【公開講座ダイジェスト!】“食べる力”は人生の力になる(7月9日開催 Tokyoヘルスケアサポーター養成講座)

オーラルフレイルと向き合うということ――“食べる力”は人生の力になる

都立多摩南部地域病院 
摂食嚥下障害看護認定看護師 石川麻美

見落とされがちな「お口の機能」

年齢を重ねると、身体のあちこちに小さな変化が現れます。
階段の上り下りが少しつらくなったり、長く歩くと疲れやすくなったり、視力や聴力がゆっくりと衰えていったり。

こうした変化は誰にでも起こる自然なプロセスですが、その中でも見落とされがちな領域があります。それが「お口の機能」です。

オーラルフレイルとは

食べこぼしが増えた、むせやすくなった、硬いものを避けるようになった、会話がしづらくなった

――こうした些細な変化は、日常の忙しさの中でつい気に留めずに過ごしてしまいがちです。

しかし、この“ささいな変化”こそが、オーラルフレイルの始まりです。

お口の機能は、食べる・飲み込む・話す・表情を作るといった多くの役割を担っています。ここが弱ると、栄養状態や社会参加、さらには全身の健康にまで影響が及びます。

お口の衰えは、全身の衰えにつながる

オーラルフレイルは、お口の機能が少しずつ弱っていく状態を指します。硬いものを避けるようになると、噛む力がさらに弱まり、食べられる食品の種類が減っていきます。すると栄養が偏り、筋力が落ち、活動量が減り、要介護状態に近づいていくという負の連鎖が起こります。

特に高齢者にとって、噛む力や飲み込む力の低下は誤嚥性肺炎のリスクを高めます。
誤嚥性肺炎は日本人の死亡原因の中でも一定の割合を占めており、決して軽視できません。お口の機能が弱ることは、単なる「食べづらさ」ではなく、命に関わる問題へとつながる可能性があるのです。

また、噛む力や飲み込む力が弱くなると、食事が楽しめなくなり、食欲が低下します。
食べることは生きることそのものです。
食事の楽しみが失われると、心の活力も低下し、外出や人との交流を避けるようになり、社会参加の機会が減っていきます。
こうした心身の変化が重なることで、フレイル(虚弱)へと進行しやすくなります。

気づきにくいからこそ、早めの対策が大切

オーラルフレイルの厄介な点は、初期の変化が非常に小さく、本人も周囲も気づきにくいことです。食べこぼしが増えた、むせやすい、話しづらい、食欲がわかない――こうした変化は「年のせいかな」と片付けられてしまいがちです。

しかし、早い段階で対策を始めれば、お口の機能は十分に回復できます。お口の筋肉は使えば鍛えられますし、日々の習慣を少し変えるだけで、機能低下の進行を食い止めることができます。

今日からできるオーラルフレイル対策

お口の機能を守るための取り組みは、特別な道具や大がかりな準備を必要としません。
日常生活の中で無理なく続けられるものばかりです。

① 噛む力・飲み込む力を鍛える

食事の際に「ひと口30回」を意識して噛むことは、噛む力を鍛える基本のトレーニングです。
噛む回数を増やすことで、顎の筋肉がしっかり使われ、飲み込む力も高まります。

 

また、ガムを使った咀嚼トレーニングも効果的です。
左右均等に噛むことで、口周りの筋肉をバランスよく鍛えられます。
歯にくっつきにくいガムやシュガーレスガムを選ぶと続けやすくなります。

うがいを習慣化して口の筋肉を動かす

本文を記入してくブクブクうがいは頬や舌を大きく動かすため、口の周りの筋肉を鍛える効果があります。

ガラガラうがいは舌の奥の筋力を高め、飲み込む機能の維持につながります。


普段の生活にすでにある習慣なので、取り入れやすい点が魅力です。

③かみごたえのある食品を取り入れる

お口の機能が弱ると、柔らかいものばかり選びがちになります。

しかし、あえて「かみごたえのある食品」を1品加えることで、噛む力を維持できます。

食材を厚めに切る、煮すぎない、炒めすぎないなど、調理の工夫で歯ごたえを残すことも大切です。

④毎日の口腔ケアで健康を守る

歯磨きはオーラルフレイル対策の基本です。

食後の歯磨きに加え、1日1回は10~15分かけて丁寧に磨く習慣をつけると、口の中の環境が整い、機能低下を防ぎやすくなります。

舌のケアや義歯の洗浄も忘れずに行いましょう。

さらに、口腔ケアは社会参加にもつながります。

外出して人と話すことは、心身の活力を保つうえで非常に重要です。

お口の健康が整うと、会話がしやすくなり、人との交流が自然と増えていきます

お口の健康は、人生の質を支える基盤

オーラルフレイルは、単なる口の問題ではありません。
食べる力は生きる力そのものです。食事を楽しむことは、人生の喜びを支える大切な要素です。
誰かと食卓を囲む時間、好きなものを味わう楽しみ、会話を通じて人とつながる喜び――これらはすべて、お口の機能があってこそ成り立ちます。

お口の衰えは、全身の衰えの第一歩とも言われています。
しかし、早めに気づき、対策を始めれば、機能は十分に回復できます。
今日からできる小さな習慣を積み重ねることで、未来の健康を守ることができます。

年齢を重ねても、ずっとおいしく食べ続けるために。

そして、人生の楽しみを豊かに保つために。

オーラルフレイルと向き合うことは、自分自身の生活を大切にすることにつながります。

 

(令和8年7月9日開催「Tokyoヘルスケアサポーター養成講座×東京みんなでサロン」『予防しよう!オーラルフレイル』より)


最終更新日:令和8年7月15日

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