言語聴覚士のしごと -シリーズ1-
9月1日は「言語聴覚の日」です。
この日は、言語聴覚士の仕事や役割について多くの人に知ってもらうために、日本言語聴覚士協会などが中心となって活動を行っています。
~「言語聴覚士」とは~
言語聴覚士(げんごちょうかくし)は、「話す」「聞く」「食べる」といった、人が生活するうえで大切な機能を支える医療・福祉の専門職です。
英語ではSpeech-Language-Hearing Therapistといい、「ST」と呼ばれることもあります。
病院やリハビリテーション施設、学校、高齢者施設などで働き、子どもから高齢者まで幅広い年代の人を支援しています。
言語聴覚士の国家試験は1999年(平成11年)から始まり、医療や福祉の現場で活躍しています。
私たちは普段、自然に会話をしたり、食事をしたりしています。しかし、脳の病気やけが、発達の特性、加齢などによって、「言葉が出にくい」「相手の話が理解しにくい」「発音が不確実になる」「食べ物が飲み込みにくい」「聞き取りにくい」といった問題が起こることがあります。言語聴覚士は、そのような困難を持つ人に対して、検査やリハビリを行い、その人らしい生活が送れるよう支援します。
言語聴覚士が関わる代表的な障害
言語聴覚士が関わる代表的な障害の一つが「失語症(しつごしょう)」です。
失語症は、脳梗塞や脳出血などによって脳が傷つくことで起こります。
言葉を話す、相手の話を理解する、文字を読む、文章を書くといった力が低下する障害です。
例えば、「言いたいことがあるのに言葉が出てこない」「簡単な会話でも理解しにくい」といった症状がみられます。
しかし、考える力がなくなったわけではないため、周囲の理解や支援がとても重要になります。
言語聴覚士は、一人ひとりの状態に合わせて言葉の練習を行います。言葉だけでは伝えにくい場合には、ジェスチャーや文字、絵カードなどを使ったコミュニケーション方法も取り入れます。本人だけでなく、家族や周囲の人に「どのように接すれば伝わりやすいか」を説明することも大切な役割です。
「構音障害(こうおんしょうがい)」という発音の障害への支援も行います。
これは舌や唇、声帯などの動きがうまくいかず、言葉がはっきり発音できなくなる状態です。
脳の病気や神経の障害が原因となる場合が多く、会話が相手に伝わりにくくなります。
言語聴覚士は、発音練習や呼吸のトレーニング、口の動きの訓練などを行い、少しでも話しやすくなるよう支援します。
お子さんの支援も重要な仕事です。例えば、「言葉の発達がゆっくり」「特定の音がうまく発音できない」といったお子さんに対して、遊びや会話を通して言葉の発達を促します。
さらに、「飲み込み」の支援も行います。
食べ物や飲み物を安全に飲み込む力を「嚥下(えんげ)」といいます。
高齢者や脳や呼吸の病気がある方では、この力が低下することがあります。すると、食べ物や飲み物が胃に向かう通り道(食道)ではなく、肺に向かう通り道(気管)に誤って入ってしまう「誤嚥(ごえん)」が起こりやすくなります。
誤嚥をすると、「誤嚥性肺炎(ごえんせいはいえん)」という肺の病気につながることがあり、状況によっては命に危険が及ぶことがあります。
そのため、言語聴覚士は飲み込みの状態を詳しく確認し、その人に合った食事の形や食べ方を考えます。
例えば、食べ物をやわらかくしたり、飲み物にとろみをつけたり、飲み込む力を高めるためのリハビリや、むせにくい姿勢や飲み込み方の練習なども行います。さらに、本人だけでなく、家族や介護施設の職員など、周囲で支える人たちにも、安全な食事介助の方法や注意点を説明します。食べることは栄養をとるだけでなく、生活の楽しみや生きがいにもつながるため、とても重要な支援なのです。
ほかに、聞こえに関する支援もあります。
加齢や病気による難聴があると、会話が聞き取りにくくなり、人との関わりが減ってしまうことがあります。
そのため、筆談やジェスチャーなどを活用し、その人が周囲とコミュニケーションを取りやすくなる方法を一緒に考えます。
言語聴覚士の役割の特色
言語聴覚士は、医師、看護師、理学療法士、作業療法士など、さまざまな専門職と協力して働いています。
単に機能を回復させるだけではなく、「その人がどのように生活し、どのように人と関わっていくか」を考えながら支援することが特徴です。
このように、言語聴覚士は「話す」「聞く」「食べる」という、人が社会の中で生活するために欠かせない力を支える専門職です。困っている人に寄り添いながら、その人らしい生活やコミュニケーションを支える重要な役割を担っています。
シリーズ2(近日公開予定) に続く⇒


