血管外科

診療内容・特色

大動脈瘤、閉塞性動脈硬化症、急性動脈閉塞症などの動脈疾患、および下肢静脈瘤、深部静脈血栓症などの静脈疾患を扱っています。

腹部大動脈瘤

心臓から出る大動脈は、横隔膜より上の胸部大動脈と横隔膜より下の腹部大動脈に分けられます。腹部大動脈は通常は直径2.0cm以下ですが、動脈硬化によって動脈の壁がもろくなり、拡大して直径が3.0cmより太くなった状態を、腹部大動脈瘤といいます。ある程度の大きさになると、血流の圧力に耐えられなくなり、破裂してしまうことがあります。一旦破裂すると腹腔内で大量に出血し致命的なことになるため、一般的に直径が5.0-5.5cm以上になると破裂予防のために手術を考慮します。

手術には以下の2通りの方法があります。

  1. 人工血管置換術
    腹部を切開して、動脈瘤の部分を人工血管で置き換えます。動脈瘤の血流を遮断して、瘤を切開し、人工血管を縫い付けます。
  2. ステントグラフト内挿術(図)
    2007年より保険治療の対象となった、比較的新しい治療です。腹部は切開せず、左右の太ももの付け根を切開し、そこから折りたたんだ人工血管(ステントグラフト)を大動脈まで挿入、瘤の中で広げる治療です。
ステントグラフト内挿術の説明図です。

人工血管置換術は、確実性の高い治療ですが、腹部を切開するため、体への負担がやや大きくなります。ステントグラフト内挿術は、手術の傷も小さく、体への負担は開腹術に比べて小さいですが、術後に再治療が必要になる可能性がより高いといわれています。当院では、患者さんの状態に応じて、手術の方法を選択しています。

胸部大動脈瘤

胸部大動脈瘤の治療としては、腹部大動脈瘤の治療と同様に、胸部を切開して動脈瘤の部分を人工血管で置き換える人工血管置換術と、2008年より保険治療の対象となったステントグラフト内挿術(図)の、2通りがあります。当院では当科と心臓血管外科が連携し、患者さんの状態に応じて適切な治療を選択しています。

胸部大動脈瘤の説明図です

閉塞性動脈硬化症

動脈硬化によって動脈が細くなったり詰まったりしたため、手や足の血流が悪くなった状態を、閉塞性動脈硬化症といいます。最近では末梢動脈疾患(PAD)とも呼ばれています。下肢の動脈に生じることが多く、その病変の程度によって、歩くと足が痛くなるという症状から、足が壊死してしまう状態まで、重症度が異なります。治療としては、運動療法、薬物療法、カテーテル治療(図)、バイパス手術などを、症状や病変の状態に応じて選択することになります。

閉塞性動脈硬化症の説明図です

下肢静脈瘤

静脈は全身から心臓に戻る血液の通り道で、血液が逆流しないように逆流防止弁機能が備わっています。この弁が機能しなくなると、血液が静脈内にうっ滞し、血管が瘤のように拡張して、さまざまな症状を引き起こします。下肢のだるさ、安静時のこむら返り、色素沈着、潰瘍形成等の原因になります。治療としては、症状が軽い場合は弾性ストッキング(下肢を強く圧迫するストッキング)の着用をお勧めし、症状が強い場合は外科的治療を考慮します。当院では外科的治療として、2014年より保険治療の対象となった血管内ラジオ波焼灼術(カテーテル治療)を施行しています。局所麻酔で施行可能で、通常は入院せずに日帰りで施行しています。