2014年7月号 アナフィラキシー

2014.7月号

 現代人はアレルギー体質の方が多くなっているといわれています。歯科治療においても諸々の歯科用薬剤(局所麻酔、消毒薬、内服薬)歯科材料(グローブ、修復処置に使われる金属)が原因となりアレルギー反応を起こす可能性があります。
 先日、当科で抜歯後の抗菌薬内服により重篤なアレルギー症状(アナフィラキシー)が起きた患者さんがいらっしゃいました。後日インタビューさせて頂いたところ、自宅で抗菌薬を1錠服用後20分ぐらいで首が痒くなり、範囲が胸部へと広がるにつれて息苦しくなってきたそうです。我慢せずに救急車を要請し発症後約1時間で来院され、内科当直医の適切な処置により事なきを得ました。

アナフィラキシーは短時間の間に進行性の症状がみられ、特に呼吸困難・粘膜の浮腫・血圧低下を併せて発現することが特徴ですが、致死的であるため適切な判断と迅速な対応が必要です。診療所であれば酸素投与を行いながらバイタルサインを測定し、応援を依頼することになります。必要に応じてエピネフリンの筋注が行えるように準備されておくと尚良しです。予防策としては、十分な問診により過去の既往を確認していただくことが不可欠となりますが、今回特筆すべきは処方した薬剤が過去に服用経験があったことです。最近は事前の検査で陰性であっても、実際の投与後にアレルギー反応が発症する危険性が皆無でないことから、注射用の抗菌薬を使用前に行う皮内反応試験の有用性も疑問視されています。アレルギー反応を予知し、完全に防止することができないことから、日常から不測の事態に対する処置をトレーニングしておくことが重要になります。リスクは軽減することはできても皆無にすることはできないのです。

歯科コラム