
もしも、あなたが病気や事故で自分の気持ちを伝えることができなくなったら、周りの人はあなたの望む医療やケアを代弁し、選択してくれますか?人生、いつ何が起こるかわかりません。そんな万が一の時の助けになるのが、『アドバンス・ケア・プランニング(ACP)』、通称『人生会議』です。
今回は、ACPについて、都立病院の緩和ケア認定看護師が解説し、あなたの人生において『自分らしく生きる』ためのヒントをお届けします。
ACPとは
ACPとは、万が一のときに備え、あなたが大切にしていることや望むこと、病気になった際に受けたい医療やケアを考える過程です。
自分にとって大切なことを考えてみましょう
『わたしは〇〇を大切にしたい!』という思いを整理でき、自分に最善の医療やケアを考えるきっかけにもなります。
その考えを信頼できる人たちと共有・話し合いましょう
家族や医療従事者と『わたしにとって最善の選択は何か』を話し合うことで、希望に沿った医療やケアの第一歩に繋がります。
この一連の過程がACPです。『わたしの人生をどのようなものにしたいか』がテーマとなるため、「人生会議」ともいう訳です。

ACPでは具体的にどんなことを考えたり、話したりするの?
特に決まりはありませんが、以下のようなことを考えてみると良いでしょう。
- 快適で充実した人生を送るための過ごし方(どこでどう過ごしたい?)
 - 医療やケアに関する話を、一緒に聞いてほしい人
 - 自分で意思を示せなくなった場合に、決断を任せたい人(代弁してほしい人、代弁できる人)
 - 望む治療やケア、避けたい医療処置
 - 自分が大切にしていること、希望
 - 大切な人に伝えたいこと
 
自治体等からもACPの内容を書き込めるものが発行されていますので、それを活用するのも良いでしょう。東京都でも、『わたしの思い手帳』を配布しています。
注目情報(参考)東京都 ACP普及啓発小冊子「わたしの思い手帳」https://www.hokeniryo.metro.tokyo.lg.jp/iryo/iryo_hoken/zaitakuryouyou/acp_booklet(外部リンク)
誰に話せばいいの?誰と話し合えばいいの?
あなたが大切に思う人、信頼できる人とACPを進めるのが良いでしょう
例えば、もしも自分の気持ちを話せない状況になったとき、代わりに話してほしい人、話してくれる人は誰ですか?
医療従事者と話し合うことも大切です
どのような医療やケアを望むかを教えてください。わたしたちは、あなたと一緒に最善の医療やケアを考えていきます。
なぜACPが大切なの?メリットは?
- 自分の思いや考えを改めて整理し、信頼できる人たちと共有することで、お互いを知るきっかけになります。
 - あなたの希望を医療従事者と共有することで、あなたの考えを尊重した治療やケア計画が立てられます。
 - あなたの代わりに治療等について難しい決断をする場合に、家族等や医療従事者間の意見の食い違いが減り、スムーズな意思決定につながります。
例えば、「延命治療をどこまで受けたいか」といった具体的な考えを事前に話し合うことで、予期せぬ場面でもあなたの意思を尊重した結論につながります。 - あなたの希望を共有しておくことで、家族等の負担が軽減され、選択に自信を持てます。
 - 自分で気持ちを伝えられなくなった時でも、あなたが大切にしていることを守ることができます。
 
このように、ACPをあらかじめ進めることで、特に人生の最終段階での医療やケアに、あなたの『思い・考え』や『希望』を反映できるのです。

エンディングノートとの違い
エンディングノートは、人生の終わりに向けて、希望や思いを書き残すためのものです。例えば、葬儀の希望や相続のこと、大切な方へのメッセージなど、主に自分が伝えたいことを記録するものです。
ACPは、医療やケアに関する意思を明確にし、それを家族等や医療従事者と話し合いながら共有する一連の過程を指します。時期をみながら、継続的に話し合いと共有をすることで、あなたが受けたい医療やケアの方針を決めていくものです。
どちらも『わたしらしく生きる』を支える、大切なものです。
まとめ
ACPは、あなたの大切なことや希望を確認し、共有する過程です。特別な準備は要りません。 まずは、あなた自身が何を大切にしているのかを考え、その思いを信頼する人と話し合うことから始めてみてください。大切なのは、完璧であることではなく、あなたの気持ちを表現してみることです。この一歩が、あなたの人生を、より「自分らしく」生きるための第一歩となるでしょう。
このコラムが、「アドバンス・ケア・プランニングって知ってる?」と、あなたが大切な人たちと話すきっかけになることを願っています。
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最終更新日:令和7年10月28日


