大流行の麻しん(はしか) 正しく知って予防しましょう

今、麻しん(はしか)の増加が大きな問題となっています。東京都における昨年の麻しん報告数は合計34人でしたが、今年はすでに180人もの感染が報告されています(4月21日時点)。
最近でも、都内の接客業の店舗で麻しんの集団発生がありました。
さらに、新宿区内の小学校からは、麻しんによる学年閉鎖も報告されています。インフルエンザの流行時に学年閉鎖はしばしば起こりますが、都内での麻しんによる学年閉鎖は14年ぶりの出来事なのです。
私たちの周りで、いったい何が起こっているのでしょうか。
日本が抱えている麻しんの問題を、その背景も含めて詳しくお話ししたいと思います。
東京都立駒込病院
感染症科 今村顕史 部長

感染症科| 東京都立駒込病院 | 東京都立病院機構(tmhp.jp)
おそるべき麻しんの感染力
麻しんはウイルスの感染によって発熱や発疹などの症状を起こす感染症です。
その感染力は極めて高く、ウイルスが空中にただよう「空気感染」によって感染が広がっていきます。
したがって、同じ店舗や施設、あるいは新幹線の同じ車両内など、発症した人のいる空間にたまたま一緒にいるだけでも、麻しんに感染してしまう可能性があるのです。
感染力を示す数値に「基本再生産数(R0)」という数値があります。
これは、簡単に言えば「1人の感染者が何人にうつすのか?」という数値です。
たとえば、毎年の冬に全国で大きな流行を起こす季節性のインフルエンザの感染力は1.2~1.6くらい、つまり1人からうつす人数は2人以内というイメージです。その一方で、麻しんでは1人の感染者が12~18人ほどの人に感染させる可能性があります。このような感染力の数値から「麻しんの感染力は、インフルエンザの10倍」とも言われているのです。
では、これほど感染力の強い麻しんが、なぜインフルエンザのような規模の流行になっていないのでしょうか。
実は、ここに「麻しん」という感染症の重要なポイントがあります。
麻しんとワクチンの関係
麻しんは、1回感染してしまえば、治る過程でウイルスと戦う力(=免疫)がつくられるため、基本的に再び感染することを避けられる感染症です。
また、麻しんに対するワクチンの効果も高く、2回の予防接種によって、かなり感染を抑えることができます。
仮に予防接種後に感染しても、その症状を軽くすることができ、他の人へ感染させる危険性も低くなります。
また、国や地域における多くの人がワクチンを接種することによって、「集団免疫」という状況をつくることもできます。
そして、その結果として、麻しんの流行拡大を抑えることもできるようになるのです。
日本の麻しんが「排除状態」に!
このようなワクチン接種の推進によって、2015年に日本の麻しんは「排除状態」となったとWHOから認定されました。
「排除状態」とは、もともと国内に存在していたウイルスによる麻しんが、3年以上にわたって発生しなくなることを基準として認定されます。
しかし、国内のウイルスからの発生がなくなっても、すべての麻しんが消えてしまうわけではありません。
海外には麻しん流行が続いている国も多く残っているため、そのような国々からの渡航者や、海外旅行先で感染してしまった人が、その国で感染したウイルスを国内へ持ち込むことがあるからです。
したがって、たとえ「排除状態」となった国でも、このような海外で感染した人をきっかけに、十分な免疫をもたない人の中で二次感染によって広がることもあるのです。
麻しんの症状と治療について
麻しんのウイルスに感染すると、その約10日後に発症します。最初の数日は、咳、鼻水、微熱くらいの風邪のような症状で、この時期を「カタル期」と呼んでいます。
そして、2~3日くらいのカタル期のあとに、麻しんに典型的な高熱や発しんが出現してきます。
さらに重症になると、肺炎や脳炎などの重い症状を起こし、たとえ先進国であっても1,000人に1~2人が死亡する可能性があります。
また、麻しんの症状が回復した数年から数十年後に、亜急性硬化性全脳炎(SSPE)という脳の重い病気を発症することもあります。
麻しんのウイルスを直接やっつけてくれる薬はありません。
したがって、発症後には解熱剤や咳止めなど、それぞれの症状に対する治療を行うことが基本となります。
また、ワクチンを打っていても麻しんを発症することはありますが、その場合の多くは症状が軽くなり、他の人へ感染させるリスクも低下します。
麻しん対策の難しさ
これまでお話ししてきた麻しんの特徴は、麻しん対策の難しさにもつながります。
麻しんは極めて高い感染力で空気感染します。そして、典型的な高熱と発疹が出現する前に、微熱・鼻水・咳などの風邪のような症状の「カタル期」が先行し、実はこの時期の感染力が最も高いといわれています。さらに、発症前1日から解熱後3日までの長い期間、周囲の人に感染させる可能性があります。
国内の麻しんは「排除状態」となりましたが、流行国での感染や、海外からの渡航者による発生は繰り返されています。
麻しんの潜伏期間が約10日と長いため、海外で麻しんに感染した人は、発症する前に国内を移動してしまいます。
また、症状は風邪くらいに軽くても、実は感染させやすい「カタル期」にも、病院を受診しない可能性があります。
その結果、濃厚接触者の追跡も困難となり、たまたま出会ってしまった人からも感染が広がることで、渡航歴のない国内感染者の報告が増えてしまうのです。
麻しん対応のポイント
注目情報ワクチン接種について
麻しんに感染した場合と異なり、ワクチン接種の場合には1回のみでつくられる免疫は不十分であり、2回の接種が必要とされています。
東京都からは、予防接種が2回未満で、明かな麻しんの感染歴のない方に対しては、免疫の有無を調べる抗体検査やワクチン接種について、医療機関で相談することを呼びかけられています。
注目情報海外への渡航について
海外への旅行を計画されてる方は、母子手帳などで予防接種の有無を確認しましょう。
ワクチンを2回接種していない人は渡航前の接種を検討してください。また、海外から帰国した人は、2週間くらいは帰国後の症状に気をつけましょう。
注目情報病院への受診時における注意
また、麻しんを強く疑う高熱と発疹が出現した場合には、先に病院へ電話で相談してから、その病院の指示にしたがって受診するようにしてください。
もしも麻しんだった場合には、受診時に他の人にも感染させてしまう可能性もあるからです。
関連するリンク
冬の終わりも油断しない 感染対策の基本 | 東京都立病院機構 (tmhp.jp)
小児のワクチン接種について | 東京都立病院機構 (tmhp.jp)
最終更新日:令和8年4月23日


