【医療・健康コラム】 胃がん検診と消化器疾患

胃がん検診と消化器疾患~胃カメラでわかること・できること

東京都立荏原病院 内科(消化器) 水谷 勝

胃がんの場合、早期がんではほとんど症状は無く、進行したがんでも症状の無い場合が多いです。胃がんを早期に見つけるために重要な役割を果たすのが、上部消化管内視鏡検査、いわゆる「胃カメラ」です。

胃カメラは、胃の粘膜を直接観察できる検査で、胃潰瘍、胃ポリープ、胃粘膜下腫瘍、そして胃がんなど、さまざまな病気を発見できます。また、胃だけでなく食道や十二指腸の病気も確認できるため、上部消化管全体の状態を把握するうえで非常に有用です。

胃潰瘍と胃ポリープの特徴

胃潰瘍になった胃の写真

胃潰瘍は、胃の粘膜が削れて傷ができた状態で、「食後にみぞおちが痛む」「出血すると黒い便が出ることがある」などの症状がみられます。原因として最も多いのはピロリ菌で、鎮痛剤(NSAIDs)が関係する場合もあります。治療では、ピロリ菌の除菌と胃酸を抑える薬が用いられます。

一方、胃ポリープには複数の種類があります。

胃底腺ポリープになった胃の写真

胃底腺ポリープ
胃のひだ(しわ)の豊富な場所にできる光沢のあるポリープで、周囲と同じ色をしています。ピロリ菌のいない胃に多く、悪性化はまれで、治療の必要はほとんどありません。

胃過形成性ポリープになった胃の写真

胃過形成性ポリープ
赤く、いびつな形をしており、出血の原因になることがあります。ピロリ菌が関係しているとされ、除菌治療が有効です。

胃粘膜下腫瘍になった胃の写真

胃粘膜下腫瘍(GISTなど) 粘膜の下にできるしこりで、表面は周囲と同じ色・模様をしています。GISTが最も多く、2cmを超える場合は精密検査、5cmを超える場合は手術が推奨されます。

これらの病変は、胃カメラによって正確に診断できます。

胃がん検診の役割と重要性

胃がんは従来、日本で最も多いがんでしたが、検診の普及により死亡数は徐々に減少しています。それでも依然として多い状況が続いており、早期発見のための検診は欠かせません。

胃がんの患者数のグラフ。胃がんだけは2010年代前半をピークに僅かながら減少に転じている

胃がん検診には、胃X線検査と胃内視鏡検

胃がんによる死亡者数の推移のグラフ。男性は2010年代前半から、女性は1980年代前半から減少に転じているが、依然として高い水準である。

査の2種類があります。どちらも胃がんによる死亡率を減らす効果が証明されており、特に内視鏡検査は病変を直接確認できる点で優れています。

なお、検診と保険診療は異なります。検診は症状のない人が健康状態を確認するためのもので、原則として費用は自己負担です(市区町村で行われる検診には補助があり、比較的安価で受診できます)。一方、保険診療は症状がある場合や検診で異常を指摘された場合に行われるもので、医療保険が適用されます。

ピロリ菌と胃がんの関係

胃がんの最大の原因はピロリ菌です。ピロリ菌は強い胃酸の中でも生き延びることができ、胃の粘膜を傷つけて胃潰瘍や胃がんの発生につながります。「ピロリ菌陰性の人からは胃がんが発生しない」という研究結果が報告されており、ピロリ菌の有無は胃がんリスクを判断するうえで極めて重要です。

ピロリ菌の名前の由来を説明するイラスト。ピロリとは胃の幽門部を意味する「ピロルス」からとられている。

ピロリ菌の検査には血液・尿・便などがありますが、上記検査あるいは除菌治療を行うには、内視鏡検査が必要です。また、内視鏡で胃の粘膜を観察すると、ピロリ菌の有無をおおよそ推測できます。

除菌治療は、抗生物質2種類と胃酸を抑える薬を1週間服用する方法で、胃がんのリスクを減らす効果があります。ただし、がんのリスクが完全にゼロになるわけではなく、除菌後も定期的な検査が推奨されます。

日本のピロリ菌の感染率の推移のグラフ。年々減少はしているもののいまだゼロではない
ピロリ菌と胃がんの関連を示すグラフ。ピロリ菌に感染していない人からは胃がんが発生しないことがわかる。
ピロリ菌のいない胃といる(いた)胃の比較の写真。いない胃はひだが豊富で光沢もあるが、いる(いた)胃はひだが少なくて赤白交えた表面になっている。

胃がんの症状と早期発見の重要性

胃がんは早期の段階ではほとんど症状がありません。進行しても症状が出ないことがあり、気づいたときには治療が難しい場合があります。みぞおちの痛み、胸やけ、吐き気、食欲不振、貧血、黒色便などがみられる場合は、胃の検査を受けることを強くおすすめします。

症状がなくても定期的に検査を受けることが大切です。早期に見つかった胃がんは治療成績が非常に良く、ステージⅠの5年生存率は91.3%と報告されています。

胃がんの進行度と5年生存率を比較したグラフ。ステージ1であれば90%以上の確率で生存可能。

内視鏡治療の進歩

胃がんの治療には手術、内視鏡治療、抗がん剤、放射線治療などがあります。特に早期がんでは内視鏡治療が選択されることが増えています。

最新の治療として、内視鏡的粘膜下層剥離術(ESD)が普及しています。これは粘膜の下を剥ぎ取るようにして病変を一括で切除する方法です。従来は手術が必要だった早期がんも内視鏡で治療できる時代になりつつあります。患者さんの負担が少ないことから、当院を含む全国の医療機関で広く行われています。

内視鏡的粘膜下層剥離術を説明したイラスト。癌の周囲の粘膜をメスで切り、粘膜の下をメスで剥ぎ取る手法。

検査を受けやすい環境づくり

荏原病院では、2022年に新しい内視鏡室がオープンしました。リカバリールームの設置、最新鋭の内視鏡システムの導入、個室化によるプライバシーの確保など、安心して検査を受けられる環境が整っています。

また、鎮静剤を使った苦痛の少ない内視鏡検査を心掛けています。ただし、鎮静剤を使用した場合は、検査後に1時間ほど休む必要があり、車や自転車の運転は控える必要があります。

まとめ

胃カメラは、胃の病気を早期に見つけるために非常に有効な検査です。症状がなくても定期的に検査を受けることをおすすめします。胃の不調が気になる方、健康を維持したい方も、ぜひ一度内視鏡検査を検討してみてください。

内視鏡検査を受けた際にピロリ菌の検査を行うことができます。ピロリ菌の有無は胃がんの発生に深く関わっており、除菌治療によって胃がんのリスクを減らすことができます。

(2026年7月25日公開講座「胃がん検診と消化器疾患について」より)

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