口腔機能低下症について
都立多摩南部地域病院
歯科衛生士 髙橋 朝子
「最近、食べ物が噛みにくい」「飲み込むときにむせることが増えた」「話すときに言葉がはっきりでない」
こうした小さな変化は、年齢のせいだけではなく、“お口の力”が弱ってきているサインかもしれません。
近年、高齢化が進み、健康寿命を延ばすことが大きな課題になっています。その中で注目されているのが「口腔機能低下症」という考え方です。これは、噛む・飲み込む・話す・唾液を出すといった口の働きが、複合的に弱くなる状態のことです。
特別な病気がなくても、誰にでも起こり得る身近な問題です。
1. 口の機能が弱ると、どうして体に影響するの?
口は、食べ物を取り入れる入口であり、人とのコミュニケーションをとるための大切な器官です。
口の機能が弱ると、体全体の健康に影響します。
注目情報栄養不足になりやすい
噛みにくい、飲み込みにくいと、食事が楽しくなくなり、食べる量が減ります。
すると、体に必要な栄養が足りなくなり、筋肉が落ちたり、疲れやすくなったりします。
注目情報誤嚥しやすくなる
飲み込む力が弱いと、食べ物が気管に入りやすくなります。
これが続くと「誤嚥性肺炎」という病気につながることもあります。
注目情報会話が減り、気持ちが落ちやすくなる
滑舌が悪くなる、口臭が気になるなどの理由で、人と話すことが嫌になることがあります。
会話が減ると気持ちが沈みやすくなり、社会とつながりも弱くなってしまいます。
このように、お口の機能は「食べる」「話す」という毎日の生活を支える、とても重要な力なのです。
2. こんなサインはありませんか?
口腔機能低下症の可能性のあるサイン
- 食べこぼしが増えた
- むせやすい
舌が疲れやすい、動かしにくい
- 食事に時間がかかる
- 柔らかいものばかり選ぶようになった
- 表情が乏しくなった
いくつか当てはまる場合は、歯科医院でチェックしてもらうことができます。舌の力や唾液の量、噛む力などを測る検査があり、今の口の状態を知ることができます。
3. 今日からできるお口の力を高める習慣
お口の機能は、筋肉と同じで“鍛えること”ができます。
特別な道具がなくても、家でできることがたくさんあります。
注目情報よく噛んで食べる
一口30回を目安に噛むと、唾液がたくさん出て、口の筋肉も鍛えられます。噛みごたえのある野菜やきの
こ、海藻など食事に取り入れるのもおすすめです。
注目情報「パ・タ・カ・ラ」体操
声に出して「パ・タ・カ・ラ」と繰り返すだけの簡単な体操です。
パ:唇の力
タ:舌先の動き
カ:舌の奥の動き
ラ:舌全体の動き
注目情報唾液腺マッサージ
耳の下やあごの下をやさしくマッサージすると、唾液が出やすくなり、口の乾燥を防げます。
注目情報姿勢をよくする
猫背だと飲み込みにくくなります。食事中は背筋を伸ばし、足をしっかり床につけると飲み込みやすくなります。
注目情報歯科医院での定期チェック
歯の治療だけでなく、口の機能を保つためのアドバイスも受けられます。早め相談することが大切です。
4.お口の健康は、未来の健康へ
口腔機能低下症は、誰にでも起こり得る身近な問題です。毎日のちょっした習慣で予防したり、改善したりできます。
「最近ちょっと気になるな」と思ったらそれは体からのサインかもしれません。
今日からできることを少しずつ始めて、いつまでも美味しく食べ、楽しく会話し、元気に過ごせる毎日をつくっていきましょう。
(参考)日本老年歯科医学会ホームページ(https://www.gerodontology.jp/(外部リンク))
最終更新日:令和8年6月4日
6/4~6/10は歯と口の健康週間です🦷


