2002年1月号 入れ歯って外れるんですね!

2002.1月号

 2002年明けましておめでとうございます。今年も急患には即応する、地域に密着した病院歯科を目指します。どうぞよろしくお願いいたします。

 新年最初は、立場・常識の違いについて触れたく思います。先ずは前の職場、都立豊島病院でのことです。悪いところは全て 治して欲しいと中年の女性が歯科を訪れました。既往歴には軽い狭心症と高血圧がありました。問題点を把握しようと、先ずパノラマX線写真を撮影しました。 撮影が終わるやいなや、患者さんが撮影室から飛び出して来て、肩でハアハアと息をつき始めました。心臓発作でも起こったのかとびっくりして尋ねたところ、 なんと、撮影の間の数十秒間、一生懸命に息を止めていたことが分かりました。X線撮影では息を止めるものだと思い込んでいらっしゃったのでした。

 患者さん達は時として、奔放な発想でわれわれを驚かせてくれることがあります。具合の悪い総義歯を何組も保存しておいて、比較的使える、代の違う上下の組み合わせで何とか咬もうと努力なさる患者さんが稀ではありません。気持ちは分からないではないのですが無謀な、はかな い試みといわざるを得ません。

 数年前にのけぞってしまうほどびっくりさせられたことがありました。ある病棟に入院中の女性患者さんの診療依頼を受けた 時のことです。歯茎の不快感と口臭が主訴でした。上顎に比較的大きな部分床義歯が入っていました。口腔内をよく診ようと、この義歯を外したとたん、患者さ んは解放されたように大きく安堵のため息をつき「入れ歯って外れるんですね!」と言ったのでした。食物残渣がびっしりと張り付いて義歯の内面が見えませ ん。異臭が漂い、歯肉が真っ赤です。聞けば、半年ほど前にこの義歯を装着して以来、一度も外したことがなかったのです。「歯を磨かなかったのですか?」と 問うたところ、義歯を入れたまま歯磨きしていた、と胸を張ります。内面に比べて、義歯の外面が妙にきれいなことに合点がいきました。義歯調整指導料の中には、義歯は外して手入れすると教えることも含まれているはずです。装着以来の汚れを落とす前にスライド写真を撮り、記録に残しました。その後にも1例、同 様の患者さんを経験しました。

 病棟のナース達は患者さんのケアに追いまくられています。激務にめげず笑顔を心がける姿にはうたれます。当直も頻回で勤 務時間が不規則な彼女たちの中には、年齢のわりに歯周病の人が少なくないように感じます。われわれも診療に追われておりますが、看護婦さん達のハンドバッグ総てに歯ブラシが入っているのが常識となるようにしたいと願っています。
身の回りの世話に口腔内を是非加えて欲しいのです。

歯科コラム