内頚動脈瘤 開頭クリッピング術を施行した症例

頭痛精査で近医クリニック受診、MRIで脳動脈瘤を指摘され当科紹介となりました。

未破裂左内頚動脈瘤

脳血管撮影でブレブを2つ伴う11mm大の動脈瘤を認め、MEPモニタリング下、開頭クリッピング術を施行しました。術後経過良好で、3DCTAで動脈瘤消失し2週間で退院されました。

71歳 女性 未破裂右内頚動脈瘤 コイル塞栓術を施行した症例

4年前、めまい精査のため当院内科でMRI施行し脳動脈瘤4mmを指摘され外来で経過観察していましたが、follow up MRIで6mmと増大したため、治療希望されました。

未破裂右内頚動脈瘤


脳血管撮影でブレブを伴う6mm大の動脈瘤を認め、全身麻酔下でコイル塞栓術を施行しました。術後経過良好で、動脈瘤は消失し1週間で退院されました。

2.脳梗塞予防血行再建術

脳梗塞発症、再発予防目的に、内頚動脈高度狭窄症に対する頚動脈内膜剥離術(CEA)や頸動脈ステント留置術(CAS)を行っています。脳血流検査で脳循環予備能を評価し、脳梗塞のリスクが高いと判断した症例にはバイパス手術を行います。

69歳男性 症候性 左内頚動脈狭窄症 頚動脈内膜剥離術(CEA)を施行した症例

右上肢脱力あり近医より紹介、MRIにて左脳梗塞、左内頚動脈高度狭窄を認め内科入院となりました。

左内頚動脈狭窄症

左内頚動脈内膜剥離術(CEA)を施行し、術後神経学的異常なく2週間で退院されました。

69歳男性 無症候性 左内頚動脈狭窄症 頚動脈ステント留置術(CAS)を施行した症例

起床時に右上肢麻痺としびれ、呂律障害が出現し来院。MRIにて脳幹梗塞、左内頚動脈高度狭窄を認め内科入院となりました。

バルーン

リハビリ転院後、左内頚動脈高度狭窄に対しステント留置術(CAS)を施行しました。新たな神経学的異常なく、MRIで新規脳梗塞なく1週間後独歩退院されました。

74歳男性 右脳梗塞、右内頚動脈閉塞症 頭蓋外頭蓋内バイパス術を施行した症例

1年前左上下肢麻痺、構音障害が出現、右脳梗塞、右内頚動脈閉塞症にて当院内科入院し保存加療を行いました。リハビリ転院後、呂律障害、左上肢違和感が出現し近医より紹介となり、MRIにて新規脳梗塞なく一過性脳虚血発作(TIA)と診断。

右脳梗塞、右内頚動脈閉塞症

右浅側頭-中大脳動脈(STA-MCA)吻合術施行し、経過良好で10日後独歩退院。その後TIA発作なく経過観察中です。

3.急性期脳主幹動脈閉塞に対する血栓回収療法

急性期の脳梗塞は、治療までの時間が非常に重要で、血栓溶解療法(t-PA投与)は発症4.5時間以内に開始しなくてはなりません。しかし、t-PA投与の条件に当てはまらず適応外になってしまう患者さんやt-PA投与で効果が見られなかった患者さんの次の手段として、カテーテルを用いた血栓回収療法があります。この血栓回収療法は、発症後8時間以内で、脳主幹動脈閉塞の患者さんが対象で、カテーテルという細い管を大腿の血管から挿入し、頭の中の脳血管へ進め、血管を塞いでいる血栓を回収し、閉塞した脳血管を再開通させる方法です。当院でも来院から90分以内に血管の再開通が得られるよう体制を整え、良好な成績を得ています。

53歳 男性 心原性脳塞栓 右中大脳動脈閉塞 rt-PA投与後、機械的血栓回収術を施行した症例

仕事中に突然の左不全片麻痺、構音障害出現し、脳卒中A選定で搬送されました。

心原性脳塞栓 右中大脳動脈閉塞

MRIでは右島回領域に高信号、SWIで右中大脳動脈M1遠位側に塞栓子を、MRAでは右中大脳動脈閉塞を認めます。

心原性脳塞栓 右中大脳動脈閉塞

MRI造影灌流画像では右中大脳動脈皮質枝領域全体にMTT、TTPの延長、rCBVは保たれていますがrCBFは低下しています。灌流異常域と拡散異常域の差異(diffusion-perfusion mismatch)があり、治療により可逆的なペナンブラ(死にかけている脳組織)が存在する可能性があると判断し、rt-PA投与しながら血栓回収を行いました。

心原性脳塞栓 右中大脳動脈閉塞

心原性脳塞栓 右中大脳動脈閉塞

穿刺から46分で再開通でき、直後より左麻痺と構音障害は改善、その後出血性合併症なく、翌日のMRIでもペナンブラ領域は脳梗塞(死んでしまった脳組織)にならず2週間後に独歩退院されました。

4.脳動静脈奇形

脳動静脈奇形の治療法は、開頭手術、血管内治療(塞栓術)、放射線治療があります。開頭手術は最も根治性の高い治療ですが、場所によっては安全に摘出できない場合もあります。そのような場合、血管内治療や放射線治療が併せて行われます。放射線治療は、大きなものになると根治が難しく、効果が表れるまで2年ほど時間がかかるという欠点があります。当科では患者さんにとって良い結果が得られるよう、3者を組み合わせた治療を行います。

25歳 男性 左前頭葉脳動静脈奇形 血管内治療で塞栓後、摘出術を施行した症例

異臭症のため、近医クリニック受診、MRI施行し脳動静脈奇形を指摘され紹介となりました。

左前頭葉脳動静脈奇形

MRI上左前頭葉皮質に3cm大の脳動静脈奇形を認めました。運動野の前方に存在していたため、MEPモニタリング下に液体塞栓物質Onyx(オニキス)による塞栓を行いました。

左前頭葉脳動静脈奇形

術後神経学的異常所見なく、脳血管撮影で脳動静脈奇形は消失し、2週間後独歩退院となりました。

5.脳出血

脳出血は、通常降圧療法などの保存的加療を行いますが、大きな脳出血などでは開頭血腫除去術を施行することがあります。また発症後数日経過した症例など、侵襲の少ない定位脳手術(CTガイド下定位的血腫吸引術)で血腫除去する場合もあります。

脳腫瘍

 特に良性脳腫瘍(髄膜腫、神経鞘腫など)の治療に力を入れております。血流が豊富な腫瘍に対しては、術前に超選択的腫瘍血管塞栓術を行い、出血を最小限に抑えることを心掛けています。摘出手術の際には運動誘発電位(MEP)・体性感覚誘発電位(SEP)・聴性脳幹反応(ABR)・近赤外線脳酸素モニター(NIRS)等の術中電気生理学的モニタリングや、ナビゲーション、術中エコー、超音波吸引装置等を用いて、機能温存を目指した、安全で確実な摘出術を行います。悪性腫瘍に対しても、合併症を最小限に抑えつつ可能な限り摘出し、後療法(放射線化学療法)を行います。

35歳 男性 左髄膜腫 腫瘍血管塞栓術後、開頭腫瘍摘出術を施行した症例

最近よくつまずくようになり、階段で右足を引きずっていることを指摘され、近医クリニック受診しMRIを施行したところ、左頭頂部に35mm大の腫瘤を認め紹介となりました。

局所麻酔下で腫瘍栄養血管から液体塞栓物質Embosphere(エンボスフィア)で塞栓し、翌日腫瘍摘出術を行いました。術後右下肢の麻痺は徐々に改善し、2週間後独歩退院されました。

顔面痙攣・三叉神経痛に対する微小血管減圧術

顔面痙攣は、典型的には片側の瞼のピクツキからはじまり、頬のこわばり、口角のひきつれなどを併発するようになります。進行すると瞼が閉じたままになり、顔の片側が引きつれたような感じになってしまいます。これらの動きは自分の意志とは全く無関係におこり、ストレスや緊張などで誘発されることが多いと言われています。原因のほとんどは、頭蓋内で顔面神経(顔の筋肉を動かす神経)が脳から顔面筋に至る経路の中で、脳からの出口付近で血管に圧迫刺激され、常に興奮状態になっていることです。治療としては、ボトックスという毒素を直接顔に注射し、筋肉を麻痺させる方法がありますが、薬の効果が切れれば再発します。内服薬も現時点では有効なものはありません。根本的に治療するには、手術で原因となっている圧迫血管のループの形を変えて移動させ、顔面神経への圧迫を解除する必要があります。この手術は微小血管減圧術とよばれており、耳の後ろの頭蓋骨にコインの大きさ程度の穴をあけ、顕微鏡を使って行う手術です。
 三叉神経痛は、顔面や歯茎の激しい痛みです。喋ったり、ものを噛むと下あごから頬に激痛が走る。あるいは冷たい風にあたったり顔をさわると、おでこ、目の周り、口のまわりなどに限局して激しい痛みが走るなどの症状です。虫歯の痛みと区別が難しいので歯科を受診されて、三叉神経痛とわかることも多いです。さまざまな原因がありますが、顔面けいれん同様に三叉神経(顔の感覚を伝える神経)が、脳からの出口で血管に圧迫されて起こることがあります。 三叉神経痛にはテグレトールという特効薬がありますが、ふらつき、眠気などの副作用が強く、また長期間使用していると効き目が弱くなり内服量がどんどん増えてしまいます。根治にはやはり微小血管減圧術が必要となります。

78歳女性 右三叉神経痛 微小血管減圧術を施行した症例

3年前から右目周囲の痛みあり、内服薬や神経節ブロックで効果なく紹介となりました。

右三叉神経痛

ABRモニタリング下、微小血管減圧術を施行しました。術直後から痛みは消失し、神経学的異常なく、痛み止めの内服なく2週間後独歩退院されました。

一般社団法人Japan Neurosurgical Database (JND)の手術・治療情報データベース事業への参加について

現在、当院では『日本脳神経外科学会データベース研究事業(Japan Neurosurgical Database: JND)』に協力しています。本研究の目的は、日本全国の脳神経外科施設における手術を含む医療情報を登録し、集計・分析することで医療の質の向上に役立て、患者さんに最善の医療を提供することです。
詳細は一般社団法人日本脳神経外科学会データベース研究事業(Japan Neurosurgical Database: JND)(PDF 232.9KB)に関する研究をご確認ください。
不明な点、不安な点などございましたら、当科スタッフまでお申し出ください。

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