【公開講座ダイジェスト!】子どもの心が揺れている(後編)

子どもの心が揺れているーいま、社会全体で向き合うべき課題(後編)

都立小児総合医療センター 
児童・思春期精神科 長沢 崇

子どもの心が揺れているーいま、社会全体で向き合うべき課題(前編)に引き続き、子どもたちの抱える心の問題について詳しく説明していきます。

子どもの自殺 ― 見えない苦しみ

最も深刻な問題の一つが、子どもの自殺です。

日本の若者の自殺率はG7で最も高く、小中高生の自殺者数は増加傾向にあります。
特に8月〜9月に自殺が増える傾向があり、夏休み明けの学校生活への不安が影響していると考えられています。

子どもの自殺は、大人の自殺とは特徴が異なります。

●衝動的である
●理由が明確でない
●遺書が残されないことが多い
●背景の分析が難しい

また、学業の問題、進路の悩み、友人関係、家庭の問題、精神的な不調など、複数の要因が絡み合っていると考えられます。

東京都では2025年、1年間で93人の小中高生が自殺で命を落としています。
人口比で見ても周辺他県より高率です。

そして、報道される数字は氷山の一角であり、希死念慮を有する子どもたち、自殺未遂を経験している子どもたちはさらに多いと考えられます。

市販薬の乱用 ― 新たなリスク

近年、中学生の間で市販薬の乱用が広がっています。

過去1年以内に乱用した経験がある中学生は約55人に1人。女子生徒のほうが多い傾向があります。

入手方法は、薬局やドラッグストア、家庭の常備薬、友人からの入手などが多く、インターネットで購入するケースもあります。

市販薬の乱用は、依存や精神症状の悪化、自殺リスクの増加につながる可能性があり、見過ごせない問題です。

子どもたちの声を聴く

子どもが自殺に至るまでには、複数の要因が複雑に絡み合っています。
しかし、その過程で「周囲に伝えられなかった気持ち」が存在することが多くあります。

「生きている子どもたちの声を聴くこと」
これは、子どもの自殺の要因分析のためにも、重要です。
何が、子どもたちの支えになるのか、理解することに役立つかも知れません。

子どもたちの声を聴くためには、声を聴くための環境を整えることも大事です。
安心できる居場所、そして相談できる関係性を作ることが必要です。

これらは、専門家に限らず、大人たち1人1人に求められている対策と言えるでしょう。


医療・学校・家庭・地域がつながることが必要

子どもの心の問題は、医療だけで解決できるものではありません。
学校、家庭、地域、行政、福祉など、多くの機関が連携することが不可欠です。

児童精神科医療の現場では、精神療法、薬物療法、作業療法、家族支援、学校との連携など、多職種によるチーム医療が行われています。
入院治療が必要な子どもも増えており、児童精神科病棟の数も全国で増加傾向にありますが、いまだ十分とは言えません。

専門機関につながるまでの伴走もとても重要と考えられます。
多診療科そして多機関の連携推進が必要です。各機関ともに子どもの心の問題に多職種チームで対応していくことが求められています。

子どもの未来を守り、応援するために

子どもは、社会の未来そのものです。
子どもの心の健康を大事にすることは、子ども自身の人生そして社会全体の未来に影響します。


子どもの心の問題は、社会全体で向き合うべき課題です。
大人1人1人の姿勢と対応が問われています。

(令和8年5月27日開催 都立小児総合医療センター 児童・青年期臨床精神医療講座【基礎編】より)
最終更新日:令和8年7月21日

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