【公開講座ダイジェスト!】大腸がんについて(外科からのおはなし)

大腸がんと診断されたら~がんサポートチームの取り組み~

東京都立荏原病院がんサポートチーム 外科医長 藤田泉

現在日本では2人に1人が癌にかかり、4人に1人が癌でなくなるといわれています。

さらに癌の中でも大腸がんの罹患率が非常に高くなっており国立がん研究センターの統計によれば、男性では第1位、女性では第2位と報告されており、まさに「誰にとっても身近ながん」といえる状況です。
生活習慣の変化や高齢化に伴い、今後も患者数は増加すると予測されています。
そのため、大腸がんと診断された際にどのような検査や治療が行われるのか、どのような支援を受けられるのかを知っておくことは、患者さん本人だけでなく家族にとっても大きな安心につながります。

本コラムでは、東京都立荏原病院がんサポートチームの取り組みを参考に、大腸がんと診断された際に理解しておきたいポイントを、できるだけわかりやすくまとめました。

大腸がんの症状——気づける症状と気づけない症状

大腸がんは、初期の段階ではほとんど症状が出ないことが多く、「気づいたときには進行していた」というケースも少なくありません。症状が出る場合と出ない場合の両方を知っておくことが大切です。

自覚症状がある場合

代表的な症状には次のようなものがあります。

  • 便に血が混ざる(血便)
    大腸がんの典型的な症状ですが、痔でも起こり得るため自己判断は禁物です。
  • 便秘・下痢・腹痛などの便通異常
    腸の通り道が狭くなることで、便が出にくくなったり、逆に下痢が続くことがあります。

  • 体重減少、ふらつきなど貧血に伴う症状
    がんによる慢性的な出血で貧血が進行すると、疲れやすさや息切れが目立つようになります。

これらの症状は大腸がんに限らず、さまざまな消化器疾患でも起こり得ます。

しかし、症状が数週間以上続く場合は必ず医療機関を受診することが重要です。

自覚症状がない場合

症状がまったくないまま、検診で異常が見つかることも多くあります。

  • 便潜血陽性(検診)
    便に混じった微量の血液を検出する検査で、早期がんの発見に非常に有効です。
  • 貧血(クリニックでの採血など)
    偶然の採血で貧血が見つかり、精査の結果大腸がんが判明することもあります。
  • がんは早期発見が治療成績を大きく左右します。
    毎年の検診(便潜血検査)を欠かさず受けることが、命を守る第一歩です。

  • 大腸がんの検査——内視鏡とCTで状態を把握する

  • 大腸がんが疑われた場合、まず行われるのが「大腸内視鏡検査」です。確定診断後には「造影CT検査」で進行度を評価します。この2つの検査が治療方針決定の基盤となります。
  • ①大腸内視鏡検査

  • 内視鏡で腸の中を直接観察し、ポリープや腫瘍を確認します。

注目情報大腸ポリープ(腺腫) 良性のポリープでも、放置するとがん化する可能性があります。内視鏡で切除できるため、がん予防に直結します。

注目情報大腸がん(腺癌) 腫瘍が疑われる場合は細胞を採取し、顕微鏡で確定診断を行います。

  • ポリープの段階で切除できれば、将来のがん発症を防ぐことができます。内視鏡検査は「予防」と「診断」の両方に役立つ非常に重要な検査です。
  • ②造影CT検査

  • 内視鏡でがんが確認された後は、CTで体内の状況を詳しく調べます。
  • 注目情報肝転移、肺転移、リンパ節転移の有無
  • 注目情報腹膜播種(腹水の有無)

  • これらの情報は、手術を行うべきか、先に抗がん剤治療を行う必要があるかなどの治療方針を決定するために欠かせません。
  • 3.大腸がんの治療——ガイドラインに基づく標準治療(基本治療)

  • 大腸がんの治療は、手術・抗がん剤・経過観察を組み合わせて行います。日本では「大腸癌治療ガイドライン」に基づいた標準治療(基本治療)が推奨されており、全国どこでも一定の質の治療が受けられる体制が整っています。
  • 手術治療
  • がんおよび周囲のリンパ節をまとめて取り除く治療です。
    注目情報腹腔鏡下結腸切除術
    小さな傷で行う手術で、術後の痛みが少なく回復も早いのが特徴です。

    注目情報人工肛門造設術(一時的)
  • 腸の閉塞が強い場合や周囲への浸潤がある場合に必要となることがあります。

    手術の方法は、がんの位置や進行度、患者さんの体力などを総合的に判断して決定されます。
  • 抗がん剤治療
  • 術前の病勢コントロールや、手術後の再発予防、再発進行がんなどの治療に用いられます。
  • 注目情報術後再発予防の治療期間は3〜6か月が一般的

  • 点滴治療と内服治療、両方組み合わせた治療があり、患者さんの状態に合わせて選択します。
  • 副作用は薬剤によって異なりますが、近年は副作用対策が進歩しており、仕事など社会生活を続けながら治療を継続している方がほとんどです。

  • 経過観察
  • 治療が終わっても、再発の早期発見のために定期フォローが必要です。
  • 注目情報期間は5〜10年
  • CT、血液検査、内視鏡などを定期的に行います。
  • 「治療が終わったら終わり」ではなく、長期的なケアががん治療の特徴です。


  • 4.緩和ケア——治療を支える医療

  • 緩和ケアとは、がんが進行したときの症状を緩和をする治療だけではなく、現在ではがんと診断された時から治療中の心身の負担を軽減するために行われるすべてのケアのことを指します。
  • また出血や脳転移、疼痛などの進行がんに伴う症状を緩和をする治療として、薬物療法や放射線治療などを組み合わせて苦痛を和らげます。緩和ケアは「治療をあきらめる医療」ではなく、「治療を続けるための支援」です。

  • 5.多職種によるがんサポートチーム——患者を支える総合力

  • 東京都立荏原病院では、多職種が連携して患者さんを支える体制が整っています。
    • リハビリ科:術前リハビリテーション
      手術後の回復を早めるため、術前から体力づくりを行います。
    • 看護師・緩和ケア科:治療中の心身のストレス対応
      不安や痛みなど、患者さんの心身の負担を軽減します。

    • MSW(医療ソーシャルワーカー):医療費や生活支援
      経済的な不安や生活上の困りごとを相談できます。

    • 薬剤科:副作用サポート
      抗がん剤の副作用を最小限に抑えるための支援を行います。

    • 放射線科治療部:放射線治療

      症状緩和や再発治療にも対応します。
  • がん治療は長期にわたるため、医療者だけでなく心理・生活・経済面の支援が不可欠です。
  • 多職種連携は、患者さんの生活の質を守りながら治療を継続する大きな力になります。

  • 6.早期発見と継続的なケアが命を守る

  • 大腸がんは、早期に発見できれば高い確率で治療が可能な病気です。そのために、次のことを心がけてください。
    • 注目情報毎年の検診(便潜血検査)を欠かさない

    • 注目情報症状が続く場合は早めに受診する

    • 注目情報治療後も定期的なフォローを続ける

    • 注目情報不安や困りごとは医療者に相談する
  • 東京都には、がん診療連携拠点病院をはじめ、専門的な治療と支援を受けられる体制が整っています。大腸がんと診断されても、一人で抱え込まず、医療者とともに治療に向き合うことが大切です。

  • (2026年7月18日荏原病院公開講座「大腸がんと診断されたら」より)

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