【医療・健康コラム】女性のからだと向き合うために

女性のからだと向き合うために ―腹腔鏡手術と婦人科疾患を正しく知る―

都立大久保病院 婦人科
医員  菊地 孝行

女性の身体は、年齢とともに変化し続けます。

月経が始まる思春期、妊娠・出産を迎える年代、更年期を経て閉経へと向かう時期。
それぞれの段階で、身体は異なるサインを発しています。こうした変化は自然なものですが、時に婦人科疾患が隠れていることもあります。

忙しい生活の中で「少し気になるけれど、様子を見よう」と受診を先延ばしにしてしまう方は少なくありません。
しかし、婦人科疾患は早期に気づくことで治療の選択肢が広がり、将来の妊娠や生活の質にも大きく影響します。

近年は、身体への負担が少ない腹腔鏡手術が広く行われるようになり、治療の幅が広がっています。

本コラムでは、腹腔鏡手術の特徴、代表的な婦人科疾患である子宮筋腫・子宮内膜症・卵管水腫、不妊との関係、そして受診のタイミングについて、一般の方に向けてわかりやすく紹介します。

◆身体への負担を抑える腹腔鏡手術

婦人科の手術には、開腹手術、腹腔鏡手術、子宮鏡手術などがあります。腹腔鏡手術は、従来の開腹手術に比べて身体への負担が少ない治療法として広く行われています。

腹腔鏡手術では、お腹に数か所の小さな穴を開け、そこからカメラと器具を挿入します。おへそ付近からカメラを入れ、モニターに映し出される拡大映像を見ながら手術を進めるため、細かな操作が可能です。

  • 回復が早く、日常生活に戻りやすい

  • 開腹手術では術後1週間ほどの入院が必要ですが、腹腔鏡手術では術後の経過が順調であれば4日前後で退院できることが一般的です。仕事や家庭生活への復帰が早く、忙しい人にとって大きなメリットです。

  • 傷跡が目立ちにくい

  • 切開部が小さいため、傷跡が目立ちにくい点も支持されています。美容面を気にする若い世代の女性や、将来妊娠を希望する方にとっても安心材料となります。

  • すべての症例に適応できるわけではない

  • 巨大な子宮筋腫や癒着が強い場合は、腹腔鏡では対応が難しく、開腹手術へ移行することがあります。病変の大きさや位置、出血の可能性などを総合的に判断し、最適な治療方法が選択されます。

代表的な婦人科疾患

婦人科疾患は、初期の段階では自覚症状が乏しいこともあります。
ここでは、特に多い「子宮筋腫」「子宮内膜症」「卵管水腫」について詳しく紹介します。


  • 子宮筋腫

  • 子宮筋腫は、子宮の筋肉にできる良性の腫瘍で、30〜40代の女性に多く見られます。大きさや数は人によってさまざまで、症状がほとんどない場合もあります。

主な症状

  • 経血量が多い
  • 月経痛が強い
  • 貧血
  • 下腹部の張り
  • 頻尿

筋腫が大きくなると、子宮の形が変わり、妊娠しづらくなることがあります。
また子宮筋腫は月経量が増え貧血の原因となったり、下腹部痛の原因となることもあります。

治療方法

  • 経過観察
  • 薬物療法
  • 手術(腹腔鏡手術・開腹手術)

筋腫の位置や大きさによっては腹腔鏡手術が適している場合があります。
一方、巨大筋腫や多量出血が予想される場合は、安全性を考慮して開腹手術が選択されます。

  • 妊娠・出産への影響

    子宮筋腫の手術では子宮筋層に手を加えるため、術後は帝王切開を勧める場合がほとんどです。
  • 将来のライフプランを踏まえた相談が重要です。
  • 子宮内膜症

  • 子宮内膜症は、本来子宮内にあるはずの内膜組織が、卵巣や腹腔内に広がってしまう病気です。月経のたびに炎症を起こし、強い痛みや癒着を引き起こします。

主な症状

  • 強い月経痛
  • 性交痛
  • 排便時の痛み
  • 慢性的な下腹部痛
  • 不妊

卵巣に血液がたまる「チョコレート嚢胞」ができることもあり、放置すると破裂の危険があります。

治療方法

  • ホルモン療法
  • 鎮痛剤
  • 腹腔鏡手術による癒着剝離や嚢胞摘出

内膜症は再発しやすいため、治療後も定期的なフォローや内服治療が必要です。

  • 卵管水腫

    卵管水腫は、卵管の内部に水がたまり、卵管が腫れてしまう状態です。
    卵管の先端が閉じてしまうことで水が排出されず、袋状に膨らみます。

主な症状

  • 下腹部の違和感
  • 不妊

卵管水腫は、卵子と精子が出会う場所である卵管が機能しなくなるため、自然妊娠が難しくなることがあります。また、体外受精を行う場合でも、卵管内の水が子宮内に流れ込むことで着床率が低下することが知られています。

治療方法

  • 腹腔鏡手術による卵管の切除
  • 腹腔鏡、子宮鏡手術による卵管閉鎖部の解放

卵管水腫は不妊治療との関係が深く、治療によって妊娠率が改善することがあります。

不妊との関係

婦人科疾患の中には、不妊の原因となるものが多くあります。子宮筋腫、子宮内膜症、卵管水腫はその代表例です。

妊娠を希望する方にとって、疾患の早期発見は非常に重要です。
「子どもが欲しい」と受診したことをきっかけに不妊の原因が見つかることもあります。

手術後は、必要に応じて不妊治療を継続することで妊娠の可能性が高まる場合があります。

受診のタイミング

次のような症状がある場合は、早めの受診をおすすめします。

  • 経血量が急に増えた
  • 月経痛が年々強くなっている
  • 下腹部の痛みが続く
  • 貧血を指摘された
  • 妊娠を希望しているが授からない

婦人科受診は勇気が必要なこともありますが、早期に相談することで治療の選択肢が広がり、将来の生活の質にも大きく影響します。

ブライダルチェックという選択肢

結婚を控えている方や、将来妊娠を希望する方には、ブライダルチェックも有効です。
婦人科疾患の有無だけでなく、感染症やホルモンバランスなどを確認でき、安心してライフイベントを迎える準備ができます。

おわりに

婦人科診療は、女性が自分らしく生きるための大切なサポートです。
腹腔鏡手術のような身体への負担が少ない治療が広がり、妊娠・出産を見据えた診療体制が整っている今こそ、ご自身の健康と向き合う良い機会です。

「少し気になる」「念のため確認したい」その気持ちを大切に、未来の健康につながる一歩を踏み出してみてください。

 


最終更新日:令和8年8月18日

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