2024年7月号 <自家歯牙移植って?>

                                                    2024.5月号

                                歯科口腔外科 医長 齋藤 浩人(さいとう ひろと)

 歯を失ってしまった部位に自分の歯を移植する自家歯牙移植は、1950年代に報告され始め欠損歯列に対しての有効な治療法の1つとして当院でも行っています。先日、右下顎乳犬歯の晩期残存の精査依頼にて来院した11歳のお子さんは、レントゲンにて乳犬歯の下に歯牙腫と思われる不透過像を認め、永久歯の犬歯は根未完成の状態で反対側のオトガイに横たわるように完全埋伏していました。そこで乳犬歯を取り出して、歯牙腫を摘出。横たわった犬歯を抜去し、本来あるべき部位に自家歯牙移植を行いました。その結果、術後6ヶ月で周囲の骨も形成され、電気診でも歯髄の血流改善を認め、何事もなかったように歯は使えるようになりました。条件さえ整えば根未完成歯における自家歯牙移植は成功率が高いといわれてはいますが、ここまで順調に歯髄壊死をおこさずに回復するは初めてでしたので、ヒトの細胞の能力に感動しました。

  この内容は、今年の都立病院機構のジュニアレジデント合同発表会で新人研修医が病院代表として発表して高い評価を受け、ダブルで嬉しい事例となりました。今年の桜は例年より遅い開花でしたが、ちょうど新しい研修医が入る時期と重なり華やかな4月となりました。毎年優秀な先生が入局してくるので指導する側としても身が引き締まる思いです。

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