2020年3月号 歯科外科器具の進歩

2020.3月号
歯科口腔外科 齋藤浩人

 数年前にアメリカ ボルチモアの歯科医学博物館に見学に行ったとき、抜歯の器具はほとんど変わっていない。進歩がないと思っていました。しかし、急速な科学の進歩は口腔外科治療においても大きな変革をもたらし、今まで難易度が高かった治療も低侵襲で正確な外科手術ができるようになってきました。その中でも超音波切削器具はこれからの手術を大きく変えるものではないでしょうか。今まで骨切削には回転系の切削器具を使用し血管や神経、軟組織への巻き込みなどを常に注意しながら手術を行ってきました。一方、超音波切削器具は微細振動を1秒間に30000回振動させることにより骨切削を行うものです。骨切削能力は回転切削器具と同等もしくはそれ以上の能力があるとされ、軟組織、血管、神経へは低侵襲であるといわれています。また、繊細な動きができ、出血量も少なく抑えられます。大学勤務時代、上司から鉤の引きがあまく、たびたび怒られたのも周囲の組織を巻き込まないようしなければならなかったからだと思います(他にもありますが、、)。また、刃先は直線的もしくはわずかな屈曲した先端だけでなく、大きく屈曲した形状もあり、従来では届かなかった骨隆起の基部へのアプローチなど可能になりました。私たちは外来、手術室でインプラント関連手術、抜歯、骨隆起除去、顎変形症手術など様々な場面で超音波切削器具を使用し、良好な結果を得ています。近い将来、歯科用電気エンジン、歯科用エアータービンを使用しなくてもいい時代になるかもしれません。

 世の中は東京オリンピックに向け盛り上がりをみせていますが、皆様はいかがでしょうか?私は観戦チケットがすべて外れ、次の獲得チャンスを狙っています。

歯科コラム