2012年1月号 たかが口内炎ですが・・・

2012.1月号

 口腔粘膜疾患の中で最も多く経験されるものが、いわゆるアフタと呼ばれる口内炎です。唇の裏や頬の粘膜、舌などにできる白い小円形の浅い潰瘍が特徴です。生まれてから一度も経験したことがないという羨ましい方もいらっしゃいますが、多くの方はときどき悩まされているのではないでしょうか。

 アレルギー・ストレスなどいろいろな因子が検討されますが、明らかな原因は不明となっています。(私はちょっと呑み過ぎたり不摂生が重なりますと発生します)あまりにもポピュラーな症状ですのでそのままでも1~2週間もすれば治癒しますが痛いところに軟膏を使用することも多いと思われます。一般的にステロイドを含んだものが非常に効果的で、患者さんご自身で「またいつものやつだな…」とつい短絡的に使用しがちですが、似たような症状にヘルペス性の口内炎があり、この場合は逆効果になってしまいます。

 ウイルス感染という明らかな原因がありますので、ステロイドの免疫抑制によりウイルスが再活性化して思わず重症になってしまうことがありますので要注意です。軟膏を塗れば塗るほど治るはずの口内炎が悪化、局所だけに留まらず口腔内の広範囲に潰瘍を形成し、著しい接触痛により口を開けることもできず食事が摂れなくなってしまいます。1年に何人かこのような患者さんがいらっしゃいますが、栄養が摂れないということになりますと、入院して点滴しましょう、というお話になります。

 アフタと違って全身コンディションの低下、発熱を伴った口内炎の場合は自己判断せず是非医療機関を受診されることをお勧めします。他にも私自身の経験ですが、ほんの小さなアフタと思って口内炎の軟膏を処方しましたが効果がないため組織診断をしてみたところ悪性腫瘍であったり、たかが口内炎だと思ってもあなどれないところです。

歯科コラム