【医療・健康コラム】ギラン・バレー症候群を含む末梢神経障害の基礎知識

なんとなく変”を見逃さない — ギラン・バレー症候群を含む末梢神経障害の基礎知識

東京都立神経病院 
脳神経内科 森島 亮 医長

末梢神経系の構造

末梢神経は、脳や脊髄と全身をつなぐ“情報の通り道”。

ここに障害が起こると、しびれや痛みだけでなく、力の低下、歩きにくさ、立ちくらみ、便通の変化など、さまざまな症状が現れます。

なかには、ギラン・バレー症候群のように、数日から数週間のうちに急速に進行し、早めの受診がとても重要になる病気もあります。
このコラムでは、日常の中で見過ごされがちな“なんとなく変”という感覚に目を向けながら、末梢神経障害の仕組み、症状、受診の目安、そしてギラン・バレー症候群を含む急性の神経疾患について、わかりやすく解説します。


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末梢神経障害とは?

末梢神経障害は、脳や脊髄と、手足・筋肉・内臓などをつないでいる「末梢神経」のはたらきが弱くなったり、乱れたりすることで起こります。

末梢神経は、感覚を伝えたり、体を動かしたり、汗や血圧、消化などを調整したりする役目をもっています。
そのため障害される神経の種類によって、しびれ、痛み、力の入りにくさ、歩きにくさ、ふらつき、立ちくらみ、便秘など、いろいろな症状が現れます。
原因もひとつではなく、糖尿病、腎臓の病気、ビタミン不足、薬の副作用、自己免疫の異常、遺伝、神経の圧迫など、さまざまです。

どんな症状があるのか、どんなときに受診すべきか

末梢神経障害というと「しびれ」がよく知られていますが、実際にはそれだけではありません。

しびれ以外にも…
手足がジンジンする、焼けるように痛む、感覚が鈍い、足の裏の感じがわかりにくい、箸やボタンが使いにくい、つまずきやすい、階段が上りにくい、といった症状もよくみられます。症状が進むと、歩行が不安定になったり、手足に力が入りにくくなったりします。

自律神経が関わると、立ちくらみ、発汗の異常、排尿や便通のトラブルが出ることもあります。

受診の目安として大切なのは、症状があるかどうかだけでなく、それが続いているか、広がっているか、力の低下を伴っているかです。

しびれや痛みが長引くとき、少しずつ悪くなるとき、転びやすくなったとき、手先や足先が使いにくくなったときは、早めに医療機関に相談したほうが安心です。

とくに、急に力が入らなくなる、歩けない、息苦しい、飲み込みにくい、ろれつが回らない、足首や手首が急に上がらなくなる、強い痛みがあるといった場合は、急いで受診が必要です。
こうした症状の中には、早く治療を始めることで回復が期待しやすい病気が含まれています。

急性の末梢神経障害にはどんなものがあるか

急に悪くなる末梢神経障害としてまず大切なのが、ギラン・バレー症候群です。多くは感染症のあとに起こり、足から始まる力の入りにくさが、数日から数週間のうちに上へ広がっていくことがあります。
しびれや痛みを伴うこともあり、重くなると顔の筋肉や呼吸に関わる筋肉まで影響を受けます。そのため、急速に進む脱力や息苦しさは見逃せません。

ギラン・バレー症候群は入院のうえで慎重にみる必要がある病気です。また、早めに治療介入することで予後を改善できる可能性があります

もうひとつ重要なのが、血管炎性ニューロパチーです。
これは神経そのものではなく、神経に栄養を送る細い血管に炎症が起き、神経が傷んでしまうタイプです。しびれだけでなく、かなり強い痛みを伴うことがあり、しかも左右対称ではなく、右手のあとに左足、というように、ばらばらの場所に症状が出るのが特徴です。
急に足首や手首が上がらなくなる「下垂足」「下垂手」も手がかりになります。血管炎性ニューロパチーは、早めに炎症を抑える治療を始めることがとても大切です。

軸索性と脱髄性のちがい

末梢神経は、よく「電線」にたとえられます。
電線の中の芯にあたる部分が軸索、その周りを包むカバーのような部分が髄鞘です。

軸索性ニューロパチーは、この芯の部分が傷むタイプです。代表的な原因には、糖尿病、尿毒症を含む腎機能障害、ビタミン不足、アルコール、薬剤の副作用などがあります。足先からしびれが始まり、左右対称に少しずつ広がることが多いのが特徴です。

一方、脱髄性ニューロパチーは、神経のカバーにあたる髄鞘が傷むタイプです。
すると神経の電気の流れが遅くなったり、途中でうまく伝わらなくなったりします。
このタイプには、急性のギラン・バレー症候群、慢性に進むCIDP(慢性炎症性脱髄性多発神経炎)、遺伝性のCMT(シャルコー・マリー・トゥース病)、そして手根管症候群などの絞扼性ニューロパチーがあります。
CIDPでは、2か月以上かけて、しびれや筋力低下がゆっくり進むことが多く、治療が効く可能性があるため、見逃さないことが重要です。CMTは遺伝性で、若いころから足の変形やつまずきやすさ、下腿のやせなどが少しずつ進むことがあります。

どんな検査をするのか

末梢神経障害が疑われるときは、まず症状の出方や広がり方、筋力や感覚、反射などを丁寧にみます。
そのうえで、必要に応じていくつかの検査を組み合わせます。
代表的なのが神経伝導検査で、神経に小さな電気刺激を与えて、電気がどのくらいの速さで伝わるかを調べます。
針筋電図は、筋肉やそれを支配する神経の状態をみる検査です。これらは、そもそも末梢神経障害なのか、軸索性なのか脱髄性なのかを見分けるうえで重要です。

さらに、最近は神経の超音波検査、いわゆる神経エコーも使われます。
これは神経の太さや腫れを体の外から見る検査で、痛みが少なく、脱髄性ニューロパチーの診断の助けになることがあります。
MRIは、神経の根元や周囲に炎症や腫れがないかをみるのに役立ちます。
髄液検査は、背中から少量の液を採って調べる検査で、CIDP(慢性炎症性脱髄性多発神経炎)やギラン・バレー症候群などで参考になることがあります。場合によっては、血液検査で糖尿病、ビタミン不足、腎機能低下、自己免疫の異常などを調べます。

すべての人に全部の検査が必要なわけではなく、症状に合わせて選ばれます。

治療について

治療の基本は、まず原因に合わせて対応することです。糖尿病があれば血糖を整え、ビタミン不足があれば補い、薬の副作用が疑われれば薬を見直します。神経が圧迫されている場合には、装具や手術が役立つこともあります。

免疫の異常が関係するギラン・バレー症候群、CIDP(慢性炎症性脱髄性多発神経炎)、血管炎性ニューロパチーでは、免疫グロブリン療法、ステロイド、血漿交換などが行われます。ギラン・バレー症候群では発症早期の治療が大切で、CIDPはきちんと診断できれば改善が期待できる病気です。血管炎性ニューロパチーでも、早く炎症を抑えることが回復につながります。

また、痛みに対する薬、リハビリ、装具、転倒予防なども大切です。
遺伝性のCMT(シャルコー・マリー・トゥース病)のように根本治療が難しい病気でも、症状に合わせた支えによって日常生活を保ちやすくなります。

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まとめ

末梢神経障害は、単なる「しびれ」ではなく、原因も経過もさまざまです。
なかには早めの治療でよくなるものもあり、逆に放っておくと回復しにくくなるものもあります

しびれが続く、広がる、力が落ちる、歩きにくい、強い痛みがある、といったときは、自己判断せずに相談することが大切です。
とくに急に悪くなる脱力や、呼吸・飲み込みの症状を伴う場合は、早めの受診が必要です。


末梢神経障害は、原因を見きわめることで治療の道筋が見えてくる病気です。


最終更新日:2026年6月30日

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