小児のワクチン接種について

身近な医療だからこそ、確かな情報を身につけましょう

今こそ知りたい、乳がん。リスク、遺伝、そして向き合い方

「子どもへのワクチン接種は当たり前」だと考えていても、SNSで「ワクチンは危険」という情報を目にすると、心が揺らぐことがあるかもしれません。
そうした不安を抱えていても、医師に相談するのは気が引ける方もいることでしょう。
子どもへのワクチン接種をためらう気持ちと、どう向き合えばいいのでしょうか。

今回は、小児のワクチン躊躇(ちゅうちょ)に関する現状、誤解が広がる背景、ワクチンの基本的な考え方、情報の見極め方などについて、都立小児総合医療センター感染症科の堀越裕歩部長に聞きました。

都立小児総合医療センター
感染症科 部長
堀越 裕歩

外科(乳腺) 桑山隆志部長 写真
専門分野:小児感染症

小児総合医療センター | 東京都立病院機構

感染症内科|小児総合医療センター|東京都立病院機構

ワクチンは危険?という声について

「ワクチン=危険」は本当??

ワクチンは我が子に受けさせるものだからこそ、保護者が「危険なのでは?」と心配になるのは自然なことです。
実際の診療場面でも、そうした迷いを抱えながら相談に来られる方も少なくありません。

こうした心理状態は、「Vaccine Hesitancy」と呼ばれ、日本では「ワクチン躊躇」や「ワクチン忌避(きひ)」という言葉が使われています。
世界保健機関(WHO)では、「予防接種を受けられるにも関わらず、予防接種を躊躇したり拒否したりすること」と定義されており、海外でも課題となっています。

乳がんについて男女関係なく考える様子

「ワクチンは危険?」という情報はどこから来るのか

「ワクチンは危険だ」という情報の大半は、実はごく限られた発信源から拡散されています。

その主な発信内容として、以下の5つに分類されます。

〈1〉安全性への懸念(ワクチンとは関係のない病気との関連付け)
〈2〉有効性や必要性への疑問
〈3〉政府や製薬会社への不信感を背景にした陰謀論
〈4〉自然派志向やスピリチュアルな価値観
〈5〉選択の自由や強制への反発

こうした情報は人々の不安をあおりやすいため、SNSや動画、書籍、講演などを通じて注目を集め、拡散しやすい性質があります。
近年では、ワクチンへの不安が政治的な主張と結びつき、支持を集める手段として利用されるケースも少なくありません。

本来、医療や科学は政治や利益から切り離され、科学的な根拠に基づいて判断されるべきですが、現実にはさまざまな思惑が絡み合っており、問題解決がより複雑になっています。

SNS時代に不安が広がりやすい理由

SNSや動画共有サイトは、情報を直接届けられる貴重なプラットフォームですが、注目度が再生数や収益につながる仕組みとなっているため、ワクチンに関してはネガティブな情報が集まりやすい傾向があります。

いわゆる「ワクチンは安全で有効だ」という投稿よりも、全くの偽情報でも不安をあおって危険だと主張するほうが注目されて収益につながりやすいのです。
不安をあおる方法には、巧妙なしかけがあり、専門の知識がある方でもついつい信じてしまうように作られています。
また一度、そのような投稿をみると、次々と似たような投稿が表示されることもあります。ワクチン接種の重要性とは?

ワクチンのメリット

ワクチン接種の最大のメリットは、特定の病気にかからないこと(個人予防)、あるいは感染しても症状を軽減すること(重症化予防)です。それに加えて、一定の接種率で病気の流行を抑える効果(集団免疫)があります。

身近な例であれば、受験生のいるご家庭で家族全員がインフルエンザワクチンを接種することで、家庭内にウイルスを持ち込むリスクを下げることが挙げられます。これは、「身近で大切な人をお互いに守る」という「小さな集団免疫」です。

また、コロナ禍で高齢の家族に会う前にワクチン接種が勧められていたのも、「自分のためだけでなく、周りの大切な人を守る」という考え方に基づいています。

ワクチンの安全性

ワクチンは、よく飛行機にたとえられます。飛行機は、短時間で遠くまで移動できる便利な乗り物です。
非常にまれな事故も発生しますが、それ以上に「短時間で安全に移動できる」という大きなメリットがあるため、多くの方が利用しています。
私はワクチンも飛行機のたとえと同じだと考えています。接種後に腫れや発熱といった副反応はありますが、多くは一時的なもので自然に回復します。これは、飛行機に乗った際の揺れによって一時的に気分が悪くなる状態と似ています。

一方で、飛行機が絶対に事故を起こさない乗り物かというとそうでないように、ワクチンによって重い健康被害が起こる可能性もゼロではありません。しかし、その頻度は飛行機の事故発生率に匹敵するほど、極めてまれなものです。それに対して、ワクチン接種によって防げる病気は、重症化や後遺症、命に関わることもあります。こうした病気そのもののリスクと比較すると、ワクチン接種のメリットは明らかに大きいと言えます。

実際、近年は百日咳の流行が再び問題になっています。
特に生後2か月未満の乳児では、まだワクチンが接種できないので重症化しやすく、ワクチンが接種できる月齢でもワクチン未接種や接種の遅れによって、病院では入院が必要になったり、中には命を落としたりする例も見てきました。

百日咳のワクチンがなかった時代には、大勢の子どもが入院したり、亡くなったりしていたのが、ワクチンのおかげで健康に育つことができるようになっているのです。
だからこそ予防接種は、今も子どもたちの命を守るために欠かせない医療なのです。

「予防接種をしない」という選択肢について

ワクチンを接種しない選択をした保護者も、根底にあるのは「我が子の健康を守りたい」という気持ちだと思います。
その想いは、私たち医療従事者も同じです。診療では、保護者の不安や疑問に耳を傾けることを大切にしています。

そして、保護者の同意を得たうえで、ワクチン接種のメリットや安全性、病気にかかった場合に考えられるリスクについてお伝えしています。

不安の内容や背景は、ご家庭によってさまざまです。
気になることや迷いがあれば、一人で抱え込まず、信頼できるかかりつけ医に相談していただきたいと思います。

小児ワクチンの制度や接種スケジュールの変化について

小児ワクチンの制度やスケジュールが変わる理由

予防接種スケジュールが変更される理由で最も多いのは、新しいワクチンの導入です。

例えば、2024年から四種混合から五種混合ワクチンへと変更となりました。これは、今まで別々に接種していたヘモフィルスインフルエンザ菌b型(Hib)のワクチンの追加によって一本化されたことで、接種回数が減り、子どもや保護者の負担軽減につながっています。

また、新しいワクチンが開発され、「多くの人が接種することで公衆衛生上のメリットが大きい」と判断されると、定期接種に組み込まれることがあります。
妊婦向けのRSウイルスワクチンも、その一例です。

同時接種はかわいそう?

複数のワクチンの同時接種は、安全性に問題はありません
同時接種には、通院回数が減ることで家族の負担が減ることや、医療機関での感染リスクを減らせること、接種スケジュールの遅れを防げるといった利点があります。

不安を感じたときの情報の見極め方

「医師によって説明が違う」と感じたときに知ってほしいこと

小児ワクチンは、多くの方が子どもの頃に受けてきた身近な医療です。
そのため、さまざまな立場の医師や医療関係者が意見や情報を発信しており、内容に違いを感じることがあるかもしれません。
ワクチンについて迷いや不安が生じた際は、一人で抱え込まず、信頼できるかかりつけ医に相談してみてください。

気になったインターネットの記事や情報があれば、そのまま医師に共有し、不安に感じていることを率直に伝えて大丈夫です。

もし、医師との相性に違和感を抱いた場合、別の医師に相談することも、決して特別なことではありません。

不安を感じたらかかりつけ医に相談しましょう


情報を調べるときは、信頼できる情報から確認する

自分で情報を調べる際は、信頼できる一次情報を起点にすることをお勧めします。

例えば、厚生労働省の公式サイトや、日本小児科学会の「知っておきたいワクチン情報」は、一般の方向けに要点がわかりやすくまとめられています。
一方で、個人の感想や信頼できるかが明らかでないSNSなどでは、正しい情報もありますが、偽の情報、誤った情報もあふれているので確認すべき情報源としては避けるべきです。

手軽に見られるからこそ、より正確かどうか見極める事が大切です。

医師からのメッセージ

改めてお伝えしたいのは、定期接種のワクチンは、これまでの多くのデータから安全性と有効性が確認されており、ワクチンを受けないことで病気にかかるリスクのほうが、はるかに大きいということです。

迷いや不安を感じたときは、信頼できる情報を参考にし、かかりつけ医に相談してください。ご自身で納得しながら正しく判断することが大切です。

最終更新日:令和8年2月19日 

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