【医療・健康コラム】マンジャロの不適正使用

若者のマンジャロ不適正使用が増えています

―医療現場から伝えたい、本当に大切なこと―

最近、SNSなどを通じて「痩せる注射」として広まったマンジャロの不適正使用が、若い世代を中心に問題になっています。

厚生労働大臣も危機感を示しており、医療現場でも実際に体調を崩して受診する若者が増えています。
マンジャロとはどのような薬なのか、どんな危険があるのか、そして正しい使い方について、やさしくお伝えしたいと思います。

東京都立大塚病院
糖尿病・内分泌代謝内科 中村 佳子 部長

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注目情報マンジャロとはどんな薬なのか

マンジャロは、GIP/GLP-1受容体作動薬(チルゼパチド)といい、もともと2型糖尿病の治療薬として開発された薬です。血糖値を下げることが主な目的で、2型糖尿病治療においてはとても効果の高い薬として期待されています。

マンジャロは次のような作用を持ちます。

・血糖値を下げる作用(主な効果)

・食欲を抑える作用(副次的な効果)

・胃腸の動きをゆっくりにする作用(副次的な効果)

これらの作用が重なり、結果として体重が減ることがあります。

そのため体重減少が注目されていますが、あくまで「副次的な効果」であり、美容目的のダイエット薬ではありません。


救急受診する若者が増えています

問題となっているのは、医療的な必要性がない若者が、SNSの情報を頼りにマンジャロを入手し、不適正に使用してしまうケースが増えていることです。

ある医療機関では、月に2~3人ほど、マンジャロ使用後の体調不良で救急受診する若者がいるといいます。
特に目立つのは、若く細身の女性です。

受診時の症状として多いのは次のようなものです
・吐き気
・強いだるさ
・下痢
・食事が取れない
・脱水症状

中には、救急車で搬送されるケースもあります。

さらに、女性の場合は急激な体重減少を認め、月経不順につながる可能性もあります。
「自由診療として話題になってから、明らかに救急受診者が増えた」と思います。

不適正使用は命に関わることもあります

マンジャロは、2型糖尿病の治療薬として正しく使えばとても良い薬です。2型糖尿病治療として使うにしても、医療機関で副作用に注意しながら慎重に使う薬です。しかし、治療として必要のない方が誤った使い方をすると、重大な健康被害を引き起こす可能性があります。

特に心配なものとしては、次のような重い副作用が生じることです。

・脱水
・腸閉塞
・急性膵炎
これらはいずれも命に関わることがある病気です。

特に急性膵炎は強い腹痛や嘔吐を伴い、治療が遅れると重症化することがあります。

「痩せるから」という理由だけで安易に使用することは、健康を大きく損なう危険を伴います。

注目情報本当に伝えたい「本来の価値」と「正しい使い方」

2型糖尿病患者さんにとって、マンジャロは生活を大きく改善する可能性を持つ大切な薬です。
だからこそ、本当に必要な人が適切に使える環境を守ることが大切です。
また、使用方法を誤ると前述のようなリスクがあるため、必ず医療機関を受診し、医師の診察を受けたうえで処方を受けてほしいです。

なぜ若者が不適正使用に走るのでしょうか

なぜ、若者が不適正使用を行うのか、その背景には、SNSでの情報拡散があります。

「痩せた」「食欲がなくなる」「簡単に体重が落ちる」といった投稿が広がり、薬の本来の目的やリスクが十分に理解されないまま、安易に手を出してしまう若者が増えています。

しかし、SNSで語られるのは成功例ばかりで、副作用や危険性はほとんど共有されません。その結果、体格的に痩せている若者がさらに体重を落とそうとし、体調を崩して救急搬送されるという事態が起きています。

「痩せる薬」ではなく「治療薬」です

マンジャロは、2型糖尿病に対して、医学的根拠に基づいて使用される治療薬です。
美容目的での使用は想定されておらず、健康な若者が使うことで得られるメリットはほとんどありません。

むしろ、体調不良や重い副作用のリスクが高まるだけでなく、必要な患者さんに薬が行き渡らなくなるという社会的な問題も生じます。

必ず医療機関を受診し、医師の指導のもとで必要な方が使用してほしいです。SNSの情報だけで判断するのはとても危険です。


注目情報おわりに


マンジャロの不適正使用は、単なる「流行」では済まされない問題です。

若者の健康被害、医療資源の逼迫、そして本当に必要な患者さんへの影響など、多くの課題を抱えています。

正しい知識を持ち、安易な使用を避けることが、社会全体の健康を守る第一歩になります。
マンジャロは「痩せる薬」ではなく「2型糖尿病の治療薬」であるという認識をもち、必要な人が安全に使える環境を守っていくことが大切です。


【備考】
肥満症治療としてのチルゼパチド(ゼップバウンド)
肥満に関連する健康障害を複数持ち、減量が医学的に必要と考えられる「肥満症」の治療薬としてゼップバンドがあります。
このゼップバウンドは肥満症治療の施設認定を受けた医療機関で、保険診療で使用されます。
食事療法・運動療法・行動療法を行い、適応を確認した上で、副作用を確認しながら一定期間使用されます。
「肥満症」の治療を受けたい方は医療機関を調べて適切に診察を受けてください。


最終更新 令和8年6月18日

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