2013年5月号 糖尿病と歯周病

2013.5月号

昨今、全身疾患と口腔内の関連が取り上げられることが多くなっています。これは「歯周医学(Periodontal Medicine)という分野ですが、口腔内疾患(特に歯周病)と全身性の疾病相互の影響を医科と歯科のトータルで捉えていくいくという考え方です。

心疾患・呼吸器疾患・脳血管障害・出産への影響など歯周病との関連が疑われる疾患はいくつもあります。歯の病気がなぜ?と思いますが、歯周病菌が血液や気道を介して他臓器に運ばれていくことを考えれば想像がつくのではないでしょうか。たかが口の中の病気と言えど軽視できない可能性があります。特に糖尿病の方で歯周病が悪化しやすいことは臨床的にも以前から実感されていることですが、両者の相互関係を裏付ける科学的根拠もそろってきています。しかしながら具体的な数字とともにリスクを示すことは難しく、糖尿病がコントロールされていると思われた患者さんで、ぐらぐらで簡単な抜歯であるのに処置後に歯肉が著しく腫脹し、点滴のために数日通院していただくことになってしまったこともあります。

感染防御機構や組織の修復力が低下していることが原因と考えられましたが、何か不安だなと虫の知らせがある場合は術前の抗生剤投与も検討してよいと思われます。もちろん合併症を多く抱えている方や、疾病の意識が低い方などは内科Drへの対診が必要ですし、当科での対応も喜んでお受けします。

アメリカ大衆紙でもFloss or Die(フロスをするか死か)という大胆なキャッチコピーが掲載されたことがあります。生活習慣病とも考えられる歯周病を管理することは口腔内だけでなく全身の健康増進に寄与することであり、これからますます重要になってくると思われます。

歯科コラム