【公開講座ダイジェスト!】骨粗鬆症について(整形外科医からのおはなし)

骨粗鬆症は静かに進行します。

荏原病院  整形外科 神 與一 医師 

東京都で暮らす私たちは、日々の忙しさの中で自分の骨の状態を意識する機会が多くありません。
痛みがなければ健康だと思いがちですが、骨粗鬆症は静かに進行し、気づかないうちに骨が弱くなっていることがあります。

背骨や大腿骨近位部の骨折は、生活の質を大きく損ない、歩行能力の低下や介護の必要性につながることがあります。
しかし、骨粗鬆症は早期に発見し、適切な治療と生活習慣の改善を組み合わせることで、骨折を大幅に減らすことができます。


◆ 骨粗鬆症とはどんな病気か

骨粗鬆症は、骨の量が減り、内部の構造が粗くなることで骨がもろくなる病気です。
「低骨量と骨組織の微細構造の異常を特徴とし、骨の脆弱性が増大する疾患」 という定義が示されています。
健康な骨は、外側の皮質骨がしっかり厚く、内側の海綿骨が縦横に張り巡らされ、無数の小部屋のような構造をしています。ところが骨粗鬆症になると、この内側の構造が粗くなり、わずかな衝撃でも折れやすくなります。


◆ 軽い衝撃でも折れてしまう「骨脆弱性骨折」

骨粗鬆症が進むと、通常なら骨折しないような弱い力でも骨が折れてしまいます。
「椅子からずり落ちただけ、しゃがんで庭いじりをしただけ、ちょっと咳き込んだだけ等でも骨折してしまいます。」
背骨が徐々に潰れていく「椎体骨折」は痛みが軽く、気づかないまま進行することもあります。

気づいたときには背中が丸くなり、身長が縮んでしまうこともあります。東京都の高齢者人口は増加しており、こうした“気づかない骨折”が生活の質を大きく左右する場面が増えています。

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◆ 骨折は「次の骨折のサイン」

骨粗鬆症治療の世界では、近年「折れたら終わりではなく、折れたら次を防ぐスタート」という考え方が広がっています。

「折れた直後こそ、骨を『守る』だけでなく骨を『つくる』治療を考える」

一度骨折すると、次の骨折が起こりやすくなることが分かっています。
特に背骨・大腿骨近位部・骨盤の骨折は再骨折リスクが高く、治療のスピードが重要になります。

◆ 再骨折を防ぐ「骨太の方針」

当院では、2024年の米国骨代謝学会(ASBMR)と米国骨粗鬆症財団(BHOF)の提言を踏まえ、骨折リスクの高い患者さんに対して、骨折後早期から積極的に治療を行うことを重視しています。
特に、骨折直後の再骨折リスクが高い時期には、「骨を守る」だけでなく「骨をつくる」ことも意識し、一人ひとりの骨折リスクに応じて治療目標や薬剤、治療の順番を検討します。
当院では、この積極的な骨粗鬆症治療の考え方を「骨太の方針」としています。
東京都の医療機関でも、骨折後の数か月を「再骨折予防の最重要期間」と位置づけ、治療の順番を重視する動きが広がっています。

◆ 治療は「順番」と「スピード」が大切

骨粗鬆症の薬は大きく2種類あります。

  • 骨吸収抑制薬(骨を壊す細胞の働きを抑える)
  • 骨形成促進薬(骨をつくる細胞の働きを高める)

従来は骨吸収抑制薬が中心でしたが、近年は「最初から骨をつくる薬を使う」治療が注目されています。

「高リスクでは骨形成促進薬を先行」
骨折直後は、骨が急速に弱りやすい時期です。骨形成促進薬を先に使い、骨密度を短期間で引き上げることで、次の骨折を防ぐ効果が期待できます。その後、骨吸収抑制薬で維持するという“治療の順番”が重要になります。

◆ 骨密度検査で自分の骨の状態を知る

骨粗鬆症の診断には、DEXA法(デキサ法)が広く使われています。
「二重エネルギーX線吸収測定法」というもので、
骨密度は「YAM値(若年成人平均値)」で評価され、

  • YAM70% ≒ T-score −2.5
  • YAM60% ≒ T-score −3.3

T-score −2.5以下は骨粗鬆症と診断され、治療が必要になります。
東京都では区市町村の健診で骨密度検査を受けられる機会も増えており、早期発見のために活用することが大切です。

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◆ 食事で骨を強くする「材料+吸収+定着」

骨を強くするには、カルシウムだけでは不十分です。
「材料+吸収+定着をセットで摂るのがコツです」

注目情報カルシウム(骨の材料)
牛乳・ヨーグルト・チーズ、小魚、豆腐、小松菜など

注目情報ビタミンD(吸収を促す)
鮭・サバ・イワシ、きくらげ・しいたけ

注目情報ビタミンK(骨への取り込み)
納豆、緑黄色野菜
牛乳・乳製品は吸収率が高く、効率よくカルシウムを摂取できます。

また、「偏りすぎるとリン・食塩の過剰摂取につながりやすい」とあるように、スナック菓子や加工食品の偏り、塩分・アルコール・カフェインの過剰摂取は骨の健康を損なうため注意が必要です。
東京都は外食の選択肢が豊富な地域ですが、日々の食事の中で“骨のための栄養”を意識することが重要です。

◆ 運動で骨は確実に強くなる

骨は「刺激」に反応して強くなります。(骨は『荷重・筋力・着地の刺激』に反応します。) 

注目情報荷重の刺激
ウォーキング、かかと落とし、スキップなど

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注目情報情報筋力の刺激
片足スクワット・両足スクワット
太ももの付け根の骨密度を上げるために推奨されています。

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注目情報バランスの向上
片足立ちなど
東京都は公園や河川敷が多く、歩きやすい環境が整っています。
毎日30分のウォーキングを続けるだけでも、骨への刺激と転倒予防の両方に効果があります。
運動は「強さ」より「安全に続けること」が大切です。
痛みやめまいがある場合は中止し、転倒が心配な方は机や手すりを使いましょう。

◆骨折は「終わり」ではなく「予防のスタート」

「折れたら終わりではなく、折れたら次を防ぐスタート」
骨粗鬆症は、早期発見・早期治療・生活習慣の改善で大きく予防できます。 東京都には多くの医療機関があり、骨密度検査や専門的な治療を受けられる環境が整っています。

◆ まとめ

  • 骨粗鬆症は気づかないうちに進行する
  • 軽い衝撃でも骨折することがある
  • 一度の骨折は「次の骨折のサイン」
  • 再骨折リスクが高い方には、「骨太の方針」に基づき、骨形成促進薬を含めた治療の「順番」と「スピード」を重視する
  • 食事・運動で骨は確実に強くなる
  • 都民の皆さまは、検査と早めの相談が大切

骨は一生の健康を支える大切な土台です。
今日からできることを少しずつ積み重ね、未来の骨折を防いでいきましょう。


(令和8年8月27日(木)開催 東京都立荏原病院公開講座「骨粗鬆症公開講座 2026」より)

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