2026.7月号歯科口腔外科
長谷川 士朗(はせがわ しろう)
5月のGW前後に90歳代の患者さん3人が歯科で入院されました。90歳の方が1935年生まれですので、第二次世界大戦前のいわゆる戦中派です。驚いたことは、3人とも歯が20本以上残っており、認知機能の低下が感じられなかったことです。歯が多い人は元気で長生き、という印象がありますが、最近のビッグデータ解析によると、歯の数よりも咬む力の方が有意に長寿と関連があることが分かっています。歯が残っていても、咬む力が弱いと栄養摂取不足になり、糖尿病・循環器疾患・がんなどのリスクが高まります。併せて、上下の咬み合わせが保たれていると、認知機能の低下が少なくなることも分かりました。口腔機能の管理は肉体的にも精神的にも健康で幸せな人生を送るために必要であるということだと思います。
そして、今回もう一つ感じたことは、入院加療の原因がその大切にしてあった歯であったということです。高齢者は短期間であっても入院という環境変化によりせん妄などを併発する心配があります。歯を残すのであれば、将来的にできるだけトラブルが起きないように治療を計画し、その後の継続的なメインテナンスが望まれるところです。骨太の方針2025にも「全身の健康と口腔の健康に関するエビデンスの活用」とありますが、歯科医療従事者として歯を残す意味、口腔機能の重要性を適切に理解し、日々の臨床に向かってまいりたいと考えます。

