尿路結石症について おまかせあれ!最先端の技術で粉砕 そして再発予防
東京都立大塚病院
泌尿器科・尿路結石センター部長 高沢 亮治
1.尿路結石は古くから人類を悩ませてきた病気です
尿路結石は、突然の激しい痛みで発症し、救急受診につながることも多い身近な病気です。しかし、この病気の歴史は非常に古く、紀元前の文明でも治療の記録が残っています。古代エジプトではすでに尿路結石の治療が行われており、インドでは紀元前8世紀に医師 Sushrutaが外科手術を記録しています。尿路結石は、文明の発展とともに人類が長く向き合ってきた病気と言えます。
中世ヨーロッパでは膀胱結石の手術が外科治療の中心であり、現代の内視鏡やカテーテルの原型となる技術も、尿路結石治療のために発展してきました。尿路結石の治療の歴史は、外科手術の歴史そのものと深く結びついています。
2.現代でも増え続ける「結石世代」
現代の日本では、尿路結石の患者数が増加しています。特に中高年以降で多くみられ、男性では1954〜1965年生まれ、女性では1944〜1955年生まれの方々で罹患率が高くなっています。こうした層は「結石世代」と呼ばれ、今後10年で高齢期に入ることから、さらに患者数が増えることが予想されています。
2015年には人口10万人あたり137.9人が上部尿路結石を発症し、男性では191.9人、女性では86.9人でした。2005年から2015年の間に結石のピーク年齢が10歳高齢化しており、結石が高齢者の病気として定着しつつあります。
食生活の変化も影響しています。バブル期に豊かな食事を楽しんだ世代が中高年となり、動物性たんぱく質や脂質の摂取量が多かったことが、結石形成の一因になっている可能性があります。生活習慣の変化が結石増加に影響していることは、現代の尿路結石の特徴と言えます。

3.結石はどのようにしてできるのでしょうか
尿路結石は、腎臓で血液をろ過して作られた尿が通る壁に小さな結晶が生まれ、それが成長して形成されます。尿の成分が濃くなると結晶ができやすくなり、結晶が集まって結石になります。腎臓の形や尿の流れ方によって、結石が成長しやすい環境が生まれることもあります。
腎盂の形は大きく「Single pelvis(1型)」「Divided pelvis(2型)」に分けられます。 この違いによって結石の動きやすさが変わり、治療の難易度にも影響します。腎盂の形が複雑な場合、結石が停滞しやすく、成長しやすい環境が生まれます。
また、尿の流れ(蠕動)が弱い部分では結石が停滞しやすく、結晶が成長しやすくなります。結石形成はミクロの結晶生成から始まり、マクロの結石成長へと進む複雑なプロセスです。

4.生活習慣と再発予防 ― 結石は“できやすい環境”があります
尿路結石は生活習慣と深く関係しています。以下のような要因が重なると、結石ができやすくなります。
● 食生活の偏り
動物性たんぱく質や脂質、シュウ酸の過剰摂取は結石の材料になります。
● 食事時間の乱れ
欠食や夜遅い食事は代謝バランスを崩し、結石リスクを高めます。特に夕食が遅いと尿の濃度が高くなり、結晶ができやすくなります。
● アルコール摂取
アルコールは脱水を招きやすく、プリン体や高カロリーのおつまみも結石形成に影響します。飲酒量が多い方は注意が必要です。
● 長期臥床・感染尿
寝たきりの高齢者では尿の流れが悪くなり、結石ができやすくなります。感染尿も結石形成のリスクを高めます。
● 骨粗しょう症治療薬・副甲状腺機能亢進症
カルシウム代謝が変化し、尿中カルシウム濃度が上昇することで結石ができやすくなります。
治療後は再発予防のために、栄養指導や生活習慣の見直しが欠かせません。尿路結石は再発しやすい病気であり、予防のための取り組みが非常に重要です。
5.尿路結石の治療 ― 3つの砕石術を詳しく解説します
尿路結石の治療には、主に次の3つの方法があります。
① 体外衝撃波砕石術(ESWL)
衝撃波を体外から結石に集中させて砕く治療です。音速戦闘機の“sonic boom”をヒントに開発され、人体の組織を通過しやすく、結石表面で反射する性質を利用しています。
メリット
- 無麻酔・低侵襲
- 外来で可能
- 身体への負担が少ない
デメリット
- 結石の位置・大きさ・成分で成績が左右される
- 大きい結石には不向き
- 破砕片を回収できない
- 腎臓への衝撃波が蓄積すると障害の可能性

② 経尿道的砕石術(TUL)
尿道から細い内視鏡を挿入し、レーザーで結石を砕いて摘出する治療です。内視鏡技術の進歩により、治療成績が大きく向上しています。
メリット
- 結石の位置や成分に左右されにくい
- 比較的大きな結石にも対応
- 破砕片を回収できる
- ESWLができない方にも可能
デメリット
- 麻酔が必要
- 泌尿器科医・麻酔科医・看護師が必要
- 尿管損傷のリスク
- 高度な技術が必要
2016年には全国のTUL件数がESWLを上回り、現在は年間6万件以上行われています。内視鏡の細径化や高性能レーザーの登場により、治療の主流がESWLからTULへと移行しています。

③ 経皮的砕石術(PNL)
腰から腎臓に筒(トラクト)を作り、内視鏡を通して結石を砕く治療です。
適応
- 長径2cm以上・体積3ml以上の大きな腎結石
特徴
- 大きな結石を確実に破砕・摘出可能
- 出血リスクや高度な技術が必要
近年はTULと組み合わせる ECIRS(内視鏡併用腎内手術) が増えています。複雑な腎結石に対して高い治療効果が期待できます。
6.レーザー治療の進歩
尿路結石治療ではレーザー技術が大きく進歩しています。
● Ho:YAGレーザー
長年標準的な砕石レーザーとして使用されてきました。水中での深達度が浅く、尿路内視鏡手術に適しています。
● レーザーで結石が砕けるしくみ
水中でレーザーを照射すると、ファイバー先端に「バブル」が発生します。 このバブルが光エネルギーの大半を消費し、残った光が結石表面で光熱反応を起こして砕きます。 レーザーはバブルを作り、その残りのエネルギーで結石を割っています。

7.TULの合併症と安全性
国内多施設研究では、TULの合併症として、
- 尿管穿孔:1.35%
- 尿管狭窄:0.8%
- 尿管断裂:0.03%
- 高熱(38℃以上):7.4%
- 敗血症ショック:0.8%(死亡0.04%)
が報告されています。
安全な操作と感染管理が治療の成否を左右します。尿管は非常に繊細な組織であり、強引な操作は禁物です。結石治療は感染症治療でもあり、術後の管理が非常に重要です。
8.今後の展望 ― さらに進化する内視鏡治療
世界的には、
- 高性能レーザー
- 灌流・吸引システムの改良
- 尿管鏡ロボット
- 手術支援ロボット(ダヴィンチ、ヒノトリ)
など、内視鏡治療はますます進化しています。より安全で確実な治療を目指し、技術革新が続いています。
尿路結石治療は、今後も大きく発展する分野です。患者さんにとって負担の少ない治療を提供するため、医療技術は日々進歩しています。
まとめ
尿路結石は古くから人類を悩ませてきた病気ですが、現代では治療技術が大きく進歩しています。 一方で、生活習慣や体質によって再発しやすい病気でもあります。
日頃の食生活や水分摂取を見直すことで、結石の予防につながります。 都立大塚病院をはじめとする都立病院では、最先端の治療と再発予防のための指導を行っています。尿路結石でお困りの際は、どうぞお気軽にご相談ください。
(2026年7月12日開催 「都立大塚病院連携講座」より)


