連携担当医 本村 小百合
診療内容
当科は、血液悪性腫瘍と造血障害を専門としています。
- 血液悪性腫瘍の診断と治療
急性白血病、骨髄異形成症候群、リンパ腫、多発性骨髄腫などの造血器悪性疾患の診断を確定して、QOLを重視した各症例に最適な診療を提供いたします。 - 造血障害の診断と治療
貧血を始めとする、赤血球数、白血球数、血小板数の増減など血液検査でみられる各種の異常について診療します。 - その他
血漿蛋白異常症、血液凝固異常についても診療します。
特色
・たまほく血液内科は、北多摩北部地域では数少ない血液疾患のハイボリュームセンターです、血液内科常勤医5人、非常勤医3人の比較的血液内科医の多い病院で、外来を毎日午前中(一部午後)の合計11コマ行っています。入院も、無菌室も10床、病床35床で必要時は入院ベットが用意しやすいです。
・たまほく血液内科はチーム医療に力を入れております。大切な患者さんを大切に診療していきたい。病院内の多部門連係、地域連携を強化し、温かい血液内科診療が行える地域にしていきたいと考えています。皆で患者さんを支えていきます。
・外来、入院ともに血液悪性腫瘍の患者さん(急性白血病、骨髄異形成症候群、悪性リンパ腫、多発性骨髄腫)の割合が多いのが当科の特徴です。2021年度の主な実績としては以下のとおりです。
2021年度実績
外来 | 入院 | ||||
疾病分類 | 総数 | 初診 | 再診 | 延べ入院 | 実人数 |
急性白血病 | 73 | 15 | 58 | 74 | 38 |
慢性白血病 | 44 | 12 | 32 | 16 | 13 |
骨髄異形成症候群 | 108 | 31 | 77 | 35 | 28 |
悪性リンパ腫 | 283 | 86 | 197 | 135 | 87 |
多発性骨髄腫 | 75 | 30 | 45 | 47 | 28 |
再生不良性貧血 | 22 | 2 | 20 | 9 | 4 |
特発性血小板減少性紫斑病 | 56 | 11 | 45 | 12 | 10 |
その他血液疾患(注) | 339 | 118 | 221 | 32 | 28 |
(注)その他の血液疾患としては、骨髄増殖性疾患(多血症,血小板増多など)、血液悪性腫瘍以外による貧血(溶血性貧血、悪性貧血など)、血漿蛋白異常、血液凝固異常など
血液悪性腫瘍への対応
血液疾患は発症数が少ないと思われがちですが近年増加しています。最近の治療の進歩はすばらしく、治療成績は良くなってきており、病気とつきあって生きていく方も増えてきました。
当院ではエビデンスレベルの高い治療や診療ガイドラインで推奨されている治療をおすすめしていきますが、患者さんの御希望、生き方を伺いながら治療方針を決定していきます。
急性白血病については日本成人白血球グループ(JALSG)に参加し多剤併用化学療法を中心とした治療を行っています。悪性リンパ腫については、初回は主に入院で、2クール目からは外来で化学療法、末梢血幹細胞移植を行っています。多発性骨髄腫については新規薬剤を用いた治療から末梢血幹細胞移植まで、骨髄異形成症候群については化学療法や外来での輸血を行っています。入院ではひとりの患者さんを複数の医師で担当しています。無菌室を利用した化学療法を行う設備も充実しており、通院治療室での外来化学療法や、外来での輸血療法も実施しています。
血液疾患の診断は、骨髄像を10人用ディスカッション顕微鏡、大型モニターを用いて多数の医師、検査技師で検討し診断しています。病棟看護師、薬剤師、管理栄養士、退院調整看護師、ソーシャルワーカー、血液検査技師、通院治療室看護師、外来看護師と、病棟は週1回、外来は月1回カンファレンスを行っており、患者さんを多職種で多方面から「見て、聞いて、感じて」、チームで治療方針の検討を行っています。十分な説明を大切にし、患者さん、ご家族と話し合った上で治療方針を決定し行っていきます。歯科口腔外科医師、歯科衛生士による周術期口腔ケア、リハビリ科医師、理学療法士、作業療法士、言語聴覚士によるがんリハビリテーションも化学療法を行う患者のほぼ全例に行っており、口腔のトラブルやADLの低下を防いでいます。患者さん、ご家族の希望での在宅輸血や看取りをお願いする先生方、訪問看護師との連携も多く行っています。
得意分野、強み
若年者の急性白血病の治療には日本成人白血病研究グループにも参加して日本の標準的な治療を行っており,実績があります.65歳以上の血液悪性腫瘍に対する診療には,多摩老人医療センターの時代からの蓄積があります.骨髄異形成症候群の治療にも力を入れています.合併症や社会的背景に応じた対応を行い,ご本人やご家族,地域の先生方と相談の上で適切な治療方針・診療計画をご提案いたします.
1.無菌室
血液内科では,急性白血病,再生不良性貧血,骨髄異形成症候群などの患者さんの治療中に白血球減少期の感染症を防ぐために無菌室を使用します.無菌室とは感染症を防ぐために空気にフィルターを通して清浄化した部屋で,普通の部屋と比較して空気が清浄化されており,肺炎や肺真菌症のリスクが低くなります.
当科の病床35床のうち,無菌室は個室3室,4人部屋1室,3人部屋1室の合計10床あります.ベットサイドに設置する簡易型無菌装置も6台あり,合計16床で強力な化学療法をより安全に施行することができます.無菌室は健康保険適応で入室していただき保険適応外の差額の負担もありません.


2.末梢血幹細胞移植
多発性骨髄腫、悪性リンパ腫などの患者さんに対して末梢血幹細胞移植を行っています。抗がん剤投与後の骨髄抑制の時期に白血球を増加させるG-CSF製剤を投与し、末梢血中に幹細胞が出現したときに血液成分分離装置を用いて幹細胞採取を行い、専用クリーンベンチで無菌的に処理し、-80度専用冷凍庫に凍結保存します。移植前処置(大量抗がん剤)を行った後に、十分量の造血幹細胞を解凍後輸注し早期の造血回復をはかります。輸注後は幹細胞が生着するまで無菌室内で過ごしていただきます。抗がん剤の強度を上げ、造血に関する副作用を軽減し、治癒を目指す治療です。都内近隣では当院のみを行っています。
![末梢血幹細胞移植[1]](/tamahoku/shared/files/006351/att_0000003.png)
![末梢血幹細胞移植[2]](/tamahoku/shared/files/006351/att_0000004.png)
3.安全な化学療法と外来治療、指導
血液内科では医師、看護師、薬剤師がチームで一丸となり、安全な化学療法の施行に力を入れています。入院で治療を導入するときには「血液内科化学療法3職種説明用紙」を使用してそれぞれの職種から同一の形式で説明をし、スケジュール、副作用を患者さんに理解していただきます。当科の頻用レジメン約80種類すべてを用意しています。退院後は通院治療室、外来皮下注射化学療法室に伝達し、治療のクールごとに同一の形式で多職種から説明を行い、地域の先生方や訪問看護師、院外薬局とも見ていただくようなソーシャルワーカーとも連携して、安全な化学療法を行っています。


4.外来輸血室
外来に輸血専用室があり、4床のベッドで専任看護師を配置し、赤血球輸血、血小板輸血を行っています。
5.外来皮下注射室
皮下注射で行う化学療法専用の部屋があり、2床のベッドで専任看護師が化学療法を行います。
2021年度実績
延べ件数 | 実人数 | |
外来化学療法(通院治療室) | 905 | 84 |
外来化学療法(外来皮下注治療室) | 548 | 28 |
外来輸血 | 776 | 89 |
6.RI標識抗体療法
当施設は難治性の低悪性度悪性リンパ腫に対し、RI(アイソトープ)標識抗体療法(ゼヴァリン®)の実施が可能です。多摩地区で行っている施設は現時点では2施設のみです。お気軽にご相談下さい。
7.その他
ホスピタルズ・ファイル「血液内科のがん治療について」はこちら(外部リンク)
当科にかかわる施設認定
・日本血液学会 専門研修認定施設
・日本臨床腫瘍学会 認定研修施設
・日本成人白血病研究グループ(JALSG)正会員
主要機器

1.無菌室
2.血液成分分離装置(末梢血幹細胞採取機)
3.末梢血幹細胞処理用クリーンベンチ
4.保存用の‐80度冷凍庫
5.骨髄検討用10人用ディスカッション顕微鏡、大画面モニター