「プール」と「クラブ活動」に潜む熱中症の脅威

猛威を振るう暑さ、子供たちを守るために大人ができること

麻しん大流行

東京都立多摩総合医療センター
救命・集中治療科 清水 敬樹 部長

部長

毎年、気温が上昇する季節になると、熱中症に関するニュースが増えてきます。

炎天下での屋外活動はもちろん、近年では屋内での運動やプール活動においても熱中症が発生しており、そのリスクは決して限定的ではありません。

特に子どもたちは体温調節機能が未熟で、自ら危険を察知して行動を変えることが難しいため、周囲の大人が正しい知識を持ち、適切に見守ることが不可欠です。

本コラムでは、学校現場で頻度の高い「プール」と「クラブ活動」に焦点を当て、熱中症が起こりやすい背景と、予防のために必要な視点を整理します。
夏を安全に過ごすために、子どもたちの健康を守るために、私たちが知っておくべきポイントを改めて考えていきたいと思います。

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プールでの熱中症

― “水に入っているから安心”は誤解です
プールと聞くと、「水に入っているから涼しい」「熱中症とは無縁」といったイメージを持つ方も多いかもしれません。
しかし実際には、プールでの熱中症は確実に存在し、近年はその報告が増えています。

ある調査では、屋外プールの利用者の約3割に暑さによる体調不良がみられたというデータもあります。


● プールサイドは“直射日光+輻射熱”のダブルパンチ

屋外プールは屋根がない場所が多く、直射日光を浴び続けることになります。さらに見落とされがちなのが、床面からの照り返し、いわゆる輻射熱の存在です。
コンクリートやタイルは熱を吸収しやすく、気温以上の熱を体に与えることもあります。

水に入っていない時間が長い子どもほど、体温が上昇しやすい環境に置かれていると言えます。


● 気温35℃超では“水温も上昇”し、冷却効果が低下

「水に入っているから大丈夫」という安心感は危険です。
気温が35℃を超えるような日には、プールの水温も上昇し、身体を冷やす効果が弱まります。

ぬるい湯に長時間浸かっているような状態になり、体に熱がこもり、体温が下がりにくくなることも十分に下がらないことがあります。


● 水中では汗が蒸発しにくいため、体温を適切に下げることが難しくなる

体温を下げるためには、汗が蒸発することが重要です。皮膚表面に運ばれた熱は、汗が蒸発する際に体外へ放出されます。
しかし水中では汗が蒸発しないため、体温調節が十分に働きません。その結果、体温が上昇し続け、熱中症に陥るリスクが高まります。


● 最も危険なのは“溺水”につながるケースです

プールでの熱中症が特に危険とされる理由は、体調不良がそのまま溺水事故につながる可能性がある点です。
めまい、吐き気、意識のぼんやりなど、熱中症の初期症状が水中で起こると、重大な事故に直結します。

こうした背景から、プールでは熱中症そのものだけでなく、発症した際のリスクが極めて高いことを理解しておく必要があります。

子ども自身が異変に気づきにくい環境であるため、周囲の友人や保護者、指導者がこまめに様子を観察し、少しでも異変があればすぐに休ませることが重要です。


クラブ活動での熱中症

― “頑張りすぎる子ども”が危険です
夏は学校のスポーツ活動が最も活発になる時期です。部活動や体育の授業、夏季大会など、子どもたちが運動する機会は増えます。

一方で、運動中の熱中症は毎年多く発生しており、学校現場における大きな課題となっています。

● 経験の浅い1年生はリスクが高いです

新入生は体力が十分に備わっていないことが多く、暑さへの慣れも不十分です。練習内容についていこうと無理をしてしまうケースも多く、熱中症のリスクが高くなります。

● 主将や主力選手など“責任感の強い生徒”の発症が増えています

近年特徴的なのは、体力的に弱い生徒だけでなく、主将や中心選手が熱中症を発症するケースが増えている点です。「チームを引っ張らなければならない」という責任感から、自分の限界を超えてしまうことがあります。真面目で頑張り屋の子ほど危険であり、周囲の大人が注意深く見守る必要があります。

● 屋外・屋内を問わず、競技特性によるリスクがあります

屋外競技では長時間の活動により体温が上昇しやすいです。一方、屋内競技でも油断は禁物です。例えばバドミントンは空調の使用が難しく、体育館内の気温が上昇しやすい競技です。「屋内だから熱中症にはならない」という思い込みは危険です。

● 大会運営上の課題もあります

高校野球のように注目度の高い競技では、気温が異常に高い場合に試合の中止や延期が行われることがあります。しかし多くの競技では、会場確保の問題などから十分な暑熱対策が取れないまま試合が開催されることもあります。子どもたちの安全を最優先に考えた運営体制が求められます。

■ 熱中症を防ぐために

基本こそが最も重要です

熱中症の発症要因は多岐にわたりますが、予防の基本は共通しています。

特別なことをする必要はなく、日常の中でできる対策を積み重ねることが最も効果的です。

    • ●十分な睡眠と食事で体調を整えます
      睡眠不足や朝食抜きは、熱中症リスクを大きく高めます。
    • 体調が整っていない状態では、暑さに対する抵抗力が低下します。

      ●こまめな水分補給を行います
      喉が渇く前に飲むことが重要です。
    • 特に運動時は、汗で失われる水分と塩分を補う必要があります。
    • ●適切な休憩を取ります
      「頑張ること」が美徳とされがちですが、休むことも立派な自己管理です。
    • 指導者は休憩を積極的に取り入れ、生徒が無理をしない環境を整える必要があります。

    • ●WBGT(暑さ指数)を活用します
      気温だけでは暑さの危険度は判断できません。
    • 湿度や輻射熱を含めた指標であるWBGTを活用し、活動基準を守ることが重要です。

 子どもを守るために

大人の役割が問われています

熱中症は、適切な対策を講じれば予防できる疾患です。しかし、子どもたちは自分の体調変化に気づきにくく、無理をしてしまうことも多いです。
だからこそ、周囲の大人が正しい知識を持ち、子どもたちの様子を丁寧に観察することが求められます。

プールでも、クラブ活動でも、熱中症は決して他人事ではありません。

「水に入っているから大丈夫」「屋内だから安心」「強い子だから平気」こうした思い込みを捨て、科学的な視点から子どもたちの安全を守る姿勢が必要です。

夏は、子どもたちが最も成長し、思い出をつくる季節です。その時間が安全で豊かなものになるよう、私たち大人ができることは多くあります。

熱中症を正しく理解し、予防を徹底することが、子どもたちの未来を守る第一歩になります。


最終更新日:令和8年6月12日

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