オーバードーズ(OD)ってなに?

やめなきゃ。でもやめられない。オーバードーズ(OD)ってなに?

近年、「オーバードーズ」が社会問題となっています。オーバードーズの原因や身体への影響、救急搬送された場合の治療方法などについて、都立病院薬剤科が解説します。

オーバードーズ(OD)とは

医薬品は、どんな薬であっても一回に使用する量が決められています。この決められた量を超えて、過剰にお薬を飲むことを「オーバードーズ」といい、英語表記Overdoseの頭文字を取って「OD」とも呼ばれています。

近年、10代~20代を中心に、病院で医者から処方される薬、あるいは、市販の風邪薬、咳止め薬、アレルギーの薬などを購入し、一度に大量に使用する事例が増えています。

なぜオーバードーズするのか

咳止め薬やアレルギーの薬を大量に飲むことで、以下のような症状が現れます。

  • 気分が良くなる
  • 幻覚が見える
  • 頭がぼんやりとする
  • 眠くなる など

これらの症状によって嫌なことを忘れられるため、家族との不和や、学校や仕事でプレッシャーを抱え、どこにも安心できる場所がないという孤独でつらい気持ちを紛らわせるためにオーバードーズする人が増加しているようです。

悩みを抱える人のイラスト

オーバードーズによる身体への被害

オーバードーズすることで一時的に気を紛らわせることができても、身体には次のような深刻な被害が出ます。

吐き気・嘔吐・意識障害

多くの薬では、過剰摂取により、気分が悪くなって吐いたり、意識がなくなったりします。意識のない状態で、嘔吐物を気管に詰まらせて窒息死するケースも報告されています。

致死的な不整脈・呼吸抑制・心肺停止

心臓は通常一定のペースで脈を打ちますが、抗アレルギー薬や向精神薬等の過剰摂取によりそのペースが乱されると、血液を正常に全身に送り出すことができなくなります。飲んだ量によっては呼吸や心臓が止まってしまうこともあります。

依存性・耐性

市販の咳止めに使用されるデキストロメトルファンやジヒドロコデインリン酸塩といった成分には依存性があると言われています。依存性のある薬品は、決められた目的や量を超えて使っていると、次第に繰り返しその薬品を使いたくなります。

また、繰り返し使う中で今までと同じ量では満足できず、どんどん使う量が増えてしまう(耐性がつく)ため、オーバードーズを繰り返す一因となってしまいます。

肝障害・腎障害

薬を飲むと胃腸から血管の中に吸収されて効果を発揮しますが、その後は肝臓に運ばれて分解され、さらに腎臓に運ばれて尿の中に排出されます。

オーバードーズすると、大量の薬を体の外に出そうとするため、肝臓や腎臓に過剰な負担がかかります。自覚症状がないため本人は気づきませんが、オーバードーズを繰り返している人は臓器にダメージが蓄積されていて、今まで身体的に問題がなかった量でも、あるとき突然体が耐えられなくなることがあります。

 

他にも、オーバードーズにより酩酊状態(ひどく酒に酔ったような状態)になることで自殺への恐怖感が薄れ、高所からの飛び降りや首つりを実行してしまい命を落とすこともあります。

オーバードーズしようとする人のイラスト

もしオーバードーズで救急搬送されたらどうなる?

オーバードーズした結果、命にかかわる状況になって病院に救急搬送された場合、どういった治療が施されるのでしょうか。

胃洗浄

服薬からそれほど時間が経っていない場合に行われます。口から太い管を胃まで入れ、お湯で直接胃の中を洗浄します。

薬用炭

粉末状の炭を飲み込んで治療します。炭の表面にはさまざまな大きさの穴が開いており、飲み込まれた炭は胃腸に残っている医薬品を穴に吸着して、そのまま便として体の外に出ていきます。

解毒薬

解毒薬が存在する薬をオーバードーズした場合は、解毒薬を使用することがあります。

例えばアセトアミノフェンという解熱鎮痛剤を大量に飲んだ場合に使われる解毒薬はN-アセチルシステインといいますが、味が非常に不味く飲みづらい薬です。これを4時間おきに18回も飲むことになります。

身近にオーバードーズする人がいたら

もし身近な人からオーバードーズしていると相談された場合は、まずは決して頭ごなしに怒らないようにしてください。オーバードーズは本人が苦しい中でやっと見つけたストレスへの対処方法であり、否定されるともう他人へ相談することもできなくなってしまいます。本人の気持ちに寄り添うことで孤独感を和らげることが大切です。

ただし、オーバードーズしている人を一人きりで支えようとすると、負担が大きく押しつぶされてしまうことがあります。自分自身も信頼できる友人や周囲の人に相談して、抱え込まないようにしましょう。

また、オーバードーズはその人にとっては短期的にストレスをしのぐために重要な手段ですが、身体への負担を考えると、長期的には根本的な問題の解決や、オーバードーズ以外の手段を模索する必要があります。周囲の人だけで対応しきれないと感じた場合は、地域の保健所や精神保健福祉センターへ相談してみましょう。地域にある医療機関や支援団体についての情報を得ることができます。

寄り添うハートのイラスト

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最終更新日:令和7年8月6日

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