生化学検査のお話

検査の内容と、検査時の注意などについて説明しています。

肝臓の位置

肝臓はどこにあるの?

肝臓はどこにある?

顕微鏡でみた肝臓の組織です。

肝臓は横隔膜(肺の下にある膜)のすぐ下に位置し、右腹部のほとんどを占めています。体の中で最も大きい臓器で、前からみると直角三角形のような形をしています。重さは成人で約1200~1400gにもなります。

肝臓は我慢強い!?

肝臓は再生します

肝臓は体の中で最も重要な働きを担っています。とても辛抱強く、少々の病気ではへこたれません。3/4~4/5を切り取られても、いつも通りの仕事をこなしながらりっぱに再生する能力があります。この性質を利用したものが生体肝移植で、肝臓を半分切り取って移植してもしばらくするともとの大きさに戻ります。


肝臓のはたらき

どんな働きをしているの?

肝臓は人体の化学工場ともいえるような複雑な働きをしています。

肝臓の働き(1)
肝臓の機能と構造

肝臓の機能と構造

肝臓と消化管は門脈(血管)というパイプラインでつながっています。消化管で吸収された栄養素はこのパイプラインを通って肝臓に運ばれ、酵素によるさまざまな処理を受けます。こうして体に必要な物質に加工され、必要に応じて全身に送られたり、肝臓に蓄えられたりします。

肝臓は体の化学工場

肝臓は体の化学工場!!

肝臓の働き(2)

からだで不要になった老廃物や、アルコール、有害物質を害のないものに変えます。

血液凝固因子の生成

いろいろな種類の凝固因子を作っています

肝臓の働き(3)

血液を固まらせる働きをする物質(血液凝固因子)の大部分を作ります。

胆汁の生成

胆のうは胆汁をためる袋です

肝臓の働き(4)

胆汁を作ります。胆汁の中身は胆汁酸塩、電解質、色素(ビリルビンが主)、コレステロールなどです。老廃物や過剰なコレステロールを除いたり、消化を助ける働きがあります。肝臓で作られた胆汁は胆のうに貯められます。


肝機能を調べるための血液検査

血液検査で何がわかるの?

肝臓機能検査ではパズルの組み合わせのようなものです。一つの項目だけでは判断できません。

肝臓機能検査はパズルの組み合わせのようなものです。ひとつの項目だけでは判断できません。

血液中には肝臓が持っている酵素や、肝臓で作られた物質が含まれています。それらの血液中の濃度を測定することにより、

  1. 肝臓が傷ついていないか?
  2. 肝臓が正常に働いているか?

を調べることができます。
ただし、ひとつの検査だけではわからないので、いくつかの検査をパズルのように組み合わせて判断します。

どんな検査があるの?

(1)AST/ALT
AST(GOT)/ALT(GPT)

肝細胞はいろいろな原因でダメージを受けます。

タンパク質のもとになるアミノ酸を作るのに必要な酵素です。この2つの酵素は肝臓にたくさん存在するため、肝臓の細胞がダメージを受けて壊れると血液中に漏れ出します。

(2)γ-GT
飲みすぎには注意しましょう。

飲みすぎには注意しましょう。

アルコールやお薬を摂取すると敏感に反応する酵素です。肝臓、すい臓、腎臓の細胞にたくさん含まれているので、これらの細胞が壊れたりすると血液中に増加します。また長期にわたり飲酒していると上昇しますが、禁酒によって低下します。

(3)LDH(乳酸脱水素酵素)

肝臓のほか、心臓や腎臓、筋肉中にたくさん含まれている酵素です。肝炎などで上昇します。

(4)ALP(アルカリフォスファターゼ)
ALP

この装置で様々な項目の測定をしています。

肝臓や骨、胎盤にたくさん含まれている酵素です。胆汁の流れがとどこおった場合に上昇しますが、骨の成長や妊娠などでも上昇します。

(5)総ビリルビン
総ビリルビン

日本医師会ホームページより

ビリルビンは脾臓で赤血球中に含まれるヘモグロビンから作られ(→間接ビリルビン)、肝臓で排泄するためのかたち(→直接ビリルビン)に変えられます。血液中には間接ビリルビンも直接ビリルビンも存在しますが、両者の和が総ビリルビンです。

黄疸がでる

ビリルビンが作られてから排泄されるまでの過程のどこかに障害があると、血液中のビリルビンが増加し、黄疸の症状がでます。

(6)アルブミン
血漿タンパク(総タンパク)の内訳

日本医師会ホームページより

アルブミンは肝臓のみで作られるタンパク質です。アルブミンの値は肝細胞の機能を反映します。ただし、他の原因で変動することもあります。


腎臓の位置

腎臓はどこにあるの?

そら豆形をした臓器で、左右に1個ずつあります。大きさは、長さ10~12cm、幅5~6cm、長さ3~4cm、重さ130g程度で、尿管、膀胱、尿道と続く泌尿器の出発点です。

腎臓はどこにある?

腎臓ネットホームページより

腎臓の断面図

腎臓の断面図


尿ができるまで

尿のおおもとは血液中の老廃物や水分です。では、尿はどのようにして作られるのでしょう?

(1)血液をろ過する

血液は腎臓の糸球体でろ過されます。血液が糸球体を通る間に血液中の水分やいろいろな成分がボーマンのうにこし出されます。こし出された水分や老廃物は尿のもとになるので“原尿”といいます。原尿の量は1日に約180L。尿の約100倍です。

(2)再吸収(リサイクル)する

原尿にはまだ使えるもの(水分、塩分、ブドウ糖など)がたくさん含まれています。それらをもう一度回収するリサイクルセンターが尿細管です。
できた尿は腎うから尿管を通りぼうこうに貯まります。そして、体の外に尿として排出されます。

血液のろ過尿の生成まで


腎機能を調べるための血液検査

腎臓の検査

(1)BUN(尿素窒素)

たんぱく質の最終分解産物です。血液中のBUNは腎臓で排泄されるため、機能が低下すると血液中の値は増加します。ただし、他の要因でも変化を示すことがあります。

(2)クレアチニン

筋肉を動かすエネルギー源の一つであるクレアチ二ンの代謝産物です。血液中のクレアチニンは腎臓で排泄されるため、腎臓の機能が低下すると血液中の値は増加します。一日の排泄量は体重によりほぼ一定です。

(3)クレアチニンクリアランス

糸球体のろ過機能を確認する検査です。
BUNやクレアチニンに比較して、この検査は糸球体のろ過機能をより正確に判断するために利用します。血液中と尿中のクレアチニン値と1日分の尿量、身長、体重から計算した値=クリアランス値で判断します。

24時間法
  1. 採血をし、血液中のクレアチニン値を検査します。
  2. 一日分の尿をためて、尿中のクレアチニン値と尿量を測定し、計算します。
    これにより、日常生活での糸球体のろ過機能がわかります。

人工透析と腎臓移植

人工透析

人工透析イメージ

腎臓病が進行すると、尿として体外に出るはずの物質が血液にたまり、体の機能を妨げます。そこで、人工的に老廃物や余分な水分・塩分を体の外へ出すシステムを使うことがあります。これを人工透析と言います。

腎臓移植

機能が弱くなった自分の腎臓の代わりに、提供者の腎臓を移植します。移植には肉親提供者の2つある腎臓の一方を移植する「生体腎移植」と、亡くなられた方から提供された腎臓を移植する「献腎移植」があります。移植によって人工透析では治療ができなかった合併症や食生活の制限から解放され、一般健康人と同じような生活ができるようになります。ただし、移植された腎臓を拒絶反応から守るために薬を飲み続ける必要があります。


生活習慣病

糖尿病

糖尿病とは?

インスリンはすい臓で分泌されるホルモンです。糖尿病はこのインスリンの分泌量が少なかったり、量は足りていても力不足で食べた物の糖分(ブドウ糖)が上手に分解されず、ブドウ糖が血液中にたまってしまう病気です。このような状態になると結果的に尿の中に糖がでてきます。

糖尿病とは1

健康な状態

糖尿病とは2

糖尿病の状態

糖尿病の検査
(1)血糖 Glu

血液100ml中に含まれるブドウ糖の量を測定します。検査をした時点の血糖の値を表します。一般に空腹時は低く、食後に上昇します。その他、運動、喫煙、ストレスなどによっても大きく変動します。医師に、何時ごろ食事をしたかをお知らせください。

(2)グリコヘモグロビン(ヘモグロビンA1c) 

赤血球の中にあるヘモグロビンの一部とブドウ糖が結合して、グリコヘモグロビンになります。グリコヘモグロビンは一度できると、その赤血球の寿命が尽きるまでの間、血液中に残っています。このため、血液中のグリコヘモグロビンの割合を調べることで、過去1~2ヶ月の血糖の状態を知ることができます。

血管内の様子

(3)経口ブドウ糖負荷試験 (O)GTT

体の中でブドウ糖がどのように利用されているかを詳しく調べる試験です。

  1. 検査日前は21時までに夕食を済ませてください。それ以降は水以外なにも食べない状態にします。
  2. 検査当日は、ブドウ糖75gを炭酸水に溶かしたものを一気(5分以内)に飲んでいただきます。
  3. ブドウ糖水を飲む前、飲んだ後、時間を追いながら採血し、血糖値を測定します。検査が終わるまでの間、水以外は飲んだり食べたりしないでください。タバコも控えてください。
経口ブドウ糖負荷試験

検査風景

人工透析イメージ

(縦軸)空腹時 / (横軸)負荷後120分値

血糖の変動から、糖尿病型・境界型・正常型のいずれかに判定します。

高脂血症

高脂血症とは?
人工透析イメージ

日本医師会ホームページより(改)

 血液中の脂肪分が増えた状態のことを言います。高脂血症が続くと血管の壁に脂肪成分が蓄積され、動脈硬化の原因となります。主な脂肪分として、コレステロールや中性脂肪(トリグリセライド)があります。

高脂血症の検査

(1)コレステロール

体の細胞膜やホルモンを合成するのに、必要な成分です。食べ物から取り入れたり、肝臓や小腸でつくられます。主な種類としてLDL型とHDL型があります。

高脂血症の検査について

(2)中性脂肪(トリグリセライド)

人が活動するときのエネルギー源です。運動などで使われず余った分は、皮下脂肪として蓄えられます。食後に血液中の値が上昇し、約2時間~6時間で最高値に達します。食事による影響を避けるため、食前に採血します。