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婦人科がんは20代から60代まで幅広い年代で発症します。
しかし、学業や仕事、育児や介護などで追われる多忙な時期ほど、身体の違和感があっても受診を先延ばしにしてしまいがちです。
実は婦人科がんは、種類によってかかりやすい年代や症状、見つかり方が異なります。
定期検診で発見しやすいがんがある一方で、症状から見つかるケースもあります。
今回は、婦人科がんの種類ごとの特徴や受診のきっかけを整理するとともに、HPVワクチンの最新情報について、都立多摩北部医療センター産婦人科腫瘍専門医・岡本三四郎医長に聞きました。
都立多摩北部医療センター
産婦人科 岡本三四郎 医長

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婦人科がん(子宮頸がん、子宮体がん、卵巣がん)って?
婦人科系のがんとは?
婦人科がんは、主に子宮頸がん、子宮体がん、卵巣がんの3つを指し、婦人科腫瘍の専門医が診療を担当します。よく混同されがちですが、乳がんは婦人科ではなく乳腺科・乳腺外科が担当します。また、「子宮がん検診」という表記には注意が必要です。実際には子宮頸がん検診のみを指していることがほとんどですが、これには理由があります。かつて子宮頸がんと子宮体がんを分けずに、まとめて「子宮がん」と呼んでいた頃の名残によるものです。

婦人科がんは「年齢によって現れ方が違う」
注目情報20代から発症し40代でピークを迎える、子宮頸がん
子宮頸がんは、罹患数(2021年は10,690人)、死亡数(2024年は2,751人)ともに増加しており、
特に20代後半から30代後半の若い世代でその傾向が顕著です。
注目情報閉経後の50歳半ばでピークとなる、子宮体がん
子宮体がんの罹患数は年々増加傾向(2021年には19,071例)で、近年は40代でも増加が見られます。
さらに2000年以降、死亡数も上昇傾向です(2024年は3,136人)。
注目情報50代後半から60歳がピークとなる、卵巣がん
罹患数(2021年は13,456人)・死亡数(2024年は5,116人)ともに増加傾向です。婦人科がんは、年齢ごとに見つかるきっかけが異なります。例えば、若い世代ではがん検診や妊婦健診での子宮頸がん検診をきっかけに異常が見つかることが少なくありません。
また、中高年以降においては、不正出血や腹部の違和感などの症状をきっかけに外来受診するケースも見られます。
子宮頸がん|ワクチンと検診で防ぐことができるがん
子宮頸がんは、なぜ起こるのか――HPV(ヒトパピローマウイルス)感染との関係
子宮頸がん発症の多くは、HPV感染がきっかけです。
HPVは、主に性交渉による皮膚や粘膜の接触で感染するウイルスで、多くの方が生涯に一度は感染するといわれています。HPVに感染しても約80%から90%は自然に排除されますが、一部の方は感染が続き、数年から十数年かけて、前がん病変を経て子宮頸がんへ進行することがあります。
HPVには200種類以上の型がありますが、特にHPV16型と18型が子宮頸がんとの関連性が強いことで知られています。
HPVワクチンで、何がどこまで防げるのか
HPVワクチンは、HPVへの感染を防ぐための予防ワクチンです。最も効果が高いとされているのが、性交経験前の接種であり、日本では12歳から15歳の女子を対象に公費助成による定期接種が行われています。男子は任意接種(全額自費)が基本ですが、独自に助成を行う自治体もあります。
(注)詳細につきましては、お住まいの自治体のホームページをご確認ください)
性交経験があっても、HPV検査(註)で未感染であることが確認できれば、40歳未満ではワクチンによる一定の予防効果が期待できるというデータがあります。
自費接種になりますが、ワクチン接種を検討するメリットは大きいでしょう。ただし、HPVワクチンは、すでに感染しているHPVを排除したり、がんを治療したりする効果はありません。ワクチンを接種していても、定期的な子宮頸がん検診を受けることが必要です。
(註)HPV検査は子宮頸がんの原因となるHPVに感染しているかどうかを調べる検査
HPVワクチンの安全性はどう考えればいいか

日本では過去に、HPVワクチン接種が一時的に差し控えられた時期がありました。その後、国内外で大規模な疫学調査が行われ、重篤な副反応との因果関係は限定的であるとされました。
現在は、厚生労働省および日本産科婦人科学会が、HPVワクチン接種を推奨しています。
子宮頸がんは定期検診で、進行がんの約9割を回避できる
子宮頸がんは、定期的な検診によって進行がんの約9割を防げるとされています。しかし、検診受診率を見ると、欧米やフィンランドでは70%以上に対し、日本は43.6%(2022年)にとどまっています。多くの自治体では、20歳以上を対象に2年に1回の細胞診が実施されており、自治体によっては30歳以上でHPV検査を併用できる場合もあります。
注目情報補足
子宮頸がんの中には、HPVと関係しないタイプも約1割弱存在します。
そのため、HPV検査が普及しても細胞診の重要性は変わっていません。
子宮体がん・卵巣がん|見えにくいからこそ、知っておきたい重要ながん
子宮体がん
どんなきっかけで見つかる?
子宮体がんは、不正出血をきっかけに見つかることが少なくありません。女性ホルモン(エストロゲン)の影響を強く受けやすく、リスクを高める要因として、肥満、糖尿病、高血圧、エストロゲン製剤の投与などが挙げられます。
検診の現状
子宮体がんは、自治体の標準的ながん検診には含まれていません。一部の自治体で独自の助成があり、職域検診で50歳以降の希望者を対象に実施される場合もありますが、詳細内容はそれぞれ異なります。
検査方法と課題
子宮体部細胞診は痛みが伴う場合があり、それが検査を遠ざける一因となっています。
経膣超音波でも子宮内膜の状態は確認できますが、検査方法が標準化されていないため、検診としては普及に至っていないのが現状です。
大切なメッセージ

「不正出血があれば、躊躇せずにすぐに婦人科へ」!これが、子宮体がんに対して最も重要なポイントです。
卵巣がん
どんなきっかけで、見つかる?
複数のワクチンの同時接種は、安全性に問題はありません。
同時接種には、通院回数が減ることで家族の負担が減ることや、医療機関での感染リスクを減らせること、接種スケジュールの遅れを防げるといった利点があります。
なぜ検診がないの?
卵巣がんは画像検査や腫瘍マーカー(血液検査)だけでは早期に確実に見分けることが難しいがんです。さらに短期間で急速に進行するタイプもあり、年に1、2回検査を受けていても、早期発見を保証できません。こうした理由から定期的ながん検診が確立しておらず、症状や変化に気づいた時に受診することが、最も現実的な対策とされています。
大切なメッセージ
卵巣に腫瘍があるかどうかは、超音波でほぼ確実に確認できます。
腹部の張りや違和感など、 「何かおかしい」と感じたら、迷わず婦人科を受診しましょう。
子宮体がん・卵巣がんと遺伝の関係
子宮体がんや卵巣がんの中には、遺伝的な体質と関係しているものがあります。
- 遺伝性乳がん卵巣がん(HBOC;Hereditary Breast and Ovarian Cancer)
BRCA1/2遺伝子の変化により、乳がんや卵巣がんのリスクが高まります。 - リンチ症候群
大腸がんに加えて、子宮体がんの発症リスクが高くなることが知られています。
家族にがんの罹患者がいる場合、がんの種類や発症年齢は、受診や相談の大切な手がかりになります。目安として、三親等以内に同じ種類のがん、または関連するがんを患った方が2人以上いる場合は、一度医療機関で相談してみることをお勧めします。
年齢別・予防と受診のポイントまとめ
- 20代からは、子宮頸がん検診を定期的に受けるとともに、気になることを気軽に相談できる「かかりつけの婦人科」を見つけておくことが大切です。
自分で情報を調べる際は、信頼できる一次情報を起点にすることをお勧めします。 - 30代、40代では、不正出血などの症状がある場合はもちろん、子宮体がんや卵巣がんなどの家族歴がある方は、一度婦人科で相談しておくことで安心につながります。
- 50代以降は、不正出血だけでなく、お腹の張りや違和感などの小さな変化にも注意が必要です。

全ての年代で、「何か違和感がある、おかしい」と感じたら、ためらわずに婦人科を受診することが、早期発見・早期治療につながります。
- 婦人科受診に関する情報源
日本婦人科腫瘍学会監修の患者さん向け動画アニメーション
https://jsgo.or.jp/animationlist/?doing_wp_cron=1768984333.8544819355010986328125(外部リンク)
医師からのメッセージ
婦人科の症状や病気は、相談しにくく受診をためらいがちです。
私たち婦人科腫瘍の専門医は、症状だけでなく、その背景も含めて丁寧にお話を伺い、分かりやすくお伝えすることを大切にしています。気になることがあれば、一人で抱え込まず、ぜひ婦人科にご相談ください。治療についても、近年は腹腔鏡手術やロボット手術など、身体への負担が少ない低侵襲(ていしんしゅう)治療が保険適用で広がり、選択肢が増えています。
私は都立多摩北部医療センターにおいて、ロボット手術の提供体制をさらに充実させるためにこちらにきました。
患者さん一人ひとりが納得できる治療を、一緒に考えていきたいと思っています。
最終更新日:令和8年3月11日


